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ドイツの大学の法学部制度

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1850年頃のドイツ第1次国家試験(1. juristisches Staatsexamen)の様子

ドイツにおいて、法学部は最も人気のある専攻の1つである。ドイツでは、大学で法学部を卒業しなければ、法曹資格を取得できないからである。2022/23年冬学期には、約116,683人の学生がドイツの大学の法学部に入学した[1]。

一方、ドイツの法学部は、世界的に見て最も難しい専攻の1つでもある。ドイツの法学部における採点システムは極めて厳格だからである[2]。(→採点についての詳細は下記「採点システム」を参照。)

ドイツの大学の法学部出身の著名人には、ドイツ前連邦首相/第9代連邦首相オラフ・ショルツ(Olaf Scholz)(ハンブルク大学 法学部卒)や、現連邦首相/第10代連邦首相フリードリヒ・メルツ(Friedrich Merz)(フィリップ大学マールブルク法学部卒)、現連邦大統領/第12代連邦大統領フランク=ヴァルター・シュタインマイヤー(Frank-Walter Steinmeier)(ユストゥス・リービッヒ大学ギーセン 法学部卒)が含まれる。

法学部に必要なアビトゥーアの平均成績

法学部に入学するために必要なアビトゥーア(大学入学資格試験)の平均成績は、入学年や志望大学によって変動する。特に高い成績が必要とされるのは、一般的に人気都市の名門大学においてである。2024/25年冬学期には、ハインリッヒ・ハイネ大学デュッセルドルフでは平均1.1点、ベルリン自由大学では1.6点、フンボルト大学ベルリンでは1.7点、ルプレヒト・カール大学ハイデルベルクでも1.7点、ルートヴィヒ・マクシミリアン大学ミュンヘンでは2.7点が必要であった[3]。

一方、他のいくつかの大学(ゲオルク・アウグスト大学ゲッティンゲン、フリードリヒ・アレクサンダー大学エアランゲン=ニュルンベルク、ブレーメン大学、ヴィアドリナ欧州大学、アウグスブルク大学、ライプツィヒ大学等)では、平均成績を問わず法学部に入学可能であった[3]。

ドイツの法曹養成の仕組み

法学部の標準的な修業年限は5年である。

基礎課程(Grundstudium)(4学期)

基礎課程では、学生は法学の基礎を学ぶ。具体的には、三大必修科目(民法・公法・刑法)に加え、法制史・法哲学・法社会学等の副科目を学ぶ。中間試験(Zwischenprüfung)に合格することにより基礎課程を修了することができる。各試験は2回まで追試が可能であり、2回の追試を含む合計3回とも不合格となった場合には、強制的に大学の退学処分となり、ドイツ国内において法学部に入学すること、以ってドイツで法曹資格を得ることが、生涯にわたり不可能となる。

本課程(Hauptstudium)(5学期)

本課程では、重点分野(Schwerpunktbereich)を選択する。さらに、全ての科目の知識を深め、家族法・相続法・商法・会社法・労働法・治安法・警察法・建築法・国際法・ヨーロッパ法等の新しい科目を学ぶ[4]。本課程で行われる重点分野試験(Schwerpunktprüfung)は第1次国家試験(日本の司法試験に相当)の一部を成し、その評点は第1次国家試験の総合成績の30%を占める。重点分野の選択肢は、各々の大学によって異なる。(課程の構成も大学によって異なり、例えばフンボルト大学ベルリンの法学部では、基礎課程は2学期のみで、3・4学期から本課程として新しい法律科目を学び始める。その後5・6学期で重点分野課程、7〜9学期で復習課程が行われる[5]。(→詳細は「フンボルト大学ベルリン 法学部」を参照。))

第1次国家試験(1. juristisches Staatsexamen)

基礎課程と本課程を修了した後に、学生は第1次国家試験を受験する。しかし、試験に2回不合格となると法曹資格を得ることが不可能となるため、ほとんどの学生は徹底的に試験の準備をするために約1年間隔を空ける[4]。第1次国家試験は、大学が実施する重点分野試験(30%)と州が実施する必修分野試験(70%)から成る。

司法修習(Rechtsreferendariat)・第2次国家試験(2. juristisches Staatsexamen)

第1次国家試験合格後、2年間の司法修習と第2次国家試験(日本の二回試験に相当)を経て法曹となる。したがって、ドイツで法曹資格を得るには、最低でも7年かかる。

法学部の試験

ドイツの法学部では、講義への出席義務はなく、課題提出も求められない。重要なのは、インターンシップ等を除いて試験に合格することただ一つである。基礎課程の段階から、第1次国家試験の形式に合わせて、3時間の論文式試験を受け、事例問題を法的三段論法を用いた鑑定意見書式(Gutachtenstil)で解くことが求められる。

第1次国家試験は、重点分野試験(30%)と必修分野試験(70%)で構成される。重点分野試験は5時間の論文式試験・口述試験・研究作文から成り、必修分野試験は複数の5時間の論文式試験と口述試験から成る。

→試験の採点についての詳細は下記「採点システム」を参照。

法学士号の取得

一部の大学では、従来の第1次国家試験の合格を目的とした法学部のカリキュラムの中で、法学士号(LL.B.)も取得できる制度が設けられている。最近まではこのような一体型の法学士号を提供する大学は、フンボルト大学ベルリン、ベルリン自由大学、ヴィアドリナ欧州大学、トリーア大学等ごく少数に限られていたが、現在では一体型の法学士号の導入がトレンドとなっており、法学士号を提供する大学が増えている。法学士号を取得する場合は、標準的な修業年限より短い3年での卒業が可能である。

法学士号の取得は、第1次国家試験(必修分野試験)の受験資格を得るために必要な、重点分野試験を含む全ての試験に合格した場合にのみ認められる。つまり、法学士号を取得した学生は、第1次国家試験の不合格が確定した学生を除き、(残りの)第1次国家試験(必修分野試験)を受験する資格を有する。注意すべき点は、法学部は国家試験に対応した独自の採点システムを導入しているため、取得した点数は学士号に対応する一般的な評価段階に換算されることである。もっとも、この換算は法学部生にとって不利に働くことが多い。

法学部生の条件と負担

試験は論文式試験であるため、学生は大きな時間的制約の中で、長い事例や複雑な法令を正確に読み取るだけでなく、複数ページにおよぶ答案を器用な文章で表現できなければならない。そのため、法学部では高度な言語能力が前提とされ、その結果として、法学部の外国人学生の割合は経済学・情報学・医学・自然科学等の他の専攻に比べて著しく低くなっている。

長い修業年限に加え、学習量が膨大で採点システムが厳しい(→詳細は下記「採点システム」を参照)ことから、多くの学生が日常的に睡眠不足や不安障害に直面している[6]。法学部の中途退学率は約24%で、国家試験を伴う他の科目と比較しても圧倒的に高い水準である。そのため、ドイツの法学部では言語能力と論理的思考に加えて、粘り強さ・モチベーション維持力・自己規律力・時間管理能力等が要求される[7]。

採点システム

ドイツの法学部の採点システムは極めて厳格であり[2]、ドイツ国内の他の学部や他国の法学部とは比較しがたい。第1次国家試験の採点に合わせ、法学部の採点は0点から18点の範囲で行われ、7段階で評価される(詳細は下表「法学部の採点システム」を参照)。「合格」となるのは4点(可)からである。しかし、実際に使われるのは、その半分ほどであり、多くの学生の点数は0〜9点(不可〜良)に集中する。そのため、多くの学生にとって、4点を取ること自体が大きな関門であり、これを揶揄して「4点取れれば勝ち」(“Vier gewinnt“)と表現される。9点(良)以上の「優秀合格」の称号(Prädikatsexamen)は稀である[6]。学生は、10点〜12点で非常に優秀な学生層に属する[2]。

統計的に見ると、例えば2022年にノルトライン=ヴェストファーレン州で実施された第1次国家試験の16,512個の個別採点(2,752人分)では、16〜18点(秀)が約0.29% 、13〜15(優)が約3.18%、10〜12(良上)が約10.88%、7〜9(良)が約23.33%、4〜6(可)が約32.17%、0〜3(不可/完全不可)が約31.77%となっている[8]。

法学部の採点システム
説明
0点(完全不可) 完全に評価に値しない成績
1〜3点(不可) 大きな欠点があり全体として評価に値しない成績
4〜6点(可) 欠点はあるが平均的な要求を満たす成績
7〜9点(良) あらゆる点で平均的な要求を満たす成績
10〜12点(良上) 平均的な要求を上回る成績
13〜15点(優) 平均的な要求を大きく上回る成績
16〜18点(秀) 特に優れた成績

法学士号を取得する場合は、取得した点数は、学士号で用いられる一般的な評価段階に換算され、5段階(不可・可・良・優・秀)で評価される。

法学部を持つドイツの大学一覧

関連項目

脚注

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