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ナッシュ均衡

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ナッシュ均衡(ナッシュきんこう、英: Nash equilibrium)は、ゲーム理論における非協力ゲームの解の一種であり、いくつかの解の概念の中で最も基本的な概念である。数学者のジョン・フォーブス・ナッシュにちなんで名付けられた。

ナッシュ均衡は、他のプレーヤーの戦略を所与とした場合、どのプレーヤーも自分の戦略を変更することによってより高い利得を得ることができない戦略の組み合わせである。ナッシュ均衡の下では、どのプレーヤーも戦略を変更する誘因を持たない。

ナッシュ均衡は必ずしもパレート効率的ではない。その代表例が囚人のジレンマである(参考: 囚人のジレンマ#ナッシュ均衡)。

ナッシュ・イークウィリブリアムとも呼ばれる。


定義

標準型ゲーム において、 が を用いて、

を満たすとき、 はナッシュ均衡点(ナッシュきんこうてん、(英: Nash equilibrium)である[1]。

同義の別の表現で定義すると以下のようになる(重複する記号定義は省略)。

において、 の各成分 が に対する の最適反応戦略全体の集合 を用いて、

を満たすとき、 はナッシュ均衡点である[2]。

定義の解釈

前者の定義は「全プレイヤーがそれぞれ戦略を選択してできた戦略の組 について、どのプレイヤーであっても自身単独での戦略変更が自身の利得増加にならないとき、 はナッシュ均衡点である」と解釈できる[3]。

後者の定義は「全プレイヤーがそれぞれ戦略を選択してできた戦略の組 について、各プレイヤーの戦略が他プレイヤーの戦略セットに対する最適反応になっているとき、 はナッシュ均衡点である」と解釈できる。

性質

単独逸脱による損失

ナッシュ均衡から単独で逸脱すると利得は増加せず、維持あるいは減少する[3]。

ナッシュ均衡の定義より、どのプレイヤーであってもナッシュ均衡から自身単独で戦略を変更しても自身の利得増加にならない(⇒ #定義の解釈)[3]。言い換えれば、良くて利得は維持であり悪ければ損失が生まれる(= 利得が減る)。

自己拘束的

標準型ゲームにおけるナッシュ均衡は自己拘束的である[4][5]。

ナッシュ均衡点から単独で逸脱すると自身の利得は維持あるいは減少する(⇒ #単独逸脱による損失)[3]。よってナッシュ均衡点から逸脱するインセンティブは無いがディスインセンティブは有る。これが全てのプレイヤーで成立するため、合理的なプレイヤー間で一度ナッシュ均衡点が仮定されると全プレイヤーが外的拘束力無しで自発的にこれを遵守し続ける。すなわち、ナッシュ均衡は自己拘束的である[4][5]。

分類

ナッシュ均衡は様々なタイプに分類・精緻化できる。以下はその一例である:

純粋戦略ゲームにおけるナッシュ均衡

純粋戦略ゲーム(Pure strategy game)とは、参加者 (プレーヤー) が必ずどれかの戦略を選ぶゲームである。

逐次消去による均衡

相手の戦略によってどの戦略が最も大きな利得を出すかが変化する場合、他の戦略すべてを支配できる戦略が存在しない場合がある。そのような場合、他から支配されている戦略(被支配戦略)を消去していくことで残った戦略の組み合わせを支配戦略均衡と定義できる。支配戦略によってナッシュ均衡が定義できる場合、それは消去によって定義されたものと一致する。

Pa/PbB1B2B3
A15, 22, 44, 0
A24, 63, 62, 5
A33, 31, 27, 2

B3 は B2 に支配されているため、B3 を消去。

Pa/PbB1B2
A15, 22, 4
A24, 63, 6
A33, 31, 2

A3 は A2 に支配されているため A3 を消去。

Pa/PbB1B2
A15, 22, 4
A24, 63, 6

B1 は B2 に支配されているため B1 を消去。

Pa/PbB2
A12, 4
A23, 6

支配戦略均衡は(A2, B2)。

純粋戦略ナッシュ均衡

他のプレイヤーの戦略によらず最大利得をもたらす戦略の組合せも被支配戦略の逐次消去によって求まる戦略の組合せも支配戦略均衡であるが、ゲームの設定によっては上述した2つの方法では均衡を求めることができない。ナッシュ均衡の定義によれば他のプレイヤーの戦略を最適反応であると仮定したうえで自身の最適反応を求めればよいので、支配戦略均衡が存在しない純粋戦略ゲームにおいてもナッシュ均衡を見つけることができる。

たとえば上の3×3の標準形ゲームの(A1, B3)の利得を(4, 0)から(4, 5)に変えればどの戦略も逐次消去されず、支配戦略均衡が求まらないが、

Pa/PbB1B2B3
A15, 22, 44, 5
A24, 63, 62, 5
A33, 31, 27, 2

相手の戦略を所与としたときに最大利得をもたらす戦略(最適反応)を組み合わせていくと、唯一(A2, B2)が最適反応の組合せになっていることがわかる。従ってこのゲームには純粋戦略ナッシュ均衡が一組存在する。

混合戦略ゲームにおけるナッシュ均衡

混合戦略ゲームとは、参加者が行動を確率的に選ぶような戦略をとることでナッシュ均衡に到達する非協力ゲームのことである。このようなゲームでは純粋戦略ナッシュ均衡が必ずしも存在せず、ナッシュ均衡は各参加者の行動確率の組として表される。有限の(=プレーヤーの数と各プレーヤーの戦略の数が有限の)混合戦略ゲームでは少なくとも1つのナッシュ均衡が存在することはナッシュの定理で証明されている(ナッシュは、この証明を角谷の不動点定理を応用することによって得た)。

以下では具体例を用いて混合戦略ナッシュ均衡を求めてみる。2人のプレイヤー Pa と Pb はそれぞれ2つの戦略から1つを選択するが、相手がどの戦略を選択するかはわからないため、各プレイヤーが確率的に相手の行動を予測する。すなわち Pa は相手 (Pb) が確率 q で B1 を選択し、Pb は相手(Pa)が確率 p で A1 を選択すると予想しているとする。

Pa/PbB1
確率 q
B2
確率 (1 − q)
A1
確率 p
1, 20, 0
A2
確率 (1 − p)
0, 02, 1

この表のゲームにおいて Pa の得る利得の期待値は:

  • A1を選択:1 × q + 0 × (1 − q)
  • A2を選択:0 × q + 2 × (1 − q)

一方、 Pb の得る利得の期待値は:

  • B1を選択:2 × p + 0 × (1 − p)
  • B2を選択:0 × p + 1 × (1 − p)

ここで最適反応をとるとは相手の行動確率に関して期待利得がより大きな戦略を選ぶことであるから、以下のように各プレイヤーの行動をまとめることができる。

Pa/Pbp > 1/3p < 1/3
q > 2/3p=1, q=1p=1, q=0
q < 2/3p=0, q=1p=0, q=0

なお、p=1/3, q=2/3 のときはそれぞれ期待利得が相手の行動に関して無差別なので、平面上に各軸を行動確率(pとq)として各プレイヤーの最適反応をグラフで表わすことができる(これを均衡経路という)。混合戦略ナッシュ均衡とはこの図における均衡経路の交点であり、従って混合戦略ナッシュ均衡において Pa は(1/3, 2/3)を選択し、Pb は(2/3, 1/3)を選択する。

ここで分析したゲームは一般的に両性の争い(英語版)と呼ばれるものである。

脚注

参考文献

関連項目

外部リンク

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