ニール・ハービソン
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ニール・ハービソン(Neil Harbisson、1982年7月27日 - )は、カタルーニャで育った[15]イギリス系・アイルランド系のサイボーグ・アーティストである[16]。世界で初めて法的に認められたサイボーグとして紹介され[17]、世界初のサイボーグ・アーティストとも称されている[18][19]。
ニール・ハービソン Neil Harbisson | |
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スティーヴン・サッカーによるインタビューを受けるハービソン | |
| 生誕 |
1982年7月27日(44歳)[1] マタロー、スペイン |
| 教育 | ダーティントン芸術大学[2] |
| 著名な実績 | パフォーマンス・アート、ボディアート、サイボーグ・アート |
| 代表作 | Cyborg Antenna、Transdental Communication、Solar Crown、Sound Portraits |
| 受賞 |
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| 公式サイト | cyborgarts.com |
頭蓋骨にアンテナを埋め込んだ状態で英国パスポートの写真に写ることを認められたことをきっかけに国際的な注目を集めた。ハービソンはこの装置を新たな感覚器官と考えている[20]。彼の芸術活動は、知覚の拡張、人工感覚の開発、技術によって拡張された身体を持つ人々に関する可能性を中心としている[21]。
2004年以降、ハービソンはアンテナを用いて、赤外線や紫外線を含む色彩を骨伝導による可聴振動として知覚している[22]。この装置は、画像、色情報、インターネットを含む外部からの信号も受信できる[23]。
2010年、サイボーグ財団を共同設立した。同団体はサイボーグの権利擁護、感覚の拡張を希望する人々への支援、およびサイボーグ・アートの促進を目的としている[24][25]。2017年には、自己設計と非人間的なアイデンティティまたは感覚システムを持つ人々の認識を提唱するトランスピーシーズ・ソサエティを共同設立した[1]。
生い立ち
作品
人工感覚
ハービソンの活動の中心には、従来の生物学的限界を超えて人間の知覚を拡張することを目的とした、人工感覚の設計と恒久的な身体への統合がある[40]。これらの装置は外部ツールではなく、新たな感覚器官として扱われている。
サイボーグ・アンテナ
サイボーグ・アンテナは、頭部後方から伸びる恒久的に埋め込まれた感覚装置である[41]。2003年にアダム・モンタンドンと共同で開発され[42]、後にピーター・ケセとマティアス・リザナによって改良された。アンテナは色彩の周波数を頭蓋骨を通じて伝わる振動へ変換する[43]。可視光だけでなく赤外線や紫外線などの不可視波長も検出でき、外部機器や衛星に接続して追加の信号を受信することも可能である[44][19]。
複数の倫理委員会が手術を承認しなかった後、インプラント手術は匿名で行われた[45]。ハービソンは他者が色彩や画像を直接自身の頭部へ送信することを可能にしており、こうした入力が夢に影響を与えることがあると述べている[46]。頭蓋骨を通じて画像を送信する最初の公開デモンストレーションは、アルジャジーラの番組『The Stream』で生放送された[47]。また、頭蓋骨へ直接電話をかけた最初の人物はルビー・ワックスであった[48]。
2014年には、タイムズスクエアからリアルタイムで送信された色情報を受信し、観客の前でキャンバスに再現する「頭蓋骨を通じて伝送された絵画」と紹介された作品を制作した[49][50]。
時間感覚:ソーラー・クラウン
ソーラー・クラウンは時間感覚のための感覚装置であり、発熱する一点が24時間かけて頭部の周囲をゆっくりと回転する[51]。熱が額の中央に来るとロンドン(経度0度)の太陽時で正午を示し、右耳に達するとニューオーリンズ(経度90度)の正午を示す[52]。回転速度を変えることで時間知覚を変化させる可能性を探究している[53]。ハービソンは、視覚器官があるから錯視を作れるのと同様に、時間感覚の器官があれば「時間の錯覚」を作れる可能性があるとしている[54][55]。
経歯的通信システム:BlueTOOTH(Bluetooth Tooth)
経歯的通信システムは、それぞれBluetooth対応ボタンと小型振動装置を内蔵した2本の歯から構成される[56]。ボタンを押すと相手の歯に振動が送られる[57]。一方の歯はハービソンに、もう一方はムーン・リバスに装着され、両者はモールス信号を用いて歯から歯へ通信できる[58]。最初の実演はサンパウロで行われた[59]。
科学・学術研究
神経科学と感覚代行
ハービソンによるアイボーグの使用は、感覚代行および神経可塑性に関する科学研究の対象となっている。2012年、研究者らは論文中で「主要被験者」と記されたアイボーグ使用者について神経画像研究を行った。この被験者は全色盲と診断され、8年間アイボーグを使用していた人物であり、その特徴はハービソンと一致している。結果は2015年、Alfaroらによって『Frontiers in Systems Neuroscience』に「Hearing colors: an example of brain plasticity」として発表された[60]。
この研究では、機能的磁気共鳴画像法(fMRI)、拡散テンソル画像(DTI)、磁気共鳴スペクトロスコピー(¹H-MRS)を用い、電磁光の周波数をセンサーで検出し、骨伝導によって頭蓋骨へ伝達される音の周波数に変換する装置であるアイボーグの長期使用に関連する脳の変化を調査した[60]。
研究者らは、機能的神経活動、構造的結合性、皮質組織において、アイボーグ使用者と対照参加者の間に差異があると報告した。色彩刺激時には使用者の活動は主に一次視覚野(V1)とV2の一部に集中した一方、対照群では後頭葉、側頭葉、頭頂葉、前頭葉のより広範なネットワークで活動が見られた。また、視覚画像とアイボーグのアルゴリズムで符号化された音を同時に提示した場合、使用者では聴覚野および言語・意味処理に関連する領域を含む広範な活動が観察された[60]。
DTIでは白質組織にも差異が確認され、左下前頭後頭束の一部でミエリン密度の増加が示された。研究者らは、これらの機能的・構造的所見を、アイボーグの長期使用に関連する適応的・代償的変化の可能性として解釈した[60]。
人間拡張と認知
ハービソンの事例は、技術と人間の認知および身体との統合に関する学術研究でも検討されている。実験的・投機的なニューロテクノロジーに関する研究では、アンテナを人間拡張の一例として扱い、脳組織ではなく頭蓋骨に統合されている点で直接的な脳インプラントと区別している[61]。また、拡張認知システムの研究では、アイボーグを人の知覚的・認知的プロセスに深く統合され得る人工物の例として取り上げ、その統合が主体性の境界をどこまで拡張するかを検討している[62]。
さらに、人体と技術的義肢の境界に関する事例研究としても論じられている。2022年の『Journal of Law and the Biosciences』掲載論文は、植込み型技術装置を身体の完全性および法的保護の観点から身体の一部とみなすべきかを検討する際、アイボーグを代表例として扱った[63]。2021年には『Postdigital Science and Education』の論文が、サイボーグ的人格、身体性、治療的回復と技術的強化の区別に関する議論の中でハービソンを取り上げた[64]。
= 心理学と倫理
ハービソンの事例は、サイボーグに対する認識についての実証研究にも用いられている。『Current Psychology』に掲載された研究では、ハービソンの写真と説明をサイボーグ人物の刺激として参加者に提示し、人間中心主義的信念、心や魂の帰属、道徳的地位の認識との関係を調査した。研究では、心や魂の帰属とサイボーグ人物に与えられる道徳的地位との関連が報告された[65]。
また、人間拡張の倫理に関する研究でも取り上げられている。『Science』の政策フォーラムは、人間拡張研究の倫理指針を検討する中で、ハービソンの骨結合型アンテナを、赤外線や紫外線の知覚を含む通常の人間の感覚範囲を超える能力を拡張する技術の例として挙げた[66]。
音楽
ハービソンはダーティントン芸術大学で音楽作曲を学んだ。この時期、サイバネティックな感覚拡張によって生成される音楽実践を表す言葉として「サイボーグ音楽(cyborg music)」を用いた[67][68]。
サイボーグ音楽

サイボーグ音楽とは、外部の音響振動だけでなく、身体に統合された装置によって生成される内部的な知覚体験から生み出される音楽と定義される[70]。この枠組みでは、色彩周波数や環境情報などのデータが埋め込み型システムを通じて神経刺激へ変換され、内部的な音程知覚を生み出す[71]。この場合、身体と脳は楽器であると同時に演奏空間としても機能する[72]。
その一例が、埋め込み型アンテナによる色から音への変換に基づく『Concerto for Piano No. 1』である。この作品では「I am playing the piano」という文章が異なる色の文字でピアノに描かれた[73]。各色はアンテナによって対応する音の周波数へ変換され、内部的に知覚される作品となった[73]。
その後、色彩を音の周波数へ変換し、楽器の木材を通じて音を外部化するシステムを組み込んだプリペアド・ピアノ作品『Pianoborg Concerto』を開発した[74]。
アイスランドのヴァイオリニスト兼歌手マリア・フルド・マルカン・シグフスドッティル[75]や、サイボーグへの関心を共有するカタルーニャの音楽家パウ・リバとも共同制作を行った[76]。彼らのパフォーマンスはバルセロナのSala Luz de Gasを皮切りに、バルセロナ、カダケス、マタローなどで行われた[77][78][79]。
パフォーマンスと展覧会

ハービソンの作品は、新しい感覚の創造と、それらを通じた芸術作品の制作に焦点を当てている[80][81]。
作品は、サビナ現代美術館(ソウル)、バルセロナ現代文化センター(CCCB)、Pioneer Works(ニューヨーク)、アートサイエンス・ミュージアム(シンガポール)、Centre d'Art Santa Mònica(バルセロナ)、アメリカン・ビジョナリー・アート・ミュージアム(ボルチモア)、第54回ヴェネツィア・ビエンナーレなどで展示された[82][83][84][85][86][87][88][89]。
「Sound Portraits」は、アンテナで人物の顔をスキャンし、その結果得られた音符を書き留め、後に音声作品として制作するシリーズである[90][91][92][93]。
「Colour Scores」は、音、音楽、声を色彩へ転置することに基づく絵画シリーズである[94][95]。
2009年には、2004年から2009年に人間の皮膚から検出した色相と明度を基に『Human Colour Wheel』を発表した[96]。これは、人間を黒または白ではなく、非常に濃い橙色から非常に淡い橙色までの異なる橙色の濃淡として捉えることを目的とした[97]。
『Capital Colours』では、訪問した都市の支配的な色彩を展示している[98][99][100][101]。各都市を少なくとも2つの色相で表現できるまで色をスキャンする方法を用いている[102][103]。
公開出演とメディア
ハービソンは、英国科学フェスティバル、TEDGlobal、ロンドン・ファッション・ウィーク、Sónarなどの大学、会議、フェスティバルで講演を行っている[104][105][106][107][108]。
2013年には、ハービソンを題材とした短編映画[109]がサンダンス映画祭のFocus Forward Filmmakers Competitionでグランプリを受賞した[110]。2015年にはニューヨークのハービソンを扱ったドキュメンタリー『Hearing Colors』がVimeoの「Staff Pick」に選出され、2016年にはトライベッカ映画祭のX Awardを受賞した。
ディスカバリーチャンネル、『Documentos TV』、Last Call with Carson Daly、『Richard & Judy』、『Buenafuente』、『Fantástico』などのドキュメンタリーやテレビ番組にも出演している[111][112][113][114][115]。
その活動や思想は、ニューヨーク・タイムズ、ニュー・サイエンティスト、Wired、Forbes、The Scientistなどでも取り上げられている[116][117][118][119][120]。
また、アダム・グリーン監督、マコーレー・カルキン、ナターシャ・リオン、フランチェスコ・クレメンテらが出演するインディペンデント映画『Adam Green's Aladdin』にも登場している[121]。
関連項目
- Manfred Clynes
- オリヴァー・サックス
- オルラン
- ステラーク
- Genesis P-Orridge
- アンディ・ウォーホル
- ムーン・リバス
- Cyborg Foundation