ネクロトーシス

From Wikipedia, the free encyclopedia

ネクロトーシスのシグナル伝達経路

ネクロトーシスまたはネクロプトーシス: Necroptosis)はプログラムされた壊死の一形態であり、これまでに報告されているプログラム細胞死の多彩な様式の一つである[1]。従来、壊死は外的な要因(機械的損傷、熱、浸透圧、特定の寄生虫による破壊など)による損傷と関連付けられてきた。アポトーシスによる秩序立ったプログラム細胞死とは対照的に、この意味での壊死は細胞内で起こる生物学的プロセスを伴わない。細胞の内容物は細胞の死後にのみ重要となる。通常は細胞内区画にしか存在ない分子が細胞外環境に放出されると、他の細胞によって検出されて反応を惹起する。損傷関連分子パターン(DAMP)と称されるこれらの分子は組織損傷の監視役として機能し、受容細胞から対応する応答を引き起こす。

ネクロトーシスの発見は、細胞がプログラムされた形で壊死を実行し得ること、アポトーシスが常に優先される細胞死形態ではないことを明らかにした。壊死は、免疫系の多面的かつ協調的な応答に代表される細胞レベルの反応を迅速に誘導する点で有利である可能性がある。ネクロトーシスはウイルス防御機構として明確に定義されており、ウイルス複製を抑制するウイルスカスパーゼ阻害剤の存在下で、細胞がカスパーゼ非依存的に「細胞自殺」を起こすことを可能とする[2]。疾患への応答であることに加え、ネクロトーシスはクローン病膵炎心筋梗塞などの炎症性疾患の構成要素としても特徴づけられている[3][4]

ネクロトーシスを実行するシグナル伝達経路は概ね解明されている。TNFは受容体TNFR1を刺激する。TNFR1結合蛋白質である細胞死関連タンパク質TRADD英語版とTNF受容体関連因子2(TRAF2英語版)はRIPK1にシグナルを送り、RIPK1はRIPK3英語版を動員してネクロソームリポトソームとも呼ばれる)を形成する[2]。リポトソームによるMLKL英語版のリン酸化はMLKLのオリゴマー化を促進し、その結果MLKLが細胞膜や細胞小器官に挿入されて透過性を亢進させる[5][6]。MLKLの浸透は炎症性表現型とDAMPの放出を引き起こし、これが免疫応答を誘発する。

自然免疫

ネクロトーシスは脊椎動物に特有の細胞死であり、病原体に対する追加的防御機構として進化した可能性がある。また、ウイルス感染時にアポトーシスシグナル伝達蛋白質がウイルスによって阻害されるなど細胞がアポトーシスを遂行できない状況において、ネクロトーシスは代替的な「フェイルセーフ」細胞死経路としても機能する。

細胞の自殺は、病原体の生物個体全身への拡散を阻止する効果的な手段である。感染に対するアポトーシス応答では、感染細胞の内容物(病原体を含む)が封じ込められ、食作用によって取り込まれる。ヒトサイトメガロウイルスなどの一部の病原体は、宿主細胞のアポトーシス機構を停止させるカスパーゼ阻害物質を発現する[7]。ネクロトーシスはカスパーゼ非依存性であるため、細胞はカスパーゼの活性化を回避し、病原体が細胞内に潜伏できる時間を短縮する。

特定の状況下では、Toll様受容体(TLR)群に属するTLR3およびTLR4も、リポ多糖細胞質二本鎖DNA(細胞質dsDNA)などの細菌・ウイルス感染関連分子シグナルに応答してネクロトーシスを引き起こすことがある[2]。TLRシグナル伝達はRIPK1とRIPK3からなる「ネクロソーム」(: Necrosome)の形成を誘導し、これがMLKLを動員して活性化する。TLR並びにTNFスーパーファミリーのメンバーとは独立して、細胞質DNA認識蛋白質であるZBP1英語版もネクロトーシスを刺激する可能性がある。活性化MLKLはネクロトーシスによる細胞死の最終執行者として、オリゴマー化し細胞膜に侵入して破裂させ、細胞内容物が排出されて細胞死が引き起こされる[8]

アポトーシスとの対比

アポトーシスでは、細胞表面の受容体を介した外因性シグナル伝達、あるいはミトコンドリアからのシトクロムc放出による内因性シグナル伝達がカスパーゼ活性化を引き起こす。細胞内部の蛋白質分解では、細胞残骸をアポトーシス小体に包み込み、貪食作用によって分解・再利用される。アポトーシスとは異なり、ネクローシスおよびネクロトーシスはカスパーゼ活性化を伴わない。壊死による細胞死は細胞内容物が細胞外へ漏出することで終わるが、これはアポトーシス小体への組織的な内容物排出とは対照的である[9]

過程

医学的関連

出典

Related Articles

Wikiwand AI