ネット世論

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ネット世論(ネットせろん・よろん)とは、インターネット上で形成される意見や感情のこと。過激な意見、両極端な意見を持つ人がネットで熱心に発信しているのが特徴。そのため偏りが生じやすい[1]。一部ではSNS世論とも呼ばれている。

ネット世論はSNSXなど)や掲示板、ニュースサイトのコメント欄など、さまざまなオンラインプラットフォームを通じて形成される。過激な意見や両極端な意見を持つ一部の人が熱心に発信しているため目立ちやすい一方、サイレントマジョリティ(沈黙の多数派)は熱心に意見を発言しないため、ネット世論は偏りが生じやすく実際の世論とは異なる傾向が強い。ネット世論の研究者はネット世論は真の世論と見てはいけないと発言している[1]。 文化庁の国語の世論調査ではSNSで不特定多数に向けたコメントや投稿などをしている人は全世代の2割であることが分かっている[2]

ScienceDirect (サイエンス・ダイレクト)掲載の論文では、SNS上の発信や対立はごく少数のユーザーに大きく偏っていると指摘している。具体的には、全体の3%のアカウントが投稿の33%を生み出し、ネット上の対立の74%はコミュニティのわずか1%で発生している。さらに、0.1%のユーザーが偽ニュース情報の80%を拡散しているという。ネット上の政治議論では、SNSに頻繁に投稿する人ほど思想的に極端である傾向が強い。実際、Xにおける政治投稿の97%は最も活発な10%のユーザーから発信されており、これは人口の約90%の政治的意見が、ネット上の3%未満のツイートによって代表されていることを意味すると書かれている[3]

問題点

ネット世論のメリットとしては少数派の意見、多様な意見が見える。社会運動に繋がる可能性などがあるが、多くの問題点を抱えている。

SNSで両極端の少数派の意見が多数派の世論の意見に見えてしまう問題

ネット世論に詳しい立命館大学産業社会学部准教授の谷原つかさはSNSの基本的な性質について、好きか嫌いかの両極端な強い意見が集まり、どちらでもない意見の人は書き込まないプラットフォームであるため見極めが必要としている[4]

谷原は、2021年衆議院選挙の選挙期間中のX空間についてネット世論がどのように形成されるのか、AIを使って解析を行っている。その結果、「Xで主流になっているように見える意見は、たった0.2%のユーザーによって作られていた」ことが分かった[5]

同じくネット世論に詳しい国際大学グローバル・コミュニェーションセンター准教授の山口真一が、ネット世論に関して2018年に大規模な調査分析を行っている。テーマは「憲法改正」。アンケートでは、憲法改正に賛成か反対か、憲法改正に賛成・反対についてのSNSの投稿回数を聞いている。「非常に賛成である」~「絶対に反対である」までの七段階で社会の意見分布を調査すると、「賛成とも反対ともいえない」が31.2%となり中庸的な意見の人が最も多い。「非常に賛成である」、絶対に反対である」は7%程度と低い。

しかしこれをSNSの投稿回数で分析すると、「非常に賛成である」が28.9%が最も多く次は「絶対に反対である」が17.2%となった。同じテーマで意見分布を調査したはずが、現実の両極端な意見14%がネット上の46%の意見をつくっていることが分かった[6]

フィルターバブルとエコーチェンバー

SNSのアルゴリズムが自分が欲しいと思った情報ばかりを流してくるので情報が偏るフィルターバブル。同じ意見の者同士がつながるため情報が偏るエコーチェンバー現象が問題視されている[6]

日本、米国、ドイツ、中国を対象としたの調査で、SNSにおいて自分に近い意見が表示されやすいことを「知っている」との回答は、米国77%、ドイツ71%、中国79%だったのに対し日本は38%と他国を大幅に下回る結果となった[7]

運営側がSNSのアルゴリズム変更でネット世論誘導

米紙ワシントン・ポストが、米大統領選のXを調査。イーロン・マスクが選挙期間中にXのアルゴリズム変更しトランプ氏のメッセージを拡散しやすいようにしたと調査結果を公表[8]

オーストラリア・モナッシュ大のマーク・アンドレイエビッチ教授も米大統領選のXを調査したところ「右派の投稿が優遇される傾向が明確に見られた」と指摘している[8]

分断と対立

フィルターバブルとエコーチェンバーにより分断と対立は起きるが、それ以外でもネット世論の少数の意見を賛否両論とメディアが報じることにより広がり、分断と対立を加速させることもある[6]

炎上させるのは少数の仕業

ネット炎上の研究で約2万人を対象にアンケート調査をした結果、実際に書き込んでるのはたった0.5%で2万人のうち100人程度であることが判明した。0.5%のうち年間に11件以上の炎上に書き込みをしている人は10%で0.05%。炎上1件あたりに書き込んだ回数は、51回以上の人が3%。全体の0.015%だった[9]

また炎上に参加している層は年収の高い「中間管理職」が多く[10]、誹謗中傷の加害者は50代男性が最多だった[11]

デマの拡散

SNSでは拡散スピードも速い。衝撃的な内容が出てきた場合等に情報源等を確認せず安易に拡散することがある。そのためフェイクニュースやデマが蔓延してしまっている現状がある。政治関連はフェイクニュースやデマが拡散されやすい。

芸能人デマの事例では、X上で暴露系と呼ばれるインフルエンサーの滝沢ガレソが有名な芸能人夫婦が不倫しているというネタを分かりやすいヒント付きでXに投稿。それがすぐ拡散し芸能人夫婦の正体は「星野源」・「新垣結衣」だと事実であるかのようにXでトレンド入りし所属事務所も深夜にデマに対しての対応をせざる得なくなるなど大きな騒動になった。名前を書かれた本人らはデマであると完全否定し法的措置取ることを発表した[12]

政治デマの事例では、2024年兵庫県知事選挙において立候補した稲村和美が、「県庁の建て替えに1000億かける」「市長時代に退職金を増額させた」「外国人参政権を推進」等のデマを拡散され、嘘通報でXを凍結され、選挙妨害があったとして刑事告訴し受理されている[13]。ネット上での中傷やデマと戦いながら、接戦で敗れた稲村氏は「他の候補者と争ったというより何と向かい合っているのかなという違和感があった」と語っている[14]。 2025年、宮城県知事選挙において現職の村井嘉浩が立候補し、前自民党参院議員・和田政宗氏(参政党支援)と争い当選した。村井氏は「これまで経験したことのない選挙だった」と強調し「一つの政党が全力で一人の候補者を支援し、徹底的に誹謗中傷やデマ(「悪行14選、秋保のメガソーラーを推進など)が拡散された。個人の事務所では対応できない規模で、非常に深刻な状況だった」と振り返った。選挙中にSNSで虚偽情報や誹謗中傷が拡散したことについて、県が中立的な立場から事実関係を調べ、必要に応じて警察への告発を支援する仕組みを検討してるとした[15]

総務省が行ったSNSで拡散する偽・誤情報に関する実態調査では、4人に1人が偽・誤情報の拡散を経験しているとの結果が出ている。調査では日本ファクトチェックセンターの検証で偽・誤情報認定された15項目を挙げて行われ、この情報が一つでも「正しい」「おそらく正しい」と回答した人は47.7%、SNSで拡散した人は25.5%だった[16]

選挙ではコミュニティノート機能が役に立たず

Xでは誤った投稿を第三者が訂正できるコミュニティノート機能がある(※情報が「役に立つ」と評価を集めないと一般に公開されない仕組み)。一般社団法人「Code for Japan」と法政大学の藤代裕之教授の研究グループが、兵庫県知事選挙の期間中のXでのコミュニティノート機能を分析したところ、作成された165件のノートでは、一時的に公開されたものが5件あっただけで、ほとんど一般に公開されていなかった。理由として選挙では主張が対立して誤った情報に対しても評価が分かれやすいためコミュニティノートが機能しなかったとしている[17]

政治的に対立する政治団体に関する投稿はシェアされやすい

イギリスのケンブリッジ大学スティーブ・ラティー博士らの研究チームが、政治的に対立する集団への敵意がSNS上でのエンゲージメント(いいね・リツイート・リポストなどの反応)を高めるかどうかを調査したところ、対立する政治団体に関する投稿はシェアされやすいことが判明[18]

ネットのデマ情報でストレスやニュースへの関心低下

国際大准教授の山口真一監修のもと、デマ情報を「見聞きしたことがある」人を対象に日本ファクトチェックセンターと電通総研で調査をした。その結果、48%が「ストレスや不安を感じるようになった」、44%が「ニュースに対する関心が全体的に低下した」と回答している。[19]

選挙情報については読売新聞が、SNSと選挙をテーマに全国世論調査(郵送方式)を実施。結果、SNSの選挙情報は「信頼できない」69%、偽情報の投票への影響「心配」84%となった[20]

NHKも参議院選挙に関する全国世論調査(郵送方式)をした。SNSのでデマ情報が広まり、投票行動への影響懸念を感じると答えた人は80%、選挙期間中の収益目的の投稿の規制については国の規制が必要だと答えたのは78%、SNS運営事業者が収益の支払い停止できる仕組みは必要だと答えた人は87%だった[21]

ネットのデマ情報元はSNSが最多

上記の調査で、デマ情報を毎日見聞きする人と感じているの中でデマ情報元は「SNS」が32%と最多となった。次いで「ネットニュース」が26%、「動画共有サービス」24%となった[19]

SNSを使った外国勢力のネット世論工作

アメリカの事例

アメリカでは、ロシアや中国をはじめとする外国勢力が、SNSを使いアメリカ向けにネット世論工作を仕掛けているというニュースが頻繁に報じられている[22]

2025年には、99%正確とされるXの位置情報機能(※位置情報が最近の旅行、一時的な移動、仮想プライベートネットワーク(VPN)の使用によって影響を受ける可能性があるという警告あり)で人気政治インフルエンサーらがユーザーをミスリードしていたとBBC調査で明らかになった。これらのアカウントはトランプ米大統領を支持しアメリカ政治の投稿しているが国外に拠点を置いていた。BBCの調査によると共和党議員もフォローしてる「TRUMP_ARMY_」というアカウントはフォロワーが50万人以上いるが、インドに拠点を置いておりユーザー名は2022年3月以降に4回変更され、最後の変更は2022年7月だった。発覚後はプロフィールがアメリカ、トランプ大統領、マスク氏を愛するインド人に変更した。さらに「IvankaNews_」という100万人以上のフォロワーがいるアカウントはトランプ氏の娘のファンアカウントを名乗っており昨年、大統領への投票について投稿していたが、アフリカのナイジェリアに拠点を置いており、ユーザー名は2010年以降11回変更されていた。発覚後、アメリカ国外に住んでいるがトランプ大統領の運動を本当に支持している者もいると反論。のちにXの運営はアカウントを停止した[23]

日本の事例

中国からの例では東京電力福島第一原発の処理水放出などに反対する国内の市民団体主催のオンライン署名を呼び掛けるSNS投稿に中国側の世論工作の疑いが強い投稿があることが調査機関の分析で分かった[24]

ロシアからの例ではYahoo!ニュースのコメント欄が情報工作に利用されていると英カーディフ大学の研究チームの報告書で明らかになった[25]。他にも2025年の参院選においてSNSでロシアの選挙介入が発覚したと話題となった。ロシアの工作用BOTが自民党閣僚の悪質なデマを拡散しバズるようにしかけているという[26]

2025年頃からロシアの国営メディア「スプートニク日本版」や在日公館が、日本のウクライナ支援などを批判する日本語の投稿をSNSなどで急増させていたことが日本政府の調査で発覚した。 ロシアが日本に情報戦をしかけ日本の世論の分断をさせウクライナ支援の削減させようとしているとみられる。またスプートニク日本版の公式Xでは「ODA(政府開発援助)控えるべきだ」「海外支援なんか全部やめて国内に」との声を日本国民の声であるかのように繰り返し紹介し親露なSNSアカウントが拡散した。さらには国際協力機構(JICA)を米国際開発庁(USAID)の日本版と関連づけJICAのウクライナの公共放送支援も不正があるかのように言及した[27]

2025年の第27回参議院議員通常選挙ではロシアがSNSで選挙介入をしていた形跡が見つかっている。詳しくは『外国勢力の選挙介入』を参照。

2026年の第51回衆議院議員総選挙前には、Xの70アカウントが、外国人問題や政党批判などに関する投稿を組織的に転載し、情報を拡散していたことが、情報分析企業「ジャパン・ネクサス・インテリジェンス」により発覚した。詳しくは『外国勢力の選挙介入』を参照。

日本国内からもTwitterを使いネット世論工作が行われていたことが発覚している。

Twitterのアカウント「Dappi」は自己紹介文として「日本が大好きです。偏向報道をするマスコミは嫌いです。国会中継を見てます。」記述しており愛国心のある個人アカウントであるかのように装って自由民主党や日本維新の会議員の発言を称賛する一方で、立憲民主党や日本共産党の議員への誹謗中傷や批判を繰り返し行っていた。誹謗中傷を受けた立憲議員が訴えたところ回線業者がウェブコンサルティング会社ということ、取引先には自民党、政治資金収支報告書によると、過去には同党衆院議員の資金管理団体や党支部からウェブサイト制作などを受注していることが判明した[28]

意図的に過激に扇動しお金稼ぐ(レイジベイティング商法)

収益目的(広告収入やSNSのインプレッション収入)で、まとめサイトが記事の見出しやSNS投稿にて怒りなどの感情を揺さぶるように過激に扇動し煽る(レイジベイティング商法)ことが問題視されている[29]

英国オックスフォード大学出版局は、2025年の今年の言葉を発表。SNSで「炎上」をわざと狙ったコンテンツを指す言葉「レイジベイト(怒りの餌)」を選んだ。使用頻度は過去12カ月で3倍に増えているという[30]

愛国ビジネスの存在

愛国ビジネスは、思想で愛国心があるわけではなく、お金目的で愛国心を利用し過激に扇動してビジネスにしている[31]

メディア論の専門家である桜美林大の平和博教授は「(特に選挙時)外国人に関するデマは定番化しており、強い感情をあおる表現ほど注意が必要だ。怒りなどの負の感情は注目を集めやすく、拡散されやすい。それを利用して社会の分断をあおり、選挙結果の操作や収益化を狙う動きがある。 刺激的な情報に触れた際は事実確認を行い、冷静に判断することが大切だ。」と話している[32]

  • 事例
    • 訪韓経験ゼロの自称評論家がネットの情報だけで現地にはいかずに「韓国経済は崩壊する」という類の本を出し20万部(3000万円)当てている[33]
    • 政治系ニュースがメインの登録者数約30万のYouTubeアカウント「闇のクマさん」は、政治家に関するネット上の誤情報を動画投稿し最初の3年で1億円稼いだ。事実が混じるとあまり伸びず、誤情報がまじるとすごく再生数が伸びるという[34]。稼げるYouTube政治系動画チャネルは売買もされているという[35]
    • 東京都の男性(39)は第27回参院選前に政治系YouTube(参政党メイン)を2つ立ち上げ、参院選を挟んだ3カ月で約220万円稼いた。チャンネルの売却先も決まっており、次は高市総理ネタに変更するという[36]
    • 選挙が近づくとSNSで外国人デマが増える。第27回参院選では「政府が5000万人の中国人移民の受け入れを進めている」等のデマが拡散し、第51回衆院選公示前後には、「外国人を雇うと一人につき最大72万円の補助金が出る」「国内のパキスタン人約2・5万人→5万人へ拡大方針」等の事実無根の外国人デマが拡散された。厚労省や外務省はデマと否定した[32]
    • クラウドソーシングサービス「クラウドワークス」ではYouTubeなどに投稿する有償の特定の党や政治家を持ち上げるための政治系動画作成の募集が後を絶たずいたちごっこだが、中国批判系動画作成案件まで出てくるようになっている[37]
    • 奈良公園の鹿をめぐる問題では台湾人の観光客がSNSで日本人が鹿を蹴っていたという投稿を載せたところ元迷惑系YouTuberが無断で転載し鹿を蹴っている人物を中国人に改編して拡散した[38]。更には、20代の韓国人大学生の観光客Aさんが、奈良公園を訪れ、記念撮影中にシカが記念品入りの封筒をくわえてしまい中身を撒き散らした。このAさんが袋を取り返すと、元迷惑系YouTuberが近づいてきて騒ぎ始めたが、説明を聞いてその場を去った。しかし後日、元迷惑系YouTuberはSNS(X)に観光客Aの顔写真を載せ、「シカに唐辛子を食べさせた動物虐待犯」と虚偽の投稿をした。投稿は急速に拡散され、Aは誹謗中傷や差別的な攻撃を受けた。Aは顔写真公開により強い精神的苦痛を訴えている[39]
    • アフリカ開発会議(TICAD)で国際協力機構(JICA)が発表したホームタウン構想は、国際交流と日本が信頼を得るための長期的な投資が目的であった。しかしナイジェリア政府が誤情報を発信しSNSで移民が増える等のデマが流れたため、JICAと外務省は誤情報であると否定した。誤情報と否定後も不安を過剰に煽る情報が拡散しホームタウン関係自治体に抗議が殺到し続け仕事に支障が出ている状態のため撤回した[40]。千葉県木更津市のホームタウン問題について千葉県の熊谷俊人知事は定例記者会見で「虚偽であったとしても、人々が反応するものを(インターネット上で)大きく拡散させて利益を得る集団の存在がある」と指摘しSNSに対し適切規制議論をするべきだと語った[41]
    • 2018年、三重県伊勢市の伊勢神宮内宮近くの観光案内所の改修に合わせて多目的スペースを新設予定であり、1日5回の礼拝が義務のムスリムの礼拝場所としても使ってもらおうとした所、ムスリム礼拝所を設置するとムスリムの礼拝限定施設かのように誤報が広がり批判が起きたため撤回。2025年に7年前のこの誤報を2025年の出来事であるかのように再びSNSに拡散する者がおり市にも問い合わせの電話が殺到し市は冷静な対応を求めた[42]

ネット晒し・ネットリンチ(私刑)問題

ネット晒しやネットリンチしている人の大多数は正義感でやっているが、損害賠償リスクもある[43]

実例として、夫の不倫が発覚したケースでは、不倫相手(A子)は妻に謝罪し、今後、夫と接触しないことや慰謝料の支払い、互いに誹謗中傷しないことを条件に示談した。しかし妻は示談したのにもかかわらず、SNSにA子さんの情報を投稿したため、2024年に投稿1回につき違約金50万円を支払う公正証書が作成された。 それから数カ月後、妻は約2週間にわたりA子さんの氏名や住所、顔写真、勤務先などをSNSに投稿。 「旦那の不倫相手」などと指摘する投稿は計17件。これを受けA子さんは妻を提訴し、公正証書の合意に基づき計850万円の支払いを求めた。結果、150万円の賠償を命じる判決がでた[44]

デマによるネットリンチ(私刑)被害

ネットの法律が追いついてない1999年頃から、ネット掲示板でお笑いタレントのスマイリーキクチ氏が女子高生コンクリート詰め殺人事件の犯人の一人であるというデマを長年流され続けた事件。所属事務所や出演番組に誹謗中傷やクレームが相次ぎ、TVの仕事を失った。詳しくは『スマイリーキクチ中傷被害事件』を参照。

2019年、煽り運転していた加害者が、被害者の車を停車させ複数回の殴打を行い一週間の負傷を負わせた常磐道煽り運転事件では、加害者の車に同乗していた女性がガラケーで被害者を撮影しはじめたことからネットで「ガラケー女」呼ばれた。ガラケー女はサングラス姿だったためネットで特定の動きが起き、無関係の女性がガラケー女と名指しで晒され拡散され、1日約280本の迷惑電話や、1千件超の誹謗中傷被害にあった[45]

ネットリンチで減刑

2019年の池袋暴走事故では、禁錮7年の求刑に対して禁錮5年の実刑判決だった。2年減った理由として裁判長は「SNSで過度の社会的制裁が加えられている点は、本件に伴って被告人が受けた不利益として被告人に有利に考慮すべき事情の一つといえる」と述べた。遺族は「SNSの過度な制裁によって減刑になったことは悲しく思っています」と述べている[46]

いじめ晒し問題

2025年10月発表の文科省のいじめ調査(2024年)によると、いじめ防止対策推進法でいじめの積極的な認知の理解が広がり、小・中・高等学校及び特別支援学校のいじめ認知件数は、76万件となり、24年末までのいじめ解消率は76%、解消に向けて取組中が23%と公表された[47]

いじめ問題の大半は学校内で解決されているのが実態であるが、過去に一部の学校でいじめの隠蔽が疑われる問題が起き報じられたことから、 その印象で「学校はいじめを解決せず隠す、だからいじめをSNSで晒した方がよい」(※いじめのネット告発は名誉毀損罪等に問われる可能性もある。またリアルの実例では、いじめに関与したとビラを配り名誉毀損罪に問われ有罪判決になったケースもある[44])とSNSの一部で広がっている。 警察の視点では、元1課刑事の佐々木氏が、ネット上で動画を晒す行為は捜査にとって不利になり、法的解決を遠ざけると指摘した。動画は本来重要な証拠だが、公になることで加害者が事前に供述を準備できてしまう。結果として、警察が供述を崩す捜査や立証が難しくなり、捜査全体にマイナスの影響を与える。動画をネットに晒すのではなく、撮影した場合は学校や警察に提出すべきだと述べている。正規のルートに渡すことで、被害者を守る有効な証拠として活用できると強く促している[48]

いじめ晒しによるデマ被害問題

栃木県の高校いじめ事件では、ネットリンチの暴走により、関係のない市教委に抗議が殺到し、対応に追われ業務に支障が生じている。丁寧に「違います」と説明しても聞く耳を持たず、1時間以上電話を切らない人もおり対応に困ってるという[49]

パブリックコメント悪用

パブリックコメントは、行政機関が政策などを定める際に一般から意見を募る仕組みであるが、なるべく多くの意見が来るように個人情報の入力欄は任意となっている。そのため匿名で意見が言えることを悪用し、SNSで繰り返し投稿できる方法や文案など拡散させ動員[50]、結果パブコメが、20万件と大量に投稿され意見の約96%が重複。一字一句完全に一致の投稿も多いことが調査で分かった[51]

脚注

関連文献

関連項目

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