ヒルベルトの第14問題
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ヒルベルトが1900年の講演で述べた第14問題は、現代の教科書に見られる形とはやや異なる表現をとる。ヒルベルトは、整数係数有理関数の有限個
- X_1,\dots,X_m
が
- x_1,\dots,x_n
の整数係数有理関数として与えられたとき、それらの有理式のうち代入によって
- x_1,\dots,x_n
の整式になるもの全体が、有限個の関数から整式的に生成されるかを問うた。[1] ヒルベルトはこの性質を「相対的整関数」(relatively integral functions)や「有限整閉体」(finite field of integrality)という語で述べている。[1]
ヒルベルトの原文では、第14問題は「Proof of the Finiteness of Certain Complete Systems of Functions」と題されており、不変式論における有限生成の問題をより一般の設定へ拡張したものとして位置づけられていた。[6]
現代的定式化
正の結果
古典的不変式論では、特殊線型群などの古典群に対する不変式環の有限生成が重要な成果であった。ヒルベルト自身による有限生成定理は、19世紀の古典的不変式論を大きく転換させ、その後の第14問題の背景をなした。[7]
現代的な不変式論では、有限生成
- k
代数
- R
に還元群
- G
が作用するとき、不変部分環
- R^G
は有限生成となることが基本結果である。これは幾何学的不変式論の基礎をなす事実であり、ヒルベルトの第14問題に対する重要な肯定的結果とみなされる。[8][9]
この方向の理論は、正標数においては「幾何学的還元性」によって支えられる。Nagataの定理として、幾何学的還元群の作用に対して不変式環の有限生成性が成り立つことが知られており、その後ハブーシュは還元群が幾何学的還元群であることを証明した。これにより、標数に依存しない形で、還元群の不変式環の有限生成性が確立された。[10][11]
また、標数0では、加法群
- \mathbb{G}_a
の線型作用に対してはヴァイツェンベックの定理により不変式環の有限生成が成り立つ。これに対し、非還元群、特にユニポテント群の作用では有限生成性が一般には成り立たず、永田やその後の反例がそのことを示した。[12][3]
反例
第14問題が一般には成り立たないことを最初に示したのは永田雅宜である。永田は1958年の報告および1959年の論文において、可換ユニポテント群の線型作用に対し、不変式環が有限生成でない例を与えた。[13][2]
その後、反例はより小さい群についても与えられた。向井茂は永田型不変式環を幾何学的に再解釈し、
- \mathbb{G}_a^3
の線型作用に対しても有限生成性が成り立たないことを示した。[3] 向井の論文では、
- 1/2 + 1/r + 1/(n-r) \le 1
のとき Nagata 型不変式環が無限生成となることが述べられている。[3]
バート・トタロはさらに、向井の方法を有限体や有理数体上でも実現できることを示し、任意の体上で、少なくとも
- \mathbb{G}_a^3
の線型表現に対する反例を与えた。[14]
幾何学的再解釈
向井は、永田型不変式環がある種のRees環であり、幾何学的には射影空間の点吹き上げに付随する全座標環、すなわちCox環として理解できることを述べた。[4]
トタロはこの観点をさらに展開し、点吹き上げの全座標環の有限生成性と、楕円ファイブレーションやアーベル曲面ファイブレーションに付随するモーデル・ヴェイユ群の有限性との関係を論じた。[15] この観点から、第14問題は不変式論にとどまらず、双有理幾何や全座標環の有限生成性の問題とも結び付けられている。[4][15]