ファブラボ
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ファブラボ(英:fab lab,fabrication laboratory)は、デジタルファブリケーションを提供する小規模工房である[1][2]。
ファブラボには通常、様々な大きさや多様な材料に対応した柔軟なコンピュータ制御ツールが配備され、「ほぼ何でも」作ることを目指している[3]。これには、一般には大量生産に限られると見なされがちな試作や高度技術製品も含まれる。
ファブラボは、広く流通する製品の製造において大量生産やその規模の経済と競合する段階にはまだ至っていないが、個人が自分のためにスマートデバイスを創り出す力を与える可能性はすでに示している。これらのデバイスは、大量生産では実用的・経済的でない方法で、地域的・個人的なニーズに合わせて調整できる。
ファブラボ運動は、DIY(自作)運動、オープンソースハードウェア、メイカームーブメント、フリーオープンソース運動と密接に連動しており、哲学と技術の両面を共有している。また、その小規模性から都市型製造において重要な役割を果たす。
歴史
ファブラボ・プログラムは、情報がその物理的表現とどのように関係するか、そして十分な支援を受けていない地域社会が草の根レベルで技術によってどのように力を得られるかを広く探究するために開始された[4]。このプログラムはアメリカ国立科学財団からの助成を受け、草の根発明グループと MITメディアラボ内の電子と原子センター(英語版)が協働して2001年に始まった[5]。
インドのヴィギャンアシュラム(英語版)は、MITの外で設置された最初のファブラボである。2002年に設立され、アメリカ国立科学財団とインド工科大学カーンプル校により設備資金が提供された。
草の根発明グループはもはや MITメディアラボ内には存在しないが、電子と原子センターコンソーシアムは、記述や製作に関する分野の研究を引き続き積極的に行っている。ただし、一つを除き世界各地のラボを運営・維持してはいない。ファブラボのコンセプトは、MITの人気講義 MAS.863「ほとんど何でも作る方法」 からも生まれた。この講義は秋学期に現在も開講されている[6]。
主な設備とプロジェクト
主な設備


ファブラボ内の製造設備には、以下のものが含まれる。
- ラピッド・プロトタイパー:通常は合成樹脂や石膏でパーツを造形する3Dプリンター
- シート材の切断機:レーザーカッター、プラズマカッター、ウォータージェットカッター、カッティングプロッター - 紙、ビニール、アクリル、板、フェルトといった面材板材の切断。
- 3次元スキャナー - 3次元の立体形状取得
ファブファイ
ファブラボが手がけた大規模プロジェクトの一つに、地域向けの無料ファブファイ(英語版)無線LAN(アフガニスタン、ケニア、米国)がある。アフガニスタンに構築された初の都市規模のファブファイネットワークは、地域管理の下で特別な保守なしに3年間稼働し続けた。ケニア(ナイロビ大学に拠点)のネットワークはその経験を踏まえ、サービス品質の制御や有料の付加サービスを試行し、赤字の解消を目指した。
ファブアカデミー
ファブアカデミーは、ファブラボ・ネットワークを活用して実践的なデジタルファブリケーション技能を教える[7]。受講生はファブラボの「スーパーノード」に集い、19週間のコースでディプロマを取得しつつ様々な技能を学ぶ。場合によっては、このディプロマが認定されたり、学位単位として扱われることもある[8]。カリキュラムはMITの高速試作講義「MAS.863: ほとんどなんでも作る方法」に基づいている[9]。コース費用は約5,000米ドルと見積もられるが、所在地や奨学金の有無によって変動する。講義資料はすべてオンラインで公開アーカイブされている。
ファブシティ
ファブシティは、未来都市の創出に向けた革新的な方法を探るために設置された[10]。焦点は、素材の調達と利用の在り方の変革にある。この変革は、都市モデルを「生産物を持ち込みゴミを出す」から「データを持ち込みデータを出す」へと転換させることを目指す[11]。これは最終的に、2054年までに都市を自給自足的な存在へ変えることを想定し、バルセロナ市が掲げた目標と連携している[12]。ファブシティはファブラボ運動と結びついており、同じ人的資本を活用する。ファブシティは、ファブラボの利用者の革新精神を生かす取り組みである[13]。
グリーン・ファブラボ
グリーンファブラボネットワークは、カタルーニャのグリーンファブラボに端を発し[14]、起業を通じて環境意識を高めることを推進している[15]。たとえば、分散型リサイクルを推奨し、地域で回収したプラスチック廃棄物を破砕して価値ある品へと変換する。これは3Dプリントを用いるもので、経済的にも環境的にも有望な選択肢である[16][17]。
ファブラボの所在地
2021年6月現在、127カ国に2026のラボが存在する[18]。以下は2010年7月時点でのリストで、国名のアルファベット順。
アフガニスタン
- ジャラーラーバード(タージマハル迎賓館)
コスタリカ
- カルタゴ (コスタリカ)(コスタリカ工科大学)
コロンビア
- メデリン(ファブラボ・メデリン)
ドイツ
- アーヘン(RWTHアーヘン大学)
ガーナ
- セコンディ・タコラディ(タコラディ技術大学)
アイスランド
- ヴェストマン諸島(アイスランドイノベーションセンター)
インド
日本
2011年、日本初のファブラボとして、FabLab Kamakura(神奈川県鎌倉市)とFabLab Tsukuba(茨城県つくば市)がオープンした。現在、全16個所にある[19]。
- 鎌倉(FabLab Kamakura)
- つくば(FabLab Tsukuba)*改装のため現在休業中
- 渋谷(FabLab Shibuya)*神田錦町に移転(ファブラボ神田錦町)
- 太宰府(FabLab Dazaifu)
- 横浜(FabLab Kannai)
- 大阪(FabLab Kitakagaya)
- 仙台(FabLab SENDAI-FLAT)
- 大分(FabLab Oita)
- 佐賀(FabLab Saga)
- 浜松(FabLab Hamamatsu)
- 山口(FabLab Yamaguchi)
- 平塚(FabLab Hiratsuka)※みなとみらいに移転(ファブラボみなとみらい)
- おおた(おおたfab)
- 世田谷(FabLab Setagaya at IID)
- 紫波(FabLab Shiwa|OGAL-LAB)
- 長野(FabLab Nagano)
- 品川(FabLab Shinagawa)
- 栗山(FabLab Kuriyama)
ケニア
オランダ
ノルウェー
- ヌール・トロンデラーグ県(Hoylandet Kommune)
- トロムス県(Solvik Gard)
ロシア
- モスクワ(MHTChファブラボ)
スペイン
南アフリカ
- ブルームフォンテーン(中央工業大学)
- ケープタウン(ケープ技術デザイン大学)
- キンバリー(北ケープ州高等教育大学)
- ポチェフストルーム(ノースウェスト大学)
- ハウテン州(ブライトユース会議)
スイス
- ルツェルン(ファブラボスイス)
イギリス
- マンチェスター(ファブラボマンチェスター)
アメリカ
- カリフォルニア州
- フロリダ州
- サラソータ(ジーウィズ科学博物館)
- イリノイ州
- マサチューセッツ州
- ボストン(サウスエンドテクノロジーセンター)
- ミシガン州
- フリント(モットコミュニティーカレッジ)
- ミネソタ州
- ホワイトベアレイク(センチュリーカレッジ)
- ニューヨーク州
- サウス・ブロンクス地区(サスティナブルサウスブロンクス)
- オハイオ州
- クリーブランド(MS2STEM高校)
- イースト・クリーブランド(MS2STEM高校)
- イリリア(ロレイン郡コミュニティカレッジ)
- 移動ファブラボ(Mobile fab lab)
- ロードアイランド州
- プロビデンス(AS220)
- ウィスコンシン州
- アップルトン(フォックスバレーテクニカルカレッジ)
- メノモニー(ウィスコンシンスタウト大学)