フクロモモンガ

From Wikipedia, the free encyclopedia

フクロモモンガ(Petaurus breviceps)は、哺乳綱双前歯目フクロモモンガ科フクロモモンガ属に分類される哺乳類[6]。種名に「モモンガ」と付くものの、齧歯類のモモンガ(ネズミ目リス科リス亜科モモンガ族)とは別種の生物である。

概要 フクロモモンガ, 保全状況評価 ...
フクロモモンガ
フクロモモンガ Petaurus breviceps
保全状況評価[1]
LEAST CONCERN
(IUCN Red List Ver.3.1 (2001))
Status iucn3.1 LC.svg
Status iucn3.1 LC.svg
分類
ドメイン : 真核生物 Eukaryota
: 動物界 Animalia
: 脊索動物門 Chordata
亜門 : 脊椎動物亜門 Vertebrata
: 哺乳綱 Mammalia
: 双前歯目 Diprotodontia
: フクロモモンガ科 Petauridae
: フクロモモンガ属 Petaurus
: フクロモモンガ P. breviceps
学名
Petaurus breviceps
(Waterhouse, 1838)[2]
シノニム
  • Petaurista Breviceps
    Waterhouse, 1838[3]
  • Petaurus (Belideus) breviceps
    Waterhouse, 1839[4]
和名
フクロモモンガ[5]
英名
Sugar glider[2]
閉じる

分布

2021年の種分割に従えば、オーストラリア東部、グレートディバイディング山脈の沿岸部[2][7]

種分割前の生息地は、インドネシアニューギニア島モルッカ諸島など)、オーストラリア北部および南部(タスマニア島を含む)と東部、パプアニューギニアニューギニア島ビスマルク諸島)とされていた[1]

タイプ標本の産地はニューサウスウェールズ州[8]

名前の由来

学名ラテン語で「頭の小さい綱渡り師」の意[9][10]。樹冠でのアクロバットな動きを表現したもの[10]

和名は「袋状の器官を持つ、モモンガのような動物」の意[11]。「モモンガ」と付くため、齧歯類だと誤解されやすい[12]

英名は樹液や花の蜜といった糖分を多く含む食物を好むことと、空中を滑空する習性に由来する[13]

分類

Groves(2005)によれば、亜種は以下の通りであった[8]

  • Petaurus breviceps breviceps Waterhouse, 1839
  • Petaurus breviceps ariel (Gould, 1842)
  • Petaurus breviceps longicaudatus Longman, 1924
  • Petaurus breviceps papuanus Thomas, 1888

かつては、7つの亜種に分類され、オーストラリアに3亜種、ニューギニアに4亜種が生息しているという説もあった[14][15]。この区分は、体色や体の大きさといった、形態上の差異のみに基づいていた[16]。 しかし、2010年に行われたミトコンドリアDNAを用いた遺伝子解析により、これらの7亜種は無効である可能性が浮上した[14]

2020年には、それまで「フクロモモンガ」とされていたオーストラリアの個体群が以下の3種に分割された[2][7][17]。分類・英名はCremona et al. (2020) による[2]

  • Petaurus breviceps (Waterhouse, 1838) フクロモモンガ Sugar glider(狭義)
  • Petaurus ariel (Gould, 1842) — Savanna glider
  • Petaurus notatus Peters, 1859 — Krefft's glider

2025年にはニューギニアの個体群がPetaurus papuanusとして再分類された[18]。分割後の狭義のフクロモモンガには、亜種は認められていない[7]

形態

全長は24~30cm[19]。体重はオスが140g、メスが115g程度[15][19]。毛は厚くて柔らかく、灰色[20]。頭の中央から背中にかけて濃い縞模様が入り、腹部はクリーム色をしている[15][20]。尾は長く[21]、黒色から灰色を呈する[15]

心拍数は毎分200~300回、呼吸数は毎分16~40回である[22]歯式は、2(I3/2,C1/0,P3/3,M4/4)[23]

両目は離れており、対象物までの距離を正確に把握する際に役立つ[24]

後足の第2指と第3指は一部が癒合している[25]。 前足の第4指は特に細長く、樹皮の下にいる昆虫を捕らえる際に使われる[26]

オスは額、胸、副総排泄腔に4つの臭腺を持つ[26]。 メスも副総排泄や袋に臭腺を持つが、胸部や額には無い[26]

生態

木の枝を渡る

森林や疎林などに生息する[21][17]。夜行性[21][9][20]

樹液を舐める様子

季節ごとに適したものを食べる雑食性で[15]、主に樹冠下層で採餌する[27] 。基本的に地上には降りることはない[9]

餌の大部分は花粉であり、本種はバンクシア属の重要な花粉媒介者である可能性が高い[28]

昆虫の捕食にはエネルギーを使うため、昆虫が縄張りに飛来するか、あるいは花に立ち止まるかまで待つことがある[27]。 樹液を餌とする際には、樹皮を剥いだり、歯で穴を開けたりすることもある[27][29][30]。また、樹液から得られる炭水化物の消化を助けるために、盲腸が発達している[31]

他にも、トカゲ、小鳥、花のアカシアの種子、鳥の卵、菌類果実など、入手可能な範囲で様々なものを餌とする[32]

前足首から後ろ脚にかけて、毛の生えた飛膜が張られており、これを用いて滑空する[21]。滑空の際には、前肢と後肢を体に対して直角に伸ばし、足を上方に曲げる[33]。50m以上滑空することが可能とされている[15]。滑空中は、水平方向に1.82m移動するごとに、1m落下する[33]。メスは子どもを抱えながら滑空することもでき[34]、子どもは袋の中にある隔壁により、着地時の衝撃から保護されている[35]。滑空する時以外は、飛膜は体の側面に縮められている[21]

毛皮を舐めて濡れた部分を露出させたり、水を飲んだりして体を冷やすことにより、最高で40℃の気温に耐えることができる[26]

食料が乏しい時期には、エネルギー消費を抑えるために熱効率が低下し、休眠状態に入る[36][37]。 野生では、飼育下よりもこの状態に入る頻度が高い[38][39]。引き金としては、気温の低下、悪天候、干ばつ、食料源の季節変動が挙げられる[9][40][41]

主な天敵はフクロウワライカワセミオオトカゲヘビフクロネコ野良猫[15][19][26]。特に1歳未満の子どもは狙われやすい[15]

寿命は、野生では最長9年、飼育下では最長12年[22]。報告されている最長寿命は17.8年[42]

繁殖

野生では年に1~2回、飼育下では条件が良ければ年に複数回繁殖する[25]

有袋類の仲間で、メスは腹部の中央に育児嚢という子育てのための袋を持つ[25][43]。通常、乳首は4つだが、2つしかない個体も報告されている[26]。 オスは2対の球状尿道腺と、メスの2つの子宮に対応するように二股に分かれた陰茎を持つ[44][45]

妊娠期間は16日[37]。1回につき、1匹(19%)または2匹(81%)の子どもを出産する[46]。 メスは、視覚のない出産直後の子どもを子宮から引き寄せるために、外胎盤に臭腺を有する[47]。 また、子どもは肩甲帯にある軟骨の弓状突起を用いて、袋の中へと入る[48]。なお、この突起はすぐに消失してしまう[48]

生後約80日で目が開き、生後約110日で離乳する[26]。離乳する頃には、体が大きくなったことや、体毛が厚くなったことに伴い、自力で体温を調節できるようになる[49]

オーストラリア南東部では、出産は6月から11月にのみ行われる[46]

社会性

12頭ほどの群れで生活する[21]。夏よりも冬の方が、群れの規模が大きい[21]。群れの縄張りやメンバーはマーキングで主張され[9]、侵入者は激しく追い出される[13]。時として命に関わるほど攻撃される場合もある[50]。個体間の序列もマーキングによって確立されており、争いは一つの群れの中では発生しないが、別の群れ同士が接触した際には発生する[26]

本種は、メスのみならずオスも子育てに本格的に参加する、数少ない哺乳類の一種である[51]。一方の親が餌を探しに出かけている間には、もう一方の親が子どものそばに寄り添い、子どもの低体温症を防ぐ[51]

鳴き声は、吠え声、金切り声、喉を鳴らす声、シューという声など様々[15][52]

人間との関係

かつては、広域に分布しているために絶滅の恐れは低いと考えられていた[1]。しかし、種の分割によって本種の生息域は狭まることとなった[53]。樹洞を利用するため、激しい火災に対して特に敏感であるとの考えもある[53]

本種は適応力があり、樹洞を持つ木が1ヘクタールあたり3~5本ほど残されている限り、生き残ることができるとされている[54]。現在、生息地の喪失による脅威は受けていないものの、光害の激しい地域では、餌探しや捕食者の回避に悪影響を及ぼす可能性がある[55]

ギャラリー

脚注

関連項目

外部リンク

Related Articles

Wikiwand AI