プラーナ文献
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概要
プラーナは「第5のヴェーダ」とも呼ばれ、その多くの著述を、天の啓示を受けてこれらを伝え、『マハーバーラタ』の著述者でもあるとされる伝説上のリシ(聖仙)ヴィヤーサ (Vyāsa) のものとする[1]。いくつかのプラーナではヴィヤーサよりもずっと後の歴史について語られることもあるが、それらは「予言」として扱われる[2]。
古いバラモン教の文献及び法典のなかで、通常イティハーサ (itihāsa) とともに言及され[3]、前5世紀の語源学者ヤースカも「古伝書の流れをくむ輩」の見解に触れ、後代の注釈家は、これを「プラーナの知者」「プラーナの流れをくむ輩」と注するから、古くヴェーダ解釈者の中に、このような一群の人々の存在が推定される。
6世紀頃の辞典『アマラコーシャ』などにみられる古典的定義によれば、プラーナにはパンチャ・ラクシャナ(pañcalakṣaṇa)つまり以下の五つの主題が備わっているとされる。
- 創造 (sarga)
- 宇宙の創造
- 再創造 (pratisarga)
- 宇宙の周期的な破壊と再生
- 系譜 (vaṃśa)
- 神々と聖仙の系譜
- マヌの劫期 (manvantara)
- 人祖マヌより描かれる人類史
- 王朝史 (vaṃśānucarita)
- 日種族・月種族の家系に至る諸王朝の歴史
ただし、これらはむしろプラーナの原型・古型となった古史古伝の特徴と考えるべきで、現存のプラーナにはこうした要素は一部しか、また少ししか含まないものもある[4]。 現存のプラーナは、叙事詩と同様、主としてシュローカ(śloka)と呼ばれる平易な16音節2行の詩型で書かれ、古典サンスクリットの文法には合わない形も多い。
歴史
歴史的には、当初は、バラモン教時代に伝えられた神々やリシ、太古の諸王に関する神話・伝説・説話だったと考えられている。 これらの古史古伝は、ヴェーダの伝承者とは別に存在したとされるスータ (sūta) と呼ばれる吟遊詩人、弾唱詩人といった職業的語り部集団によって伝承された。 彼らは『ラーマーヤナ』や『マハーバーラタ』などの叙事詩の伝承集団とも近い関係にある一方、ヴェーダの祭式や解釈学、また法の成文化にも関わっていた。
やがて、バラモン教からヒンドゥー教へ変わっていく歴史の流れの中で、寺妓や巡礼地に集まる身分の低い僧職が台頭、彼らはヒンドゥー教のあらゆる要素を取り入れ、挿入、改竄を繰り返し、その素性、年代が極めて多様で、およそ4世紀から14世紀にかけて現在のプラーナを大成、定着させた。プラーナは、ヴェーダの補遺として女性やシュードラの教育を目的としたともいわれ、正統派のバラモンからは「ヴェーダ聖典を直接を学ぶ資格のない女性やシュードラ階級の為の聖典」と評されることもある。 たしかに、叙述の不統一や表現の法外な誇張がみられるが、これはヒンドゥー教の土俗的・民衆的側面を代表する文献としてのプラーナの性格を指したものであり、必ずしもその重要性を否定するものではない。古い伝承が保存されていることから、ヒンドゥー教の哲学・宗教の発達を知る手がかりのみならず、ひろく、宗教学・民俗学に貴重な資料を提示している。
プラーナ文献の一覧
現存するプラーナ文献はいずれも18種類のプラーナの一覧を載せており、細かい出入りはあるが大体において同じである。これらは特に大プラーナ(mahāpurāṇa)と呼ばれることがある[5]。下の一覧はその一例である[6]。
- ブラフマ・プラーナ
- パドマ・プラーナ
- ヴィシュヌ・プラーナ
- ヴァーユ・プラーナ
- バーガヴァタ・プラーナ
- ブリハンナーラディーヤ・プラーナ
- マールカンデーヤ・プラーナ
- アグニ・プラーナ
- バヴィシュヤ・プラーナ
- ブラフマヴァイヴァルタ・プラーナ
- リンガ・プラーナ
- ヴァラーハ・プラーナ
- スカンダ・プラーナ
- ヴァーマナ・プラーナ
- クールマ・プラーナ
- マツヤ・プラーナ
- ガルダ・プラーナ
- ブラフマーンダ・プラーナ
他のプラーナ文献に載せる一覧には『ヴァーユ・プラーナ』または『アグニ・プラーナ』がなく、かわりに『シヴァ・プラーナ』を含むものがある[7]。ヴィンターニッツによれば、ここでいう『シヴァ・プラーナ』とは『ヴァーユ・プラーナ』の別名であって、現行の『シヴァ・プラーナ』とは別物である[8]。また『バーガヴァタ・プラーナ』は現在のインドでもっともよく知られたプラーナだが、ここでいう『バーガヴァタ・プラーナ』をそれとは別の『デーヴィー・バーガヴァタ・プラーナ』のこととする説もある[9]。
いくつかのプラーナ文献は他に副プラーナ(upapurāṇa)と呼ばれる別の18書をあげることもあるが、何を副プラーナとするかは文献によって一致しない。これらは時代の新しい文献で、とくに聖地の由来などを記した大量の「マーハートミヤ」と呼ばれる文献、「ストートラ」と呼ばれる賛歌、「カルパ」と呼ばれる祭儀に関する文献、「アーキヤーナ」と呼ばれる伝説集がプラーナとして扱われることがある[10]。
『ハリヴァンシャ』は伝統的には『マハーバーラタ』の続編と見なされるために上記の18プラーナには含まれていないが、実際にはプラーナ文献の一種である[11]。

