プロクロロン

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プロクロロン属

1. プロクロロンが共生している
チャツボボヤ (Didemnum molle)
分類
ドメイン : 細菌 (ICNP)Bacteria
: バシラス界 (ICNP)Bacillati
: 藍色細菌門 (ICNP)Cyanobacteriota
: 藍藻綱 (ICN)Cyanophyceae
: クロオコックス目 (ICN)Chroococcales
: ミクロキスティス科 (ICN)Microcystaceae
: プロクロロン属 (ICN)Prochloron
学名
(ICN)Prochloron
Lewin ex Hoffmann and Greuter 1993
= Synechocystis didemni Lewin, 1975

プロクロロン (Prochloron) は単細胞性の藍藻の1属であり、2019年現在、ただ1種 Prochloron didemni のみが知られている。熱帯から亜熱帯域の群体性ホヤウスボヤ科)に共生しており(図1)、宿主外からは見つかっていない。藍藻としては例外的にクロロフィル b をもつため、発見当初は藍藻とは異なるグループであると考えられ、原核緑色植物門に分類されていた。また原核緑色植物は、細胞内共生によって緑色植物の葉緑体になったとも考えられていた。しかし現在では、これらの仮説は支持されていない。

プロクロロンは単細胞球形、直径7–25マイクロメートル (μm)、緑色をしている[1]チラコイドは重なってラメラを形成し、細胞中で同心円状またはやや不規則に配置している[2]。チラコイドの一部が膨潤して液胞状になることがある[2][3]。液胞状構造の分布様式や特異な顆粒の有無には以下のようなタイプがあり、宿主内での共生部位と対応していることが報告されている[4]

  • グループI:細胞中に多数の小さな液胞状構造が存在する(ホヤの表面または被嚢中に見られる)
  • グループII:細胞中央に1個の大きな液胞状構造が存在する(総排出腔に見られる)
  • グループIII:特異な顆粒を多数含む(チャツボボヤの総排出腔のみ)

二分裂によって増殖する[1]

クロロフィル a に加えてクロロフィル b をもつ[5]。プロクロロンにおけるクロロフィル b 結合タンパク質は Pcb であり、緑色植物がもつ LHC とは異なる[6][7]。またクロロフィル c 類似色素であるジビニルプロトクロロフィリド (Mg-3,8-divinyl pheoporphyrin a5 monomethyl ester; MgDVP) をもつ[8]フィコビリンをもたず、チラコイド表面にはフィコビリソームが存在しない[2]カロテノイドとして、ゼアキサンチンβ-カロテンが存在する[5]

生態

2. プロクロロンが共生しているミドリネンエキボヤ (Diplosoma simile)
3. プロクロロンが共生しているネンエキボヤ属の1種 Diplosoma virens(緑色のホヤであり、青色は別のホヤ Rhopalaea crassa

プロクロロンは、世界中の熱帯から亜熱帯の海域に生育するウスボヤ科の4属(ウスボヤ属 Didemnum、ミスジウスボヤ属 Trididemnum、シトネボヤ属 Lissoclinum、ネンエキボヤ属 Diplosoma)、約30種以上に共生している[6][9](図1, 2, 3)。これらの種は、基本的に必ずプロクロロンを共生させている。一方で、ウスボヤ科の中には、プロクロロンが共生していない種も多く存在する。一般的に、プロクロロンとの共生はウスボヤ科の中で複数回独立に起こったと考えられている[6][10]

プロクロロンは、他のホヤ[11]ナマコ[12]海綿[13]からも報告されているが、これらの共生関係は安定しておらず、ふつう偶発的なものであると考えられている。

多くの場合、プロクロロンは群体ボヤの表面、総排泄腔、皮嚢に細胞外共生しているが[6][14]、シトネボヤ属の一種 (Lissoclinum punctatum) ではプロクロロンのおよそ半数は被嚢の間葉系細胞中に細胞内共生している[15]。ウスボヤ類はを群体内に保持し、幼生が放出される。幼生は、親群体から受け継いだプロクロロンを保持している(垂直感染)[6]。プロクロロンが宿主であるホヤに捕食されることはない[16]。プロクロロンから宿主へ光合成産物の供給や、有毒物質分泌による被食防御が考えられているが、その生理生態的相互関係についてはよくわかっていない[6]。ゲノム情報からは、プロクロロンは窒素固定能を欠くと考えられている[6]。プロクロロンが共生したホヤ類からはさまざまな生理活性物質が見つかっており、その薬理作用などが注目されている[17]

一方、プロクロロンは常にこれら動物の共生者としてのみ報告されており、自由生活性のものは見つかっていない[6]。プロクロロンは宿主体外では生育できないと考えられているが、宿主であるホヤ体内での代謝や物質交換などに関してはよくわかっていない。

またこれらのホヤは、共生藻としてプロクロロンのみをもつ場合もあるが[16]、他の藍藻が共存している例もある(被嚢中のみ)[18]。このようなプロクロロン以外の共生藍藻の中にも、ウスボヤ科のホヤと特異的な共生関係を結んでいるものがいる。Synechocystis trididemni はウスボヤ類の共生藻として報告された種であり[19]、ミスジウスボヤ属の一種 (Trididemnum nubilum) はこの藍藻(または類似種)のみを共生藻としている[6]

系統と分類

出典

外部リンク

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