マイケル・バーリ
アメリカ合衆国の投資家
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マイケル・ジェームズ・バーリ(英語: Michael James Burry、1971年6月19日 - )[2]は、アメリカ合衆国の投資家、ヘッジファンドマネージャー、医師。ヘッジファンドのサイオン・キャピタル(Scion Capital)を設立し、後にサイオン・アセット・マネジメントを運営した。2025年11月、バーリはサイオン・アセット・マネジメントを閉鎖すると発表し、同月23日にサブスタックでニュースレター『カサンドラ・アンチェインド(Cassandra Unchained)』を開始した[3]。
2008年の世界金融危機の一因となったサブプライム住宅ローン危機をいち早く予見し、利益を上げた投資家として最もよく知られている。その活躍は2015年の映画『マネー・ショート 華麗なる大逆転』(原題: The Big Short)で描かれた。
生い立ちと教育
バーリはカリフォルニア州サンノゼで生まれ育った。2歳の時に網膜芽細胞腫により左眼を失い[4]それ以来義眼を使用している[5]。10代の頃は地元のサンタテレサ高校に通った[6][7]。
カリフォルニア大学ロサンゼルス校(UCLA)で経済学と医学部進学課程(プレメディカル)を学び、1997年にヴァンダービルト大学医学部で医学博士(MD)の学位を取得した[8]。卒業後、スタンフォード大学医療センターで神経内科の研修医(レジデント)として勤務したが、研修を途中で終えている[9][10]。勤務の合間に、趣味であった株式投資に没頭した。
現在は医師として活動していないが、継続教育の要件を満たすなど、カリフォルニア州医学委員会(MBC)の医師免許は有効な状態を維持している[11]。
投資キャリア
医学部卒業後、スタンフォード大学病院の神経内科および病理科のレジデントとして働いたが、いずれの研修も完了しなかった。
その後、自身のヘッジファンドを立ち上げるために退職した。既にバリュー投資での成功により投資家としての評判を築いており、1996年から株式掲示板サイト「シリコン・インベスター」で投資に関する発信を行っていた。銘柄選択の的中率は非常に高く、バンガード・グループやホワイト・マウンテンズ・インシュアランス・グループといった企業、さらにはジョエル・グリーンブラットのような著名な投資家の関心を引いた。バーリのバリュー投資に対する理解は厳格かつ伝統的であり、自身の投資スタイルはベンジャミン・グレアムとデイヴィッド・ドッドによる1934年の著作『証券分析』に基づいていると繰り返し述べている。「私の銘柄選択は100%、安全域の概念に基づいている」という[12]。
2000年2月21日には『サンフランシスコ・クロニクル』紙でアマゾンの空売り(ショート・ポジション)を公表したと報じられた。彼は2025年にAIバブルへの懸念を綴るニュースレターを発表した際、この過去の成功を引き合いに出している[13]。アマゾンの株価はその後1年間で、インターネット・バブルの崩壊により約80%下落した。2000年11月に自身のウェブサイトを閉鎖した後、遺産と家族からの借金を元手にヘッジファンド「サイオン・キャピタル」を設立した。社名は彼のお気に入りの小説の一つであるテリー・ブルックスの『シャナラの末裔』から名付けられた。彼はすぐに投資家たちに並外れた利益をもたらした[14]。
2008年金融危機の予測
2005年、バーリはサブプライムローン市場に注目し始めた。2003年から2004年にかけての住宅ローン貸付慣行の分析を通じて、不動産バブルが早ければ2007年にも崩壊することを正確に予測した。住宅価格に関する研究から、サブプライムローン(特に当初の低金利期間満了後に金利が跳ね上がるタイプ)やそれらを組み込んだ債券は、金利が更新される2年後には価値を失い始めると確信した。彼はこの結論に基づき、ゴールドマン・サックスなどの投資銀行を説得して、自身が脆弱だと判断したサブプライム関連取引に対するクレジット・デフォルト・スワップ(CDS)を売り込ませることで、市場へのショート(空売り)を仕掛けた[15][16][17]。
CDSのプレミアムを支払い続ける過程で、一部の投資家から予測が間違っているとの反発を受け、資本の引き揚げを要求される事態にも陥った。しかし、最終的にバーリの分析は正しいことが証明された。彼は個人的に1億ドルの利益を上げ、残った投資家たちには7億ドル以上の利益をもたらした。
2008年、投資家との軋轢とその後の金銭的勝利を経て、バーリはサイオン・キャピタルを閉鎖した[18]。
2010年4月3日付の『ニューヨーク・タイムズ』への寄稿で、バーリは2003年から2005年にかけて金融市場を注意深く研究した者であれば誰でも、サブプライム市場のリスク増大を認識できたはずだと主張した[19]。彼は、側近以外の外部からの警告に耳を貸さなかった連邦規制当局を批判した。
金融危機以降の活動
2013年、バーリはサイオン・アセット・マネジメントの名でヘッジファンドを再開した。同ファンドは、水、農地、金などへの個人投資を主目的としている[20]。
2021年、Redditで「ミーム株」として注目され、GameStopのショートスクイズが起こる前から同社に出資していたことが話題となった。[21]。しかし、彼は株価が劇的に上昇する前に全株を売却していた[22]。2026年1月現在、バーリは再びゲームストップ株を購入していると述べたが、かつてのようなミーム株ブームの再来に賭けているわけではないとしている[23]。
2021年当時、ミーム株、電気自動車(EV)、SaaS企業、そしてビットコインを取り巻く熱狂に懸念を表明し、インターネット・バブルになぞらえて警告した[24]。その後ミーム株や暗号資産市場は暴落し、彼は一貫して暗号資産への批判を続けている。 2026年2月には、ビットコインの弱気相場(ベア)と2021年から2022年にかけての暴落を比較したチャートを公開し、さらなる大幅な調整の可能性を示唆した。[25]。
2025年、バーリが提出したフォーム13F[26]により、プット・オプションを用いたエヌビディアやパランティアへのショート・ポジションが明らかになった。これは市場の一般的なコンセンサスに逆らうものであり、再び市場に反対する立場をとったことでオンライン上で大きな注目を集めた。バーリはまた、Xで「AIバブル」という考えを仄めかす投稿を行った[27]。その後の書類提出により、バーリはサイオン・アセット・マネジメントの米国証券取引委員会(SEC)登録を抹消し、事実上ファンドを閉鎖した[28]。
2025年末、バーリは自身のヘッジファンドの登録を解除した。11月下旬のXの投稿で「11月25日からはもっと素晴らしいことへ(On to much better things Nov 25th)」と述べ、SECのデータベースでもサイオンの登録ステータスは終了と表示された[29]。2025年11月24日、彼は年額379ドルのニュースレター『カサンドラ・アンチェインド』を発表した。これは、エヌビディアやパランティアへのショート・ポジションに関連して、AIバブルに対する自身の懸念を詳述するものである。
2026年3月、バーリは億万長者のビル・アックマンによるファニーメイとフレディマックへの強気な見通しに賛同した[30]。また、アメリカの住宅市場の停滞についてもXに投稿し、住宅不足という通説に異を唱え、問題は供給ではなく配分の誤り(ミスマッチ)であると主張した。彼は連邦政府の政策を批判し、ファニーメイとフレディマックの改革を求めた[31][32]。
2026年4月、バーリはフィデリティ・インベストメンツの元ファンドマネージャー、ジョージ・ノーブルの投稿を共有した。ノーブルは、イーロン・マスクのスペースXをNASDAQに上場させる提案を「主要株価指数に対するこれほど恥知らずな構造的操作は見たことがない」と非難した。バーリはこの批判を100万人以上のフォロワーに「必読」として共有し、上場後数週間以内に個人の401(k)(確定拠出年金)に組み込まれる可能性があると警鐘を鳴らした[33]。
私生活
登場作品
映画
- 2015年公開の映画『マネー・ショート 華麗なる大逆転』では、クリスチャン・ベールがバーリを演じた[36]。
文学
- 2010年:マイケル・ルイス『世紀の空売り 世界経済の破綻に賭けた男たち』
- 2009年:グレゴリー・ザッカーマン『 The Greatest Trade Ever 』