マードックからの最後の手紙
樽屋雅徳作曲の吹奏楽曲
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マードックからの最後の手紙(マードックからのさいごのてがみ)とは、樽屋雅徳作曲の吹奏楽曲である。[1]
この曲は、タイタニック号に乗船していた一等航海士のウィリアム・マクマスター・マードックとタイタニック号沈没事故をモチーフにした曲である[2]。
この楽曲は、2009年に出版された「通常版」、2011年に花咲徳栄高等学校の委嘱により改訂された「特別版」、2015年に通常版の編成を縮小した「小編成版」、2021年の全日本吹奏楽コンクールで玉名女子高等学校吹奏楽部によって初演された「2021年版」がある。[2]
各版の説明
通常版(2009年出版)
演奏時間8分15秒。2009年5月に出版された原典版。土気シビックウインドオーケストラの委嘱で作曲された。初演は、土気シビックウインドオーケストラVol.13「メキシコの祭り/ヴィジョンズ・オブ・ライト」で収録されたものが初演となる。[2]
特別版(2011年出版)
演奏時間9分22秒。2010年、花咲徳栄高等学校吹奏楽部の委嘱により改訂。全日本吹奏楽コンクール自由曲にて演奏された。当初、出版の予定はなかったものの、コンクールの演奏を聞いた人からの反響が大きく、2011年2月に出版された。通常版との大きな違いは、ハープのパートが追加され、中間の速い部分が加筆修正された。[2]
小編成版(2015年出版)
演奏時間は通常版と同じ8分15秒。2009年の通常版から、小編成用に作曲者が自ら編み直した。通常版と小編成版の構成の違いはなく、編成のみがコンパクトになっている。[2]
2021年版(2022年出版)
演奏時間8分0秒。玉名女子高等学校吹奏楽部の委嘱により加筆された改訂版。2021年の全日本吹奏楽コンクールにて初演された。エンディングが2パターンあり、通常版と同じパターンと新しく作曲された[Ending B]パターンに差し替えての演奏が可能。[Ending B]パターンは、2022年2月の精華女子高等学校吹奏楽部第38回定期演奏会にて初演された。[2]
曲の構成
以下は基本的に通常版のものであり、特に2021年版は変更点が大きい。
- Adagio ♩=50
バスクラリネットなどの木管楽器の低音による空虚五度、そのなかへしっとりと流れ込むクラリネットの穏やかな歌い出しによって、曲は幕を開ける。
トライアングルの一打を経て、旋律はフルートやオーボエをはじめとする高音楽器を加えてより厚みを増していき、バリトンサックスらの副旋律とともに海への賛歌を歌い上げる。
リタルダンドを挟んだあと、テンポをほんの少し上げ(♩=60)、トランペットをはじめとする高音域の金管楽器やサックス、ホルンらの中音域のフレーズが、これから始まるであろう航海に向けて大きな期待を寄せていく。
- Piu mosso ♩.=112 8分の6拍子
北大西洋を渡り、ニューヨークを目指して航海を続けるタイタニック号の船上での出来事を、一枚一枚の「手紙」のように綴っていく。
タンバリンによって提示されるリズムとともに曲調はがらりと変化し、装飾音符を効かせた木管楽器とバウロンによって、軽快な北欧系の民族舞踊風のメロディが奏でられていく。ホルンらによる力強い副旋律も流れ込んでさらなる盛り上がりを見せると、ピッコロなどの木管楽器が橋渡しを行いながら次第に静かな雰囲気へと切り替わっていく。
♩=72の穏やかなテンポの上で、ファゴットとバスクラリネットのユニゾン、オーボエやクラリネットをはじめとする木管楽器群がワルツ調のフレーズを歌い継ぎ、豪華客船の優雅な航海の様子を描きながら緩やかに終息を見せていく。
- Adagio ♩=60
静まった雰囲気のなか、ホルンとアルトサックスのフレーズが柔らかく響き渡り、その余韻をたどるようにクラリネットが暖かみのある中音域で旋律を紡ぐ。 やがて旋律はピアノの伴奏を伴ったフルートのソロに移り、家族への気遣いや航海の安全を祈るマードックの優しさが垣間見えるような美しい調べを響かせる。
突然、出航のシップスベルが打ち鳴らされ、順調な航海に思いを馳せる。しかし、不穏と危難の兆候が終息の和音のなかから顔を覗かせる。
- Allegro ♩=144 4分の4拍子
金管楽器の不協和音とトランペットの激しいメロディにより、突然のアクシデントの発生と混迷する船内の様子を描く。静寂を打ち破ったパニックは瞬く間に曲全体を支配し、タムタムのリズムとシンバルの強打に乗ってアップテンポのメロディが大混乱の様相を呈しながら襲いかかる。
- Poco meno mosso ♩=136
やがて、体制を整えたマードックをはじめとする乗組員は乗客たちの避難誘導を開始し、刻々と迫る沈没へのタイムリミットに駆られる様子が、確固としたスネアドラムとクラリネットの16分音符のリズムによって表される。 その流れがタムタムによる激しいリズムの提示を残していったん途切れると、ホルンの力強いフレーズが代わって現れ、徐々に船尾を持ち上げながら沈み始めるタイタニック号の姿を示す。アッチェレランドによって、目まぐるしい音楽の緊張感はピークに達し、最後に残された低音楽器とフルートがタイタニック号の沈没によるすべての終焉を暗示する。
- ♩=60 4分の4拍子
ピアノのソロによる海の泡の描写、深く暗く沈み込んだムードのなかから、フルート、クラリネット、ホルンによる静かなフレーズが現れ、タイタニック号の悲劇に立ち会った人々の万感の想いを優しくかつ力強く込めて歌いだす。その時々にオーボエやトランペット、アルトサックスなどのさまざまな楽器のソロを織り交ぜながら歌われるメロディは、去りし人々に対する哀悼、そしてそれを受け入れて前を向こうとする各々の想いの強さを秘めながら盛り上がりを増していく。 クレッシェンドを経て、クライマックスが描かれる。冒頭の主題の再現、高らかに響き渡るファンファーレ、力強く奏でられるメロディがマードックたちの「最後のメッセージ」を綴っていき、満ちあふれる想いを輝かしく放ちながらエンディングへとそのまま突入する。
編成
通常版
特別版
ハープが追加されている以外、通常版と同じ。
小編成版
2021年版
| 木管 | 金管 | 弦・打 | |||
|---|---|---|---|---|---|
| Fl. | 2(1st div.), Picc. | Tp. | 3(1st div.), Flh.1(Trp.3rd) | Cb. | 1 |
| Ob. | 2(2nd optional) | Hr. | 4 | Timp. | 1 |
| Fg. | 1(div.) | Tbn. | 3(3rd div.) | 他 | トライアングル、クラッシュシンバル、サスペンデッドシンバル、グロッケンシュピール、ビブラフォン、シロフォン、マリンバ、バスドラム、ボウラン、タンバリン、タムタム、スネアドラム、ラチェット、ウィンドチャイム、フィンガーシンバル(option)、シップスベル |
| Cl. | 3, E♭, Bass | Eup. | 1(div.) | ||
| Sax. | Sop. 1 Alt. 2 Ten. 1 Bar. 1(div.) | Tub. | 1(div.) | ||
| その他 | ピアノ、ハープ | ||||