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リアルタイムPCR

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リアルタイムPCR(real-time PCR、qPCR)は、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)による増幅産物を反応中に測定する手法である。PCR産物の蓄積を蛍光シグナルとして検出することで、標的となるDNAまたは逆転写後のcDNAを定量的に解析できる[1]。定量を目的とするリアルタイムPCRは、定量PCR(quantitative PCR)とも呼ばれ、MIQEガイドラインでは略称としてqPCRを用いることが推奨されている[2]

リアルタイムPCR装置による解析例

リアルタイムPCRでは、蛍光色素や蛍光標識プローブを用いて増幅産物を検出する。代表的な検出法には、二本鎖DNAに結合する蛍光色素を用いるインターカレーター法と、標的配列に特異的に結合する蛍光標識プローブを用いるプローブ法がある。インターカレーター法ではSYBR Green Iなどが用いられ、プローブ法ではTaqManプローブ法が広く用いられている[3][4]

従来型PCRとの違い(定性と定量の違い)

1992〜1993年にかけて、ラッセル・ヒグチ(Russell Higuchi)らによって「リアルタイムPCR法(qPCR)」が開発された。これは、1980年代にキャリー・マリス(Kary Mullis)が発明した従来型PCRは、反応がすべて終わった後にDNAの有無を確認する「定性分析」である。一方、ヒグチ博士のリアルタイムPCRは、反応の途中経過を蛍光でリアルタイムに追跡し、元のDNAの量を正確に測る「定量分析」である。このように、両者は開発者も用途も区別され異なるアプローチ技術である。

SYBR Green法

SYBR Green法は、二本鎖DNAに結合する蛍光色素を利用してPCR産物を検出する方法である。配列特異的なプローブを必要としないため、一般にプローブ法と比べて低コストで実施できる[5]

一方で、SYBR Greenは目的産物以外の二本鎖DNAにも結合するため、プライマーダイマーなどの非特異的増幅産物も検出される場合がある[6]。このため、増幅産物の特異性確認を目的として融解曲線解析が行われることがある[7]

融解曲線解析

融解曲線解析(melting curve analysis)は、リアルタイムPCR終了後に反応液の温度を徐々に上昇させ、二本鎖DNAの解離に伴う蛍光シグナルの変化を測定する解析法である[7]

SYBR Green I法では、色素が二本鎖DNAに結合した状態で強い蛍光を示すため、温度上昇に伴ってDNAが解離すると蛍光強度が低下する。この変化を解析することで、PCR産物の特異性確認に利用される[8]

一般に、単一のPCR産物のみが増幅されている場合には単一の融解ピークが観察される。一方で、非特異的増幅産物やプライマーダイマーが存在する場合には、複数の融解ピークが認められることがある[9]

ただし、PCR産物の塩基組成やGC含量分布によっては、単一産物であっても複雑な融解挙動を示す場合がある[10]

TaqManプローブ法

TaqManプローブ法は、標的配列に特異的に結合する蛍光標識プローブを利用したリアルタイムPCR法である[11]。プローブの5'末端にはレポーター蛍光色素、3'末端にはクエンチャーが標識されており、両者が近接している状態では蛍光共鳴エネルギー移動(FRET)によりレポーターの蛍光が抑制される[12]

PCR反応中にTaq DNAポリメラーゼの5'→3'エキソヌクレアーゼ活性によってプローブが分解されると、レポーターとクエンチャーが分離し、レポーター由来の蛍光シグナルが検出される。この蛍光強度の変化を測定することで、PCR産物量を定量的に解析できる[13]

TaqManプローブ法では配列特異的なプローブを用いるため、SYBR Green法と比較して非特異的増幅産物の影響を受けにくいとされる[14]。また、異なる蛍光色素を用いることでマルチプレックス解析にも利用される。一方で、標的配列ごとに専用プローブの設計・合成が必要となるため、一般にSYBR Green法よりコストが高い[15]

定量RT-PCR

リアルタイムPCRは、逆転写ポリメラーゼ連鎖反応(reverse transcription PCR; RT-PCR)と組み合わせることで、mRNAなどRNAの定量解析にも利用される。この手法は一般に定量RT-PCR(quantitative reverse transcription PCR)またはRT-qPCRと呼ばれる[16]。これにより、細胞や組織における遺伝子発現量の解析が行われる[17]

RT-qPCRは、逆転写反応とPCR増幅を単一チューブ内で連続して行うOne-step RT-qPCR法と、あらかじめ合成したcDNAを用いてPCRを行うTwo-step RT-qPCR法に大別される[18]

One-step法は操作工程が少なく、試料間移動に伴うコンタミネーションリスクを低減できる利点がある。一方で、Two-step法は作成したcDNAを複数のPCR反応に利用できるため、複数遺伝子の解析などに用いられる[9]

ここでいう「リアルタイム」は、PCR増幅産物を反応進行中に連続的に測定することを指す。一方、「逆転写」(reverse transcription)は、RNAを鋳型として相補的DNA(cDNA)を合成する過程を指す[19]

定量方法

リアルタイムPCRにおける定量法は、既知濃度の標準試料を用いてコピー数を算出する絶対定量法と、基準遺伝子との比較によって発現量を評価する相対定量法に大別される[20]

絶対定量法では、既知濃度のDNA標準試料を段階希釈して作成した検量線を利用し、未知試料のCt値からコピー数を算出する[21]。この方法は、ウイルス量や細菌量の測定などに利用される。

一方、相対定量法は、目的遺伝子と基準遺伝子(リファレンス遺伝子)の発現量を比較することで、サンプル間の相対的な発現変化を解析する方法である[22]。一般に、目的遺伝子と基準遺伝子のPCR増幅効率が近いこと、および基準遺伝子の発現が解析対象間で安定していることが前提条件とされる[23]

PCR増幅効率は、検量線の傾き(slope)から算出されることがあり、一般にの式が用いられる[23]

医療での応用

リアルタイムPCRは、病原体の検出や核酸定量を目的として、臨床検査や医学研究に広く利用されている[24]

B型肝炎ウイルス、C型肝炎ウイルス、ヒト免疫不全ウイルス(HIV)などでは、ウイルス量測定にリアルタイムPCRが利用されている[25]

また、結核菌群、SARSコロナウイルス2(SARS-CoV-2)、RSウイルス、ヒトメタニューモウイルスなどを対象とした核酸増幅検査にも利用されている[26]

リアルタイムPCR機器の応用

リアルタイムPCR装置は、DNAおよびRNAの定量解析に加え、High Resolution Melting(HRM)解析を利用した変異解析やSNP解析にも利用されている[27][28]

また、リアルタイムPCR技術は遺伝子発現解析、病原体検出、遺伝子多型解析など幅広い分野で利用されている[29]

脚注

関連文献

外部リンク

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