リエナール・ヴィーヘルト・ポテンシャルは運動する点電荷が作る電磁ポテンシャルである。電磁場の源(source)となる運動体の、時刻
における位置を
するとき、その観測位置
について、伝播速度すなわち光速 c に基づく遅滞時刻
が定義され、この時刻の電荷位置
からポテンシャルが与えられる。
運動体の運ぶ電荷を
、速度を
とすると、スカラー・ポテンシャル
とベクトル・ポテンシャル
は次のように表される。


ここで、
- 速度因子
は、光速に対する比率で規格化した速度ベクトル、
は、電場源からの方向を示す単位ベクトル、
は 、括弧の中が、遅滞時刻における量であることを示す。ただし観測位置
は時刻によらず一定とする。
遅滞時刻の定義は以下である。

右辺にも tr が含まれる陰的な式であり、もっぱら反復解法で計算される。
電磁ポテンシャルからは、対応する電場と磁場が導かれる。


上式により、リエナール・ヴィーヘルト・ポテンシャルに対しては、次の共変でない電磁場の表式が得られる。


ここで
はローレンツ因子である。
上式中の観測位置
は時間によらないが、
は遅延時刻の量である。それにもかかわらず電界 E は観測時刻の運動体位置を通る方向となる。
また、もし電荷が一定の速度
で運動する場合、速度因子の時間微分
はゼロになるので、電場は
の項だけが残る。このとき電場の向きは
によって決まる。
電場の初項は、特に速度因子がゼロ
としたときに残る部分は、電荷
の点電荷の周りの静電場に一致し、電荷のもたらす電磁場の静的な成分とみなされる。
第二項は運動する電荷が放射する電磁波に対応する。位置
で電場
を観測するとき、
電荷と観測点を結ぶ方向に直交するように電荷が加速されると第二項の輻射項が観測される。
この輻射項の電磁場の向きは遅延時刻における電荷の位置を向いている。