ルナクリート

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圧縮強度英語版3975.7 N/mm2 (MPa)
ヤング率21.4 kN/mm2
密度2.6 g/cm3
温度係数英語版5.4 × 10−6 K−1
研究発表されたルナクリートの物性の一例[1][2]
圧縮強度英語版 3975.7 N/mm2 (MPa)
ヤング率 21.4 kN/mm2
密度 2.6 g/cm3
温度係数英語版 5.4 × 10−6 K−1

ルナクリート(Lunarcrete)またはムーンクリート(mooncrete)または月クリート (つきクリート) は、1985年にピッツバーグ大学のラリー・A・ベイヤーによって提案された材料の概念。月面で入手しやすい原料から作られた、コンクリートと同程度の強度の素材のこと。月面での建設コストを削減する目的で研究されている[3]。さらには地球上ではありえないような気温、放射線量を想定する必要があり、また、月面で硬化させやすい工程も合わせて考える必要がある。火星など他の天体にも使えるアストロクリート (Astrocrete) という語も提案されている。

月面の土壌

地球上のコンクリートと類似の方法で作る。つまり、骨材(砂利)と水とセメントを混ぜて、化学硬化させる。ルナクリートの場合、骨材には月面のレゴリスを使う前提のものがほとんどである。ただし、真空の月面では、地球上と全く同じ方法では、硬化する前に水が昇華して失われてしまう。そのため、骨材とセメントだけを事前に混ぜておき、後で蒸気を注入する方法や、水が昇華しないよう型枠の中で硬化させる方法(プレキャストコンクリート)などが提案されている。[2][4]

地球での研究に月面で採れたレゴリスを使うのは難しいため、色々な代替物質が考えられている。1988年、ノースダコタ大学の研究者たちは、褐炭フライアッシュを模擬材料とすることを提案した[3]。その後、本格的な月面レゴリス模擬物英語版も開発された。例えば1994年にアメリカ航空宇宙局などが開発したJSC-1英語版セントラルフロリダ大学の非営利研究所Exolith Labによって開発・製造されたLHS-1がある。[5][6]実際のレゴリスを用いた小規模な試験も行われている[2]。1993年にConstruction Technology LaboratoriesのLinらは、1986年にアポロ16号によって採取された月面のレゴリスサンプル40gを使用してルナクリートを製造した[7]。具体的には、骨材とセメントの混合物を蒸気で硬化させた。このルナクリートは75 MPaの圧縮圧力に耐え、真空に繰り返し曝露した後も元の強度の20%しか失われなかった[8]

ルナクリートは、地球上のコンクリートと同様に、それだけでは引張強度が不足する。地球上では普通鉄筋コンクリートとするが、月面では鉄筋を作るのも、地球から運ぶのも難しい。そのため、繊維状物を混ぜたいわゆるプレストレストコンクリートにする研究が主流である。この繊維状物としては、ケブラー繊維を地球から持ち込む方法などが提案されている[2]

硫黄コンクリート

硫黄コンクリートは、耐酸性のコンクリートとして昔から知られている建設材料である。要するに、骨材(砂)を融かした硫黄と混ぜ、冷却したものである。化学反応がほとんどないため、厳密に言うとコンクリートではない。硫黄は化学反応しにくい基材とも結合し、水は不要である。

水が月面で貴重な資源であると仮定した場合、硫黄コンクリートはセメントのコンクリートより実用的である。また、硫黄を一旦融かしてから冷やすだけなので、セメントのコンクリートのような長期の硬化時間が不要である。この特性は、時間が貴重な月面作業では重要である[9]。硫黄は月面に鉱物トロイライト(FeS)として存在しており[10]、これを還元して硫黄を得ることができる可能性がある。セメントを使ったコンクリートは硬化に時間がかかるが、硫黄コンクリートは代わりに硫黄の融点である140°C以上に加熱してから冷却すれば、即座に高強度を達成する。セメントのコンクリートとは異なり加熱の必要があるが、セメント成分を月の鉱物から抽出することを考えればそれよりは低温と考えることもできる。65%のJSC-1月面レゴリス模擬物と、35%の硫黄を使うことで、平均圧縮強度 33.8 MPa、引張強度 3.7 MPaの材料が得られる。さらに2%の金属繊維を追加すると、圧縮強度は43.0 MPaに増加する[11]。シリカを追加することでも増加する[12]二酸化ケイ素を混ぜることで20MPaまで向上するとの研究もある[13]

硫黄コンクリートは、例えば月面からロケットを発射するための発射台に使った場合、セメントのコンクリートよりも粉塵が発生しにくいことが期待できる[10]

硫黄コンクリートの欠点として、セメントのコンクリートよりも宇宙放射線を通しやすいため、放射線防御機能が必要な用途では壁を厚くする必要がある。また、月面は高緯度地域では気温が硫黄の融点より高い123°Cに達することもある。気温が融点以下だったとしても、硫黄は密度が異なる複数の結晶形を持つため、これが硫黄コンクリートの部分的なひずみの原因となる可能性があると言われている[10][12]

血液コンクリート

アストロクリートの概念図

血液コンクリートは、骨材(砂)の結合材に、血液から採取したヒト血清アルブミン英語版を使った材料である。この材料は一般的なコンクリートとほぼ同じ25 MPaもの圧縮強度を持つことが実証されている。さらには、尿や汗から採った尿素を加えることで、従来のコンクリートよりも強い40 MPaに達する[14][15][16]。必ずしも人の血液である必要はなく、牛の血液(ウシ血清アルブミン)を使ったり、遺伝子組み換え大腸菌などで作った合成クモの糸を使う研究もおこなわれている[15]。机上計算ではあるが、6人の宇宙飛行士のクルーが、火星で2年間のミッションを行う場合、500kg以上の血液コンクリートが生産できるとの計算もある。[14]

参考文献

関連文献

外部リンク

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