ロリーン・パウエル・ジョブズ
アメリカ合衆国の実業家
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ロリーン・パウエル・ジョブズ(Laurene Powell Jobs、1963年11月6日[6] - )は、アメリカ合衆国の実業家。社会的インパクト組織であるエマーソン・コレクティブの創設者兼幹部であり、投資活動や慈善活動を通じて、教育改革、社会再分配、環境保全に関する政策を提唱している。[7] 彼女はまた、高校教育を再考することに専念する、全国を代表する組織のXQ Instituteや、恵まれない高校生を大学に進学させるカレッジトラックの理事会の共同創設者兼社長でもある。
ロリーン・パウエル・ジョブズ | |
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![]() ロリーン・パウエル(2012年) | |
| 生誕 |
ロリーン・パウエル 1963年11月6日(62歳) |
| 国籍 |
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| 出身校 |
ペンシルバニア大学 BA, BS取得 スタンフォード大学経営大学院(1991年卒業、MBA取得) |
| 職業 |
Emerson Collective 創設者/代表[1] |
| 配偶者 | |
| 子供 |
リサ・ブレナン=ジョブズ リード・ジョブズ エリン・ジョブズ イヴ・ジョブズ[5] |
| 親戚 |
モナ・シンプソン(義姉妹) Patricia Ann Jobs (義姉妹) |
Appleの共同設立者の一人である故スティーブ・ジョブズの元配偶者として相続した、550万もの株を保有したAppleの大株主[8][9]で、ウォルト・ディズニー・カンパニーの株4%を持つ個人筆頭株主であること[10](2016年までは7.3%)[11]から、女性として世界で6番目に資産を持つ富豪として知られる[12]。また、フォーブス誌「最もパワフルな女性100人」では2024年に21位[13]。推定資産は130〜150億ドル規模とされる[14]。
アトランティック誌の筆頭投資家兼会長のほか、フォード財団、外交問題評議会、Chicago CRED、カレッジトラック、Elemental Impactの理事を務めている[15]。
パウエル・ジョブズはパロアルト (カリフォルニア州)に3人の子供とともに住んでいる。[16]
略歴
ニュージャージー州のウエストミルフォードで生まれ育つ[17]。1985年にペンシルバニア大学で政治学と経済学の学士号を取得[16][18]。卒業後はメリルリンチに勤めたほか、3年間ゴールドマン・サックスで債券取引ストラテジストとして働いていた。
経済学修士課程の1年生であった1989年10月、スタンフォード大学でスティーブ・ジョブズの講義を受ける。このときジョブズが彼女の隣の席に座ったことがきっかけとなり交際を始める[19]。1年半後の1991年3月18日、ヨセミテ国立公園内のアワニー・ホテルで仏教式の結婚式を挙げた。式を執り行ったのは、スティーブが長年師事していた日本の曹洞宗の禅僧乙川弘文であった[20]。また同年には、スタンフォード大学経営大学院でMBAを取得している[21]。
1991年11月に息子リード、1995年に娘エリン、1998年に娘イブが生まれる。パウエルはまた、スティーブの娘リサ・ブレナン・ジョブズの母でもある。
1991年、自然食品の小売業を営むTerraveraを共同設立し、オーガニック製品の生産と、北カルフォルニア州全土にある300以上の小売業者への運搬を行った。第二児が生まれたころ、教育分野へ注力するため同社を退社している[22][23]。
2004年にラルフ・ワルド・エマーソンに因んで名付けた、Emerson Collectiveを創設する[24]。
2010年12月より、White House Council for Community Solutionsメンバーとして、バラク・オバマ大統領のアドバイザーを務める[25][26]。
2012年9月、スタンフォード大学の理事に選出され[27]、2019年現在も継続している[28]。
2013年4月、NBCのRock Starでのインタビュー[29]にて、15年間教育の場に携わってきたこと、そして大学での自分の経験を踏まえ、教育とロリーンが1997年に設立し運営する非営利団体College Trackによる取組みと大学教育を受けられるようにすることの意義ついて語っている。
2013年7月、オンラインメディアのOZYが、ロリーンによる投資を得[30]、彼女が取締役に就任、更に2014年10月にはロリーンを筆頭とした投資家から2000万ドルの資金を得たことが報道された[31]。OZY社は、他にも電通やフォード財団などからの投資を受け、BBCやPBSなどと提携するなどしていたが、2023年に、役員の詐欺を原因として倒産している。
2015年9月、教育改革を支援する為、XQ Institute[32]に5000万ドル寄付[33][34]している。
2015年11月、代表を務めるEmerson Collectiveを通して、デジタル技術によって個人個人への教育を改善する会社AmplifyをNews Corp.より買収したことが判明した[35]。
2016年7月、馬術競技に取組む19歳の娘イヴの為に、フロリダ州ウェリントンの牧場を1530万ドルで購入した[36]。
2017年7月、Emerson Collectiveを通し、アメリカのメディア企業The Atlanticを買収した[37][38]。
2019年7月、レオナルド・ディカプリオが主宰するLeonardo DiCaprio Foundationと共に、地球気候変動対策を推進するEarth AllianceにEmerson Collectiveとして参加した[39][40]。パウエル・ジョブズはEmerson Collectiveから、ジョナサン・アイブが起業したLoveFromやIOに出資するなど密接な支援を行なっている[41]。
息子のリードは2023年、がん治療に特化したベンチャーキャピタル「Yosemite」を設立した。
スタンフォード大学経営大学院からはアーネスト・C・アーバックル賞を受けており[15]、2026年6月13日には同大学院の学位授与式で卒業式講演を行った[42]。
思想と価値観
ローリーン・パウエル・ジョブズの活動の根底には、出自によって人生が制約されるべきではないという信念がある。彼女が創設したエマーソン・コレクティブは、人々が生まれの境遇に縛られず、自らの最善の目的に沿って自分の道を切り拓ける世界を目指すことを掲げている[43]。
ラルフ・ウォルドー・エマーソンの影響
組織名「エマーソン・コレクティブ」は、彼女が愛読する19世紀アメリカの思想家ラルフ・ウォルドー・エマーソンに由来する。パウエル・ジョブズは、社会によって課された制約を超克する人間の能力を説いたエマーソンの思想に強く感銘を受けたと語っている。「コレクティブ(集合体)」という語には、目的意識を共有する仲間と学び合い協働するときに人は最善を尽くせるという考えを込めたとしている[44]。ただし、生涯を孤独な著述に費やし個人主義を唱えたエマーソンと「コレクティブ」を掲げる組織との間には思想的な緊張があるとの指摘もある[45]。
富と慈善に関する哲学
パウエル・ジョブズは、極端な富の蓄積そのものに批判的な立場を公言している。2020年2月の『ニューヨーク・タイムズ』のインタビュー(デイビッド・ジェレスによる)では、何百万人もの資産に匹敵する莫大な富を個人が蓄積することは「正しいことではなく、そこに公正さはない」と述べ、ロックフェラー家やカーネギー家、メロン家、フォード家といった19〜20世紀の富豪一族を例に挙げて、そうした蓄積は社会にとって危険だと語った[46]。彼女は相続した財産を子孫に世襲させる意図はないと明言しており、世襲的な富の構築には関心がなく、自分が十分長く生きれば富は自分の代で終わると述べている[46]。富の蓄積に関心のなかった夫スティーブの遺志を継ぎ、財産を効果的に分配して個人と地域社会を持続的に支えることに人生を捧げていると説明している[46]。
慈善のあり方については、マーティン・ルーサー・キング・ジュニアの「慈善は有用で良い手段だが、その慈善を生み出した状況そのものを無視してはならない」という言葉を引き、富が一部の最富裕層に急速に集中する現状において、その富はそれを生み出したシステムを是正するために使われなければならないと論じている。
「インパクト」の方法論
パウエル・ジョブズは、慈善(フィランソロピー)を善のための強力な手段の一つと位置づけつつ、それが唯一の手段ではないと考えている。彼女にとっては、使命主導型の投資、芸術やアクティビズム、ストーリーテリングもまた変革のための手段であり、エマーソン・コレクティブを有限責任会社(LLC)として設立したのは、これら複数のモデルの長所を柔軟に組み合わせるためだと説明している[44]。教育、移民、健康、環境といった課題は相互に深く結びついているという認識が、これらの分野を横断的に扱う組織設計の根底にあるとされる[43]。こうした財団の枠にとらわれないLLC型のフィランソロピーは、近年の大型慈善における潮流の一つとして論じられている[47]。
メディア
2017年に『アトランティック』誌の過半数株式を取得し、筆頭投資家兼会長を務めている。2020年にはデイヴィッド・グッゲンハイムとともに映像制作会社コンコルディア・スタジオ(Concordia Studio)を設立し、ドキュメンタリー映画『Still: A Michael J. Fox Movie』(2024年)などを製作した。制作会社Anonymous Contentの筆頭投資家でもあるほか、ProPublicaなどの非営利報道機関を支援している[15]。
ヘルスケア
2024年、女性向け医療スタートアップのMidi Healthの6000万ドルのシリーズB調達を主導したほか、2025年には自宅で子宮頸がんの検体採取ができるTeal Healthに出資した。
スポーツ
2017年、NBAのワシントン・ウィザーズやNHLのワシントン・キャピタルズなどを保有するモニュメンタル・スポーツ&エンターテインメントの株式約20%を取得したが、2025年12月に同社は彼女が保有株を売却したと発表した。2022年にはWNBAの記録的な資金調達ラウンドにも出資者として参加した[48]。
エネルギーや先端技術分野への投資
近年、エマーソン・コレクティブはエネルギーや気候関連技術への投資を強めている。2025年2月、同組織はアマゾンやアレス・マネジメントらとともに、小型モジュール炉(SMR)を開発する原子力スタートアップのX-energyに出資した。これはシリーズC調達の追加分で、調達総額は7億ドルに達した[49][50]。X-energyのXe-100炉は、従来の燃料棒より安全とされるTRISO燃料を用い、1基あたり80メガワットの発電能力を持つと見込まれている[49]。カリフォルニア州ソラノ郡で持続可能な計画都市の建設を目指すカリフォルニア・フォーエバー(California Forever)にも投資している。
精神性と信仰
パウエル・ジョブズは、夫スティーブと同様に東洋の精神的伝統に深く関心を寄せてきた。夫妻を結んだのも仏教であり、二人の結婚式は禅式で執り行われた[20]。彼女自身も禅仏教の信奉者として知られる。
2025年1月、彼女はインドのプラヤーグラージで開かれたマハ・クンブ・メーラ(ヒンドゥー教最大の巡礼祭)を訪れた[51]。この巡礼は、生前にクンブ・メーラを訪れることを望んでいた夫の遺志を継ぐものであったとされる[51]。滞在中、彼女はニランジャニ・アカーラー(修行者の教団)の陣営に宿泊し、聖者スワミ・カイラーシャーナンド・ギリの案内のもとで沐浴などの儀礼に参加した。同師からは「カマラ」というヒンドゥー名を授けられている[51][52]。ただし、慣れない環境と混雑によりアレルギー症状を起こし、当初の予定を早めて滞在を切り上げたと報じられている[52]。
政治活動
海外との関係
パウエル・ジョブスは2025年5月27日、日本の千葉工業大学より学術文化や社会への功績が特に顕著であると認められ、名誉博士の称号をブータン王国のジグミ・ケサル・ナムゲル・ワンチュク国王陛下、リード・ギャレット・ホフマンと共に授与した[54]。
受賞に際し、パウエル・ジョブスは "皆様、この世紀において、私たちはどのように未来を築いていくべきでしょうか。野心だけでなく、優しさを持って築きましょう。輝かしいものだけでなく、永続するものを築きましょう。そして、分裂からではなく、全体性から築きましょう。そうすることで、私たちは世界に、私たちを癒す何かを与えることができるからです。"とコメントしている[54]
スティーブ・ジョブズの死
慈善活動
1997年、パウエル・ジョブズは、高校の卒業、大学への入学、環境的に恵まれない生徒の大学の卒業率を改善するために、カルロス・ワトソンとともに非営利団体カレッジトラックをイーストパロアルトに設立した[56]。全国平均の第一世代大学生の4年制大学の卒業率が24%であるのに対し、第一世代大学生が多くを占めるカレッジトラックの高校卒業生は、その約90%が4年制大学に通っており、70%が6年間で大学を卒業している。 カレッジトラックは、イーストパロアルト、サクラメント、サンフランシスコ、オークランド、ワッツ、ボイルハイツ、ニューオーリンズ、オーロラ (コロラド州)、デンバー、およびワシントンD.C.に施設を持っている。パウエルは、「5つの都市でセンターの開設を待っている。私たちは基準を高く維持したいと考えているが、フランチャイズや、私たちのカリキュラムとトレーニングの普及によって成長することに消極的だ。」と語っている。
2004年、Emerson Collectiveを設立する。Emerson Collectiveは、パートナーシップ、助成金、投資を通じて、教育・移民の改革、社会正義、メディア・ジャーナリズムに取り組む社会起業家や組織をサポートする組織である[59][56]。
2015年9月、高校教育への新しいアプローチを確立するために、5,000万ドルのプロジェクト、XQ The Super School Project(以後XQ)を立ち上げる[56]。 XQは、教育者、生徒、コミュニティリーダーが高校教育における新しい計画を創造し実施することを目的としており、 この取り組みには、学校のスケジュール、カリキュラム、テクノロジーの変革を行い、国の100年前の高校教育モデルを改善することが含まれている。 XQへの資金提供は、エマソンコレクティブ(Emerson Collective)から行われる[60][61]。最初の5,000万ドルの寄付に続いて、XQは追加寄付を発表し、10校にそれぞれ1,000万ドルを授与し、合計1億ドルの寄付を行った。 対象校は全国の約700の候補校から選ばれた[62][63]。 パウエルのアドバイザーチームを率いるのは、ラスリンH.アリである。
2018年現在、パウエル・ジョブズは、カレッジトラック(College Track)、コンサベーションインターナショナル(Conservation International)、スタンフォード大学の取締役を務めている[64][65]。また、彼女はXQの理事会の議長であり、外交問題評議会の議長の諮問委員会にも参加している。 2012年、彼女はフォーブスによって世界で49番目にパワフルな女性としてランク入し、2024年には21位にランクされた[66]。
