Wikiwand AI

ヴァロッティ音律

From Wikipedia, the free encyclopedia

ヴァロッティ音律の五度圏

ヴァロッティ音律 (Vallotti temperament) は、18世紀のオルガニスト、作曲家、音楽理論家である、フランチェスコ・アントニオ・ヴァッロッティ(英語版)によって考案された音律である。この音律は鍵盤楽器によって、すべての調を演奏可能にする調律法のひとつである。

この音律についてのヴァロッティによる説明が見られるのは、彼の論文 Della scienza teorica e pratica della moderna musica (『近代音楽の理論的及び実践的な科学』)の第2巻である。ヴァロッティは彼の理論体系を1728年には作り上げていたと述べており、それにはこの音律の詳細も含まれていたであろうと考えられるが、彼の論文の第1巻が出版されたのは、彼の死の前年である1779年のことである。彼が亡くなった時、他の3巻はまだ出版されておらず、1950年に Trattato della moderna musica (『近代音楽論』) というタイトルのもとに全4巻が出版されるまで、それらは手稿のままで残されていた[1]。

ヴァロッティの音律は、彼の生前及び死後しばらくはごくわずかな注目しか集めなかった[2]。ヴァロッティの友人であるジュゼッペ・タルティーニが1754年に出版した論文中でヴァロッティの調律法が称賛されており[3]、いくつかの特徴が述べられているが、音律を特定するに十分な詳細は与えられていない[4]。1781年に数学者のウィリアム・ジョーンズがタルティーニによるヴァロッティの調律法への言及について記しているが、これも同様に漠然としたものでしかない[5]。

今日ヴァロッティに帰せられている音律は、彼が本来記述したものと完全に同じものではない。彼のオリジナルのバージョンは、1/6シントニックコンマだけ狭められた6つの五度と、5つの純正な五度、そして1つのスキスマ(ピタゴラスコンマとシントニックコンマの差、約1.95セント)だけ狭められた五度を持つものである。現代のバージョンではヴァロッティのオリジナルの1つだけ半端な五度をスキスマ分広くし、6つの狭められた五度をそれぞれさらに1/6スキスマ狭くする。すなわち現代のバージョンは、1/6ピタゴラスコンマ狭い五度を6つと、純正な五度を6つ持つ。

ヴァロッティのオリジナル

現代のヴァロッティ音律は B-F♯、 F♯-C♯、 C♯-G♯、 G♯-E♭、 E♭-B♭、 B♭-F の五度を純正とし、F-C、 C-G、 G-D、 D-A、 A-E、 E-B の五度は1/6ピタゴラスコンマだけ純正音程より狭くする[6]。これらの五度のセント値は以下のようになる。

f1Def=1200 ( log2(3) − 1) ≈ 701.96(純正な五度)
f2Def=2600 − 1200 log2(3) ≈ 698.04(1/6ピタゴラスコンマ狭い五度)

j = 1,2, に対して sj Def= fj − 600  とするとき、この音律における長三度のセント値は以下のようになる[7]。

  長三度   F-A, C-E,
G-B
D-F♯,
B♭-D
A-C♯,
E♭-G
E-G♯,
G♯-C
B-E♭, F♯-B♭,
C♯-F
幅
exact
approx.
4 s2
 392.18 
 3 s2 + s1 
396.09
 2 s2 + 2 s1 
400 (exactly)
 s2 + 3 s1 
403.91
 4 s1 
407.82
純正音程からの偏差 +5.9+9.8+13.7+17.6+21.5

以下の表は、この音律と平均律の、Aを同じ音高とした場合の半音階の音の音高の差のセント値である[8]。

音名 E♭B♭FCGD A EBF♯C♯G♯
平均律との差 +3.9+5.9+7.8+5.9+3.9+2.00-2.0-3.9-2.00+2.0

この音律はヤングの音律 (ヤング音律(英語版)) の第2法に非常によく似ている。ヤング第2法も連続する6つの純正な五度と6つの1/6ピタゴラスコンマ狭い五度をもつ。ただしヤング第2法は一連の狭められた五度が C から始まるのに対して、ヴァロッティの場合は F から始まる[9]。

ヴァロッティによる本来の説明によれば、ヴァロッティの音律は B-F♯、 F♯-C♯、 C♯-G♯、 G♯-E♭、 E♭-B♭ の五度を純正とし、 F-C、 C-G、 G-D、 D-A、 A-E、 E-B の五度を純正音程より1/6シントニックコンマ狭くする。このとき B♭-F の五度はスキスマ(ピタゴラスコンマとシントニックコンマの差、約1.95セント)だけ純正音程より狭くなる[10]。

f3Def=200 ( 2 log2(3) + log2(5) – 2 ) ≈ 698.37(1/6シントニックコンマ狭い五度)
f4Def=1200 ( 14 – 7 log2(3) – log2(5) ) ≈ 700.00(スキスマ狭い五度)

 s1  を上述のように定義し、 j = 3,4, に対して  sj Def= fj − 600  とするとき、この音律の長三度のセント値は以下のようになる。

  長三度   F-A, C-E,
G-B
D-F♯A-C♯E-G♯ B-E♭,
F♯-B♭
C♯-FG♯-CE♭-GB♭-D
幅
exact
approx.
4 s3
 393.48 
 3 s3 + s1 
397.07
 2 s3 + 2 s1 
400.65
 s3 + 3 s1 
404.24
 4 s1 
407.82
s4 + 3 s1 
405.87
 s3 + s4 + 2 s1 
402.28
 2 s3 + s4 + s1 
398.70
 3 s3 + s4
395.11
純正音程からの偏差 +7.2+10.8+14.3+17.9+21.5+19.6+16.0+12.4+8.8

平均律との差は以下の通り。

音名 E♭B♭FCGD A EBF♯C♯G♯
平均律との差 +4.6+6.5+6.5+4.9+3.3+1.60-1.6-3.3-1.3+0.65+2.6

脚注

参考文献

関連項目

外部リンク

Related Articles

Timelines

Top Qs

Fact Checks