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一場事件

日本学生野球憲章に違反した事件 From Wikipedia, the free encyclopedia

一場事件(いちばじけん)は、2004年(平成16年)のドラフト自由枠での獲得を目指していた一場靖弘(明治大学硬式野球部)に対して、日本プロ野球の複数の球団が栄養費との名目で日本学生野球憲章に反して現金を渡していたことが発覚した事件である[1][2][3]。

一場靖弘(ヤクルト移籍後)
(2011年10月8日撮影)

同年の球界再編問題の一部分としても扱われることが多い。

経緯

明治大学の一場は4年時の2004年(平成16年)春に東京六大学リーグで歴代2位(戦後最多)となるシーズン107奪三振を達成し、史上最速となる154km/hを計測する速球を武器に8勝3敗の成績で勝ち点5の完全優勝に貢献したほか、ベストナインにも選出された。第53回全日本大学野球選手権大会では完全試合も達成するなど明治大学での通算成績は52試合の登板で26勝15敗、防御率2.00、歴代5位となる通算379奪三振を記録した。大学屈指の即戦力右腕として注目を集めて争奪戦が激化するなかで一場本人は在京球団への入団を希望したこともあり、一時は読売ジャイアンツへの入団が内定される。

しかし同年8月13日、読売ジャイアンツ(巨人)が2003年(平成15年)12月からの約半年間に一場に対して「食事代」「交通費」「小遣い」などの名目で複数回にわたって総額200万円の現金を渡していたことが明らかになり、球団社長の土井誠と球団代表の三山秀昭をはじめとする編成に関与した幹部4名を解任し、オーナーの渡邉恒雄と会長の堀川吉則が引責辞任することが発表された[4]。日本学生野球憲章第13条2項は「プロ野球の球団への入団を条件とする金品の支給または貸与を受けることを禁ずる」と定めているが、全国高校野球選手権大会・全日本大学野球選手権大会・国民体育大会で活躍した選手の獲得を巡っては憲章に抵触する裏金が飛び交っているとの噂自体は以前から伝わっており、巨人の発表はこの噂が事実であることを意味することとなって球界のみならず社会に大きな衝撃を与えた[5]。この事件を受けて明治大学硬式野球部監督の別府隆彦と一場は金銭の授受を認め、8月14日に一場が退部届を提出[6][7]して当面の間謹慎することを表明、別府も8月16日に監督辞任を表明した。これに対して日本プロ野球コミッショナーの根來泰周は、8月16日に厳正に対処する方針を述べたものの過去の遡及に対しては「各球団の自浄能力に委ねる」と消極的な態度を示し、日本学生野球協会も同日に「当該選手(一場)は野球部の退部によって連盟の傘下から外れており、学生野球憲章に基づく処分の対象とはしない」とした[8]。根來は9月7日に読売ジャイアンツ(巨人)に対して戒告と現金500万円または同額の野球用具を野球育成関係の団体へ寄付するように命じた[9][10]。

同年10月21日、一場が最初に金銭を授受した巨人以外に横浜ベイスターズからも金銭を授受していたことが発覚した。さらに翌日には阪神タイガースからも金銭を授受していたことを別府が明らかにし、問題は他球団にも波及した[11][12][12][13]。横浜は前述の巨人とほぼ同時期に総額60万円を渡していたほか、8月下旬には担当スカウトが球団からの事情聴取に対して「現金は渡していない」との虚偽の報告を行っていた。阪神も2003年(平成15年)12月から翌年3月までに総額25万円を渡しており[12]、阪神の球団社長である野崎勝義は事件が発覚した際に「そのような(現金を渡した)ことは無い」と虚偽の報告を行っていた[12]。この結果、横浜の砂原幸雄(TBS会長)と阪神の久万俊二郎の両オーナーが辞任したが[12]、当初は辞任を表明していた野崎は球団幹部への降格に留まった[14]。同年12月7日に根來は横浜・阪神の両球団に対して戒告と横浜に180万円、阪神に75万円もしくは同額の野球用具を野球育成関係の団体へ寄付するように命じた[15]。

なお、広島東洋カープでも一場に対する金銭授与が発覚したが総額で交通費の2000円のみだったと言われている。実費補償で実費満額にも満たないと伝わるほか、オーナーの松田元は「適正な額である」と述べており、取締役球団副本部長である鈴木清明も「社会通念からかけ離れているようなスカウト活動はやっていない」と断言したため、オーナー職の辞任には至らなかった[16]。

この事件が影響して、金銭を授受しなかった他球団も一場のドラフト指名には消極的になった。当事件が発覚した8月中旬はドラフト会議の直前で各球団が戦略を見直す余裕が無かったのも一因とされ[17][18]、一場は日本プロ野球入りを断念してメジャーリーグベースボールや中華職業棒球大聯盟への入団も検討したが、同年のプロ野球再編問題によって誕生した東北楽天ゴールデンイーグルスが即戦力投手の補強を目指していたこともあり、同年11月に開催されたドラフト会議において自由獲得枠で入団することが決まった[19][20][21][22]。

2005年(平成17年)6月20日、日本野球機構は「新人選手獲得活動において利益供与は一切行わない」などを柱とした倫理行動宣言を発表し、日本プロ野球側は契約前にアマチュア選手への金銭供与を禁止することとなった[23]。

脚注

関連項目

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