不活性電子対効果
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第四周期以降の第13族元素~第17族元素では族によって決まる最高酸化数よりも2少ない酸化数の化合物が安定になる傾向がしばしば見られる。 例えば第四周期においては、ヒ素のハロゲン化物は5価よりも3価をとる傾向があり、セレンの酸化物や酸素酸は6価よりも4価の方が安定であり、臭素では臭素酸から過臭素酸への酸化が非常に困難である、といった現象が知られている。 第五周期では、インジウム、スズ、アンチモンの塩化物はそれぞれ最高酸化数とそれよりも2少ない酸化数の化合物が両方とも知られている。 第六周期になると、タリウム、鉛、ビスマスにおいては、むしろ最高酸化数の化学種の方が不安定であり、それよりも2つ小さい酸化数が安定であることが知られている。 この原因として原子価殻のs軌道への核電荷の遮蔽が弱いため、電子雲が原子核近傍に引き寄せられエネルギー的に安定となり価電子としてふるまわないという仮説が唱えられた。 そのため、この現象を不活性電子対効果という。
不活性電子対効果が生じる原因については様々な混乱した説明がなされてきたが、以下に示すように(i)内殻のd・f軌道による不十分な遮蔽による有効核電荷の増大、(ii)相対論効果による6s軌道の収縮と有効核電荷の増大、(iii)周期表の下に行くほどイオン結合・共有結合エンタルピーが小さくなるために高酸化数になる利得が小さいため、の3つの要因があることが知られている。
不活性電子対効果の例
13族のタリウム(Tl)を考える。Tlは+1価が最も安定であり、+3を取ることはほとんど無い。 13族の+1価の安定性は以下の順序である。[1]
- Al+ < Ga+ < In+ < Tl+.
14族~16族でも安定性の傾向は同じで、最も重い第6周期にある鉛、ビスマス、ポロニウムは、それぞれ+2、+3、+4の酸化状態で比較的安定である。 それぞれの元素の低い酸化状態では、s軌道に2個の価電子がある。s軌道の価電子はp軌道の電子に比べて結合力が強く、エネルギーが低いため、結合に関与しにくいという説明もある[3]。そのため不活性電子対効果と呼ばれた。