乱交

複数の相手と入り乱れて行う性行為 From Wikipedia, the free encyclopedia

乱交(らんこう)とは、ヒトを含めた動物の生殖行動において、特に交尾交接を伴う場合に、その場を共有する不特定の相手と生殖行為を行う状況を指す。「乱婚」と呼ばれることもある。

エドゥアール=アンリ・アヴリルによる『西洋古典好色文学入門 (De figuris Veneris)』所収のオージーの場面、あるいは、オージーの空想を描いた挿画。
アンドレア・マンテーニャ『ワイン桶を囲むバックス祭 (Baccanale col tino)』(1475年頃)。

昆虫の多くは乱交を行うと言われ、ハサミムシについて詳しい報告があるほか[1]、哺乳類でもニホンツキノワグマ[2]ニホンザル[3]などで観察される現象である。また、交尾を伴わない魚類などの生殖行為においても、特定のメスが様々なオスの縄張りを回って生殖するような形態を「乱交的 (promiscuous)」と表現することがある[4]

以下、本項目では主に人間の行為としての乱交について述べる。

乱交パーティー

参加者が制約なく自由に性行為やグループセックスができるようなパーティーを、日本語では乱交パーティー(乱パ)、あるいは単に乱交という。これは現代英語におけるオージー (orgy) に相当する概念[5]。一方で、100人以上が関わるようなグループセックスと同義とする考え方もあれば、スワッピングのように特定の集団で相手を限定している集団性行為は、乱交には含まれないとする考え方もある[6]

スワッピング愛好者たちのパーティーは、参加者全員が顔見知りであったり、少なくとも何らかの共通性を、経済的階級や教育水準、その他共有する性格においてもっていることが多いため、オージーとされるような形態には該当するとは限らない。彼らの中には、オージーとは、彼ら自身がおこなっていようなセックス・パーティーとは異なり、参加者の一定の匿名性が保たれ、完全な性的放縦がなされるものを指すのだと強く主張する者もいる[7]。その他さまざまな形態のセックス・パーティーにおいても、この「オージー」というラベリングを避ける傾向が見られる。

なお、英語の「orgy」という単語は、比喩表現として「orgy of colour(色彩の氾濫)」や「orgy of destruction(破壊の嵐)」のように、何かが過剰に存在する状態を表す際にも用いられる。また、形容詞形の「orgiastic」は、通常グループセックスを意味することはなく、語源である古代ギリシャの儀式「オルギア」に由来する意味合いや、その比喩表現として主に用いられている。

古代における「オルギア」

オージーの語源となったのは、古代ギリシアにおける秘密の宗教儀式「オルギア」(古代ギリシア語: ὄργια、単数形はオルギオン、ὄργιον)である。

古代ギリシアの宗教において「オルギア」とは、ギリシア=ヘレニズムの秘密宗教の特徴となっていた宗教的悦楽の儀式のことであった。公の場や、家庭内での宗教儀式と異なり、秘儀は一部の者にだけ参加が許された、「秘密」のものであった。そうした儀式の中には、夜におこなわれるものもあった。

「オルギア」はエレウシスの秘儀やディオニューソスの秘儀の一部となっていたほか、キュベレーにおいては狂乱したトランス状態の中で神官の去勢がおこなわれた

オルギアは秘密のうちに、夜に行われ、記録も残されないという性格をもっていたため、好色な憶測を呼び、特にローマ人たちは疑念を抱き、紀元前186年には元老院がバックス信仰を抑えようと、「Senatus consultum de Bacchanalibus」を出した。「オルギア」には、セックスが関わっていたと広く考えられているが[8]、性行為と豊穣が信仰の要であった当時、「オルギア」の主要な目的は、神とのエクスタシーを通した結合にあった。

日本における伝統的形態

日本では古来、農村部などを中心に、盆祭りなどの機会に若い男女が集落のお堂などに一堂に泊まり込み、集団で雑魚寝(ざこね)や性的交流を行う風習が存在した。これが盆踊りと結びついて定着した結果、全国各地の農村に「雑魚寝堂」と呼ばれる施設が存在したとされる[9]

明治時代に入ると、国家の近代化を推し進める政府によってこれらの風習は「風紀を乱すもの」とみなされ、警察による取り締まりの対象となっていった。それまでの盆踊りは、単に未婚の男女が出会う場にとどまらず、既婚者も含めた集落内の自由な性的交流の場としても機能していたとされる[9]

芸術における乱交の描写

映画

乱交への参加は、性的空想として広く共有されたものであり、そうした観客を狙って制作されるグループセックスを描く作品は、ポルノ映画において、ひとつのサブジャンルを形成している。

一般の映画でも乱交の様子が描写された場面のある作品はいろいろあり、例えば2013年の映画の『ウルフ・オブ・ウォールストリート』はその一例である[10]

スタンリー・キューブリック監督の遺作となった1999年の映画アイズ ワイド シャット』では、主人公が目撃する乱交パーティーが、ストーリー展開の大きな要素となっている[11]

テレビドラマ

2004年12月、アメリカ合衆国で放送されたテレビドラマ『WITHOUT A TRACE/FBI 失踪者を追え!』シーズン3のエピソード「ジャックの長い一日」において、10代の青少年が乱交パーティーを行なっているように見える場面が放送された。これに対し、視聴者から連邦通信委員会へ苦情が寄せられた[12]

この問題を受けて2006年3月、連邦通信委員会はこの番組を放送した111のテレビ局に対し、分担して総額363万ドル(当時のレートで約4億円規模)の罰金を支払うよう命じた[12]

写真

マドンナは、1992年に発表した写真集『SEX』に乱交の場面を盛り込んでおり、その撮影はニューヨークチェルシーホテル622号室でおこなわれた[13]

演劇

2006年に第50回岸田國士戯曲賞を受賞した三浦大輔の戯曲『愛の渦』は、乱交パーティーを舞台に展開する作品である[14][15]。上演に際しては、登場人物がバスタオルを身をつけて演じる[15]

2014年には、三浦自身が監督を務めた映画『愛の渦』が公開され、本編123分中、着衣のシーンが18分30秒のみということも話題となった。

小説

中国人作家である虹影は、天安門事件を描いた小説『裏切りの夏(背叛之夏)』の終盤に乱交パーティーの場面を設け、政治的抑圧とともに性的抑圧にも抗う主人公の女性芸術家が、乱交パーティーの最中に踏み込んだ警察に全裸のまま逮捕されるという顛末を描いた[16]

新聞広告における扱い

日本では、2000年読売新聞が「家庭に配れぬ 扇情的な広告」として『週刊現代』(講談社)と『週刊アサヒ芸能』(徳間書店)の広告掲載を差し止める広告掲載拒否問題があった。新聞業界全体においても同様の問題が広く論じられるようになった[17]

読売新聞ではこの問題が表面化する以前から、掲載する雑誌記事の表現を事前にチェックし、修正していた。そこでは、例えば「乱交」という表現は、「乱夜パーティー」や「乱宴」といった別の表現へ置き換えられていた[17]

脚注

関連文献

関連項目

外部リンク

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