原昭二
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初期の業績


原 昭二は、昭和25年(1950年)、東京大学医学部薬学科を卒業し、東京大学大学院に進んで、薬化学を専攻した。初期の研究は、分析化学、合成化学の基礎を研鑽することに始まり、業績として液体クロマトグラフィーの技術革新[1]、天然有機化合物の構造研究、合成研究(猛毒成分として知られるアコニット・アルカロイドの構造決定、サラマンダーアルカロイド の全合成 [2] など)、広領域にわたって先導的な成果を得た。これらの研究に携わった経験と、研鑽から得られた科学・技術は、革新的な、キラル分割(光学分割、Optical Resolution)法の発見と キラル化学、Chiral Chemistry の中核となるシステム構築に展開された。
キラル化学の革新
キラルなセレクター(光学分割の機能に関わる部分)をもつ、高効率の充填カラムを創製して、対掌体の分割能をもつHPLC(高速液体クロマトグラフィー )を開発した[3]。 さらに、カラムのもつ選択性を増強するため、セレクターの結合に長鎖のスペーサーを導入した。この固定相表面の非選択的な相互作用は小さく、広範囲のセレクタンドに対して分割能を示した[4]。 D-、および L-アミノ酸の非等量混合物の自己会合に基づく、プロトンNMRスペクトルの非等価共鳴を初めて検証し、核磁気共鳴を用いる鏡像体過剰率計測法を確立した[5]。 超臨界流体の二酸化炭素を移動相とするクロマトグラフィーによって、対掌体混合物を秒単位で分割した[6]。 また、キラルな界面活性剤を合成して、動電クロマトグラフィーで対掌体を分割し、キラル識別能をもつミセルの形成を証明した[7]。 通常の合成法で得られる生成物はラセミ体(対掌体の等量混合物)なので、非ラセミ体を合成する有力な手段として、「不斉合成」asymmetric synthesis は、合成化学の課題の一つとなり、不斉能を発揮する触媒の設計は、その中核をなすとされてきた。また、非ラセミ混合物の計測は、専ら、感度の低い「旋光計」を用いる手法で行われてきた。上記のように、キラルHPLCが開発され、また、NMRによるピーク分裂に基づいた、高感度の測定法が確立されたので、対掌体の非等量混合物を分割し、混合比率を計測する、従来のコンセプトは、全面的に革新された [8]。