古ハンガリー文字 (Unicodeのブロック)

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範囲 U+10C80..U+10CFF
(128 個の符号位置)
主な言語・文字体系
古ハンガリー文字 (Unicodeのブロック)
Old Hungarian
範囲 U+10C80..U+10CFF
(128 個の符号位置)
追加多言語面
用字 ロヴァーシュ文字
主な言語・文字体系
割当済 108 個の符号位置
未使用 20 個の保留
Unicodeのバージョン履歴
8.0 108 (+108)
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古ハンガリー文字(こハンガリーもじ、英語: Old Hungarian)は、Unicodeブロックの一つ。

1000年代から1850年代後半にかけて、ハンガリー公用語である、マジャル人が話すウラル語族フィン・ウゴル語派ウゴル諸語に属するハンガリー語(マジャル語)を表記するために用いられてきた古ハンガリー文字(ロヴァーシュ文字)を収録している。

なお、現在のハンガリー語は通常ラテン文字で記述されるが、20世紀初頭からこの文字体系の使用運動を受けて徐々に使用が復活しており、現在もハンガリーで広く使用されている。なお、本文字体系の使用コミュニティでは Szekely-Hungarian Rovas(セーケイ゠ハンガリー・ロヴァーシュ文字)という名前がよく好まれる[1]

古ハンガリー文字はおそらく突厥文字(オルホン文字)に由来する文字体系であり[2]音素文字のうち子音と母音とに独立した文字が割り当てられているアルファベットに分類される。書字方向については、特にセーケイ゠ハンガリー・ロヴァーシュ文字ではかつてラテン文字などと同様に左から右への横書き(左横書き)や、文字の行ごとの左右反転や180°回転を伴う牛耕式で書かれることもあったが、アラビア文字ヘブライ文字などと同様に右から左への横書き(右横書き)で記す方が一般的であり、現在もそちらが主流である[3]ため、Unicode上では右横書きとして定義されている。

単語毎に分かち書きをし、現在は単語区切りには通常のスペースが使われることが多いが、歴史的にはU+2E31 · WORD SEPARATOR MIDDLE DOTU+205A ⁚ TWO DOT PUNCTUATIONU+205D ⁝ TRICOLONU+205E ⁞ VERTICAL FOUR DOTSが用いられる[2]

また、現在の正書法ではラテン文字などと同様に大文字と小文字の区別が存在する。ただし元々は大文字・小文字の区別は存在していなかった[1][2]

突厥文字同様、ルーン文字と外観が類似しているため俗に「ハンガリー・ルーン文字(Hungarian Runic)」と呼称されることがあるが、ゲルマン諸語の表記に用いられたルーン文字とは系統的に全く無関係である。

加えて、アラビア文字タイ文字などと同様に独自の数字体系(古ハンガリー数字)を有している。

符号位置の順序はおおむね現在のラテン文字におけるハンガリー語アルファベットの順序に従っている。

Unicodeのバージョン8.0において初めて追加された。

収録文字

コード 文字 文字名(英語) 用例・説明 ラテン文字転写[1]
大文字
U+10C80 𐲀 OLD HUNGARIAN CAPITAL LETTER A 音素[ɒ]を表す。 A
U+10C81 𐲁 OLD HUNGARIAN CAPITAL LETTER AA 音素[aː]を表す。 Á
U+10C82 𐲂 OLD HUNGARIAN CAPITAL LETTER EB 音素[b]を表す。 B
U+10C83 𐲃 OLD HUNGARIAN CAPITAL LETTER AMB 前鼻音化した[ᵐb]を表す[2]
U+10C84 𐲄 OLD HUNGARIAN CAPITAL LETTER EC 音素[t͡s]を表す。 C
U+10C85 𐲅 OLD HUNGARIAN CAPITAL LETTER ENC 前鼻音化した[ⁿt͡s]を表す[2]
U+10C86 𐲆 OLD HUNGARIAN CAPITAL LETTER ECS 音素[t͡ʃ]を表す。 Cs
U+10C87 𐲇 OLD HUNGARIAN CAPITAL LETTER ED 音素[d]を表す。 D
U+10C88 𐲈 OLD HUNGARIAN CAPITAL LETTER AND 前鼻音化した[ⁿd]を表す[2]
U+10C89 𐲉 OLD HUNGARIAN CAPITAL LETTER E 音素[ɛ]を表す。 E
U+10C8A 𐲊 OLD HUNGARIAN CAPITAL LETTER CLOSE E 音素[e]を表す[4]

現在ラテン文字によるハンガリー語アルファベットでは通常のEと区別されないが、実際は発音によって意味を弁別する単語が存在するため用意されている[5]

Ë[5]
U+10C8B 𐲋 OLD HUNGARIAN CAPITAL LETTER EE 音素[eː]を表す。 É
U+10C8C 𐲌 OLD HUNGARIAN CAPITAL LETTER EF 音素[f]を表す。 F
U+10C8D 𐲍 OLD HUNGARIAN CAPITAL LETTER EG 音素[ɡ]を表す。 G
U+10C8E 𐲎 OLD HUNGARIAN CAPITAL LETTER EGY 音素[ɟ]を表す。 Gy
U+10C8F 𐲏 OLD HUNGARIAN CAPITAL LETTER EH 音素[h]を表す。 H
U+10C90 𐲐 OLD HUNGARIAN CAPITAL LETTER I 音素[i]を表す。 I
U+10C91 𐲑 OLD HUNGARIAN CAPITAL LETTER II 音素[iː]を表す。 Í
U+10C92 𐲒 OLD HUNGARIAN CAPITAL LETTER EJ 音素[j]を表す。 J
U+10C93 𐲓 OLD HUNGARIAN CAPITAL LETTER EK 音素[k]を表す。 K
U+10C94 𐲔 OLD HUNGARIAN CAPITAL LETTER AK 音素[k]を表す。

元々ロヴァーシュ文字は突厥文字と同様に子音字は直前の母音を暗黙の随伴母音として持っており、通常は/e/があるとみなされていた。多くの文字ではこれらの区別が消失していたが、/k/のみ直前の随伴母音が/a/であるものを区別していたため別の文字として残されている[2]

U+10C95 𐲕 OLD HUNGARIAN CAPITAL LETTER UNK 前鼻音化した[ᵑk]を表す[2]
U+10C96 𐲖 OLD HUNGARIAN CAPITAL LETTER EL 音素[l]を表す。 L
U+10C97 𐲗 OLD HUNGARIAN CAPITAL LETTER ELY 音素[j]を表す。 Ly
U+10C98 𐲘 OLD HUNGARIAN CAPITAL LETTER EM 音素[m]を表す。 M
U+10C99 𐲙 OLD HUNGARIAN CAPITAL LETTER EN 音素[n]を表す。 N
U+10C9A 𐲚 OLD HUNGARIAN CAPITAL LETTER ENY 音素[ɲ]を表す。 Ny
U+10C9B 𐲛 OLD HUNGARIAN CAPITAL LETTER O 音素[o]を表す。 O
U+10C9C 𐲜 OLD HUNGARIAN CAPITAL LETTER OO 音素[oː]を表す。 Ó
U+10C9D 𐲝 OLD HUNGARIAN CAPITAL LETTER NIKOLSBURG OE 音素[ø]を表す。 Ö
U+10C9E 𐲞 OLD HUNGARIAN CAPITAL LETTER RUDIMENTA OE 音素[ø]を表す。
U+10C9F 𐲟 OLD HUNGARIAN CAPITAL LETTER OEE 音素[øː]を表す。 Ő
U+10CA0 𐲠 OLD HUNGARIAN CAPITAL LETTER EP 音素[p]を表す。 P
U+10CA1 𐲡 OLD HUNGARIAN CAPITAL LETTER EMP 前鼻音化した[ᵐp]を表す[2]
U+10CA2 𐲢 OLD HUNGARIAN CAPITAL LETTER ER 音素[r]を表す。 R
U+10CA3 𐲣 OLD HUNGARIAN CAPITAL LETTER SHORT ER
U+10CA4 𐲤 OLD HUNGARIAN CAPITAL LETTER ES 音素[ʃ]を表す。 S
U+10CA5 𐲥 OLD HUNGARIAN CAPITAL LETTER ESZ 音素[s]を表す。 Sz
U+10CA6 𐲦 OLD HUNGARIAN CAPITAL LETTER ET 音素[t]を表す。 T
U+10CA7 𐲧 OLD HUNGARIAN CAPITAL LETTER ENT 前鼻音化した[ⁿt]を表す[2]

AntとIntにも使用される[1]

U+10CA8 𐲨 OLD HUNGARIAN CAPITAL LETTER ETY 音素[c]を表す。 Ty
U+10CA9 𐲩 OLD HUNGARIAN CAPITAL LETTER ECH 字母etyの異体字で、音素[x]を表す[2] Χ[2]
U+10CAA 𐲪 OLD HUNGARIAN CAPITAL LETTER U 音素[u]を表す。 U
U+10CAB 𐲫 OLD HUNGARIAN CAPITAL LETTER UU 音素[uː]を表す。 Ú
U+10CAC 𐲬 OLD HUNGARIAN CAPITAL LETTER NIKOLSBURG UE 音素[y]或いは[yː]を表す。

Sándor Forrai の正書法では長母音の Ű [yː] に使用される[1]

Ü/Ű
U+10CAD 𐲭 OLD HUNGARIAN CAPITAL LETTER RUDIMENTA UE 音素[y]或いは[yː]を表す。

Sándor Forrai の正書法では短母音の Ü [y] に使用される[1]

U+10CAE 𐲮 OLD HUNGARIAN CAPITAL LETTER EV 音素[v]を表す。 V
U+10CAF 𐲯 OLD HUNGARIAN CAPITAL LETTER EZ 音素[z]を表す。 Z
U+10CB0 𐲰 OLD HUNGARIAN CAPITAL LETTER EZS 音素[ʒ]を表す。 Zs
U+10CB1 𐲱 OLD HUNGARIAN CAPITAL LETTER ENT-SHAPED SIGN 初期の文献では「tprus」(後に「temperius」の略語として認識された)と呼ばれていた[1]

capita dictionumと呼ばれる未解読の、音素文字ではない記号の一つ。

U+10CB2 𐲲 OLD HUNGARIAN CAPITAL LETTER US
小文字
U+10CC0 𐳀 OLD HUNGARIAN SMALL LETTER A 音素[ɒ]を表す。 a
U+10CC1 𐳁 OLD HUNGARIAN SMALL LETTER AA 音素[aː]を表す。 á
U+10CC2 𐳂 OLD HUNGARIAN SMALL LETTER EB 音素[b]を表す。 b
U+10CC3 𐳃 OLD HUNGARIAN SMALL LETTER AMB 前鼻音化した[ᵐb]を表す[2]
U+10CC4 𐳄 OLD HUNGARIAN SMALL LETTER EC 音素[t͡s]を表す。 c
U+10CC5 𐳅 OLD HUNGARIAN SMALL LETTER ENC 前鼻音化した[ⁿt͡s]を表す[2]
U+10CC6 𐳆 OLD HUNGARIAN SMALL LETTER ECS 音素[t͡ʃ]を表す。 cs
U+10CC7 𐳇 OLD HUNGARIAN SMALL LETTER ED 音素[d]を表す。 d
U+10CC8 𐳈 OLD HUNGARIAN SMALL LETTER AND 前鼻音化した[ⁿd]を表す[2]
U+10CC9 𐳉 OLD HUNGARIAN SMALL LETTER E 音素[ɛ]を表す。 e
U+10CCA 𐳊 OLD HUNGARIAN SMALL LETTER CLOSE E 音素[e]を表す[4]

現在ラテン文字によるハンガリー語アルファベットでは通常のEと区別されないが、実際は発音によって意味を弁別する単語が存在するため用意されている[5]

ë[5]
U+10CCB 𐳋 OLD HUNGARIAN SMALL LETTER EE 音素[eː]を表す。 é
U+10CCC 𐳌 OLD HUNGARIAN SMALL LETTER EF 音素[f]を表す。 f
U+10CCD 𐳍 OLD HUNGARIAN SMALL LETTER EG 音素[ɡ]を表す。 g
U+10CCE 𐳎 OLD HUNGARIAN SMALL LETTER EGY 音素[ɟ]を表す。 gy
U+10CCF 𐳏 OLD HUNGARIAN SMALL LETTER EH 音素[h]を表す。 h
U+10CD0 𐳐 OLD HUNGARIAN SMALL LETTER I 音素[i]を表す。 i
U+10CD1 𐳑 OLD HUNGARIAN SMALL LETTER II 音素[iː]を表す。 í
U+10CD2 𐳒 OLD HUNGARIAN SMALL LETTER EJ 音素[j]を表す。 j
U+10CD3 𐳓 OLD HUNGARIAN SMALL LETTER EK 音素[k]を表す。 k
U+10CD4 𐳔 OLD HUNGARIAN SMALL LETTER AK 音素[k]を表す。

元々ロヴァーシュ文字は突厥文字と同様に子音字は直前の母音を暗黙の随伴母音として持っており、通常は/e/があるとみなされていた。多くの文字ではこれらの区別が消失していたが、/k/のみ直前の随伴母音が/a/であるものを区別していたため別の文字として残されている[2]

U+10CD5 𐳕 OLD HUNGARIAN SMALL LETTER UNK 前鼻音化した[ᵑk]を表す[2]
U+10CD6 𐳖 OLD HUNGARIAN SMALL LETTER EL 音素[l]を表す。 l
U+10CD7 𐳗 OLD HUNGARIAN SMALL LETTER ELY 音素[j]を表す。 ly
U+10CD8 𐳘 OLD HUNGARIAN SMALL LETTER EM 音素[m]を表す。 m
U+10CD9 𐳙 OLD HUNGARIAN SMALL LETTER EN 音素[n]を表す。 n
U+10CDA 𐳚 OLD HUNGARIAN SMALL LETTER ENY 音素[ɲ]を表す。 ny
U+10CDB 𐳛 OLD HUNGARIAN SMALL LETTER O 音素[o]を表す。 o
U+10CDC 𐳜 OLD HUNGARIAN SMALL LETTER OO 音素[oː]を表す。 ó
U+10CDD 𐳝 OLD HUNGARIAN SMALL LETTER NIKOLSBURG OE 音素[ø]を表す。 ö
U+10CDE 𐳞 OLD HUNGARIAN SMALL LETTER RUDIMENTA OE 音素[ø]を表す。
U+10CDF 𐳟 OLD HUNGARIAN SMALL LETTER OEE 音素[øː]を表す。 ő
U+10CE0 𐳠 OLD HUNGARIAN SMALL LETTER EP 音素[p]を表す。 p
U+10CE1 𐳡 OLD HUNGARIAN SMALL LETTER EMP 前鼻音化した[ᵐp]を表す[2]
U+10CE2 𐳢 OLD HUNGARIAN SMALL LETTER ER 音素[r]を表す。 r
U+10CE3 𐳣 OLD HUNGARIAN SMALL LETTER SHORT ER
U+10CE4 𐳤 OLD HUNGARIAN SMALL LETTER ES 音素[ʃ]を表す。 s
U+10CE5 𐳥 OLD HUNGARIAN SMALL LETTER ESZ 音素[s]を表す。 sz
U+10CE6 𐳦 OLD HUNGARIAN SMALL LETTER ET 音素[t]を表す。 t
U+10CE7 𐳧 OLD HUNGARIAN SMALL LETTER ENT 前鼻音化した[ⁿt]を表す[2]

antとintにも使用される[1]

U+10CE8 𐳨 OLD HUNGARIAN SMALL LETTER ETY 音素[c]を表す。 ty
U+10CE9 𐳩 OLD HUNGARIAN SMALL LETTER ECH 字母etyの異体字で、音素[x]を表す[2] χ[2]
U+10CEA 𐳪 OLD HUNGARIAN SMALL LETTER U 音素[u]を表す。 u
U+10CEB 𐳫 OLD HUNGARIAN SMALL LETTER UU 音素[uː]を表す。 ú
U+10CEC 𐳬 OLD HUNGARIAN SMALL LETTER NIKOLSBURG UE 音素[y]或いは[yː]を表す。

Sándor Forrai の正書法では長母音の Ű [yː] に使用される[1]

ü/ű
U+10CED 𐳭 OLD HUNGARIAN SMALL LETTER RUDIMENTA UE 音素[y]或いは[yː]を表す。

Sándor Forrai の正書法では短母音の Ü [y] に使用される[1]

U+10CEE 𐳮 OLD HUNGARIAN SMALL LETTER EV 音素[v]を表す。 v
U+10CEF 𐳯 OLD HUNGARIAN SMALL LETTER EZ 音素[z]を表す。 z
U+10CF0 𐳰 OLD HUNGARIAN SMALL LETTER EZS 音素[ʒ]を表す。 zs
U+10CF1 𐳱 OLD HUNGARIAN SMALL LETTER ENT-SHAPED SIGN 初期の文献では「tprus」(後に「temperius」の略語として認識された)と呼ばれていた[1]

capita dictionumと呼ばれる未解読の、音素文字ではない記号の一つ。

U+10CF2 𐳲 OLD HUNGARIAN SMALL LETTER US
数値
U+10CFA 𐳺 OLD HUNGARIAN NUMBER ONE 単位数字の1
U+10CFB 𐳻 OLD HUNGARIAN NUMBER FIVE 単位数字の5
U+10CFC 𐳼 OLD HUNGARIAN NUMBER TEN 単位数字の10
U+10CFD 𐳽 OLD HUNGARIAN NUMBER FIFTY 単位数字の50
U+10CFE 𐳾 OLD HUNGARIAN NUMBER ONE HUNDRED 単位数字の100
U+10CFF 𐳿 OLD HUNGARIAN NUMBER ONE THOUSAND 単位数字の1,000

小分類

このブロックの小分類は「大文字」(Uppercase letters)、「小文字」(Lowercase letters)、「数値」(Numbers)の3つとなっている[1]

大文字(Uppercase letters)

この小分類には古ハンガリー文字の大文字が収録されている。

大文字は現代になって新しく作られたものである[1]

小文字(Lowercase letters)

この小分類には古ハンガリー文字の小文字が収録されている。

数値(Numbers)

この小分類には古ハンガリー文字のうち、位取り記数法を用いず、単位数字を並べて表現する数値記号(Unicode上では10進法の位取り記数法を用いる"digit"とは区別される)が収録されている。

1、5、10 の数字はローマ数字と明確な関係がある[1]

ブロック名に関する論争

提案当初は、17世紀ごろに新たに作られた現代における使用のための右横書き・左横書き・牛耕式のいずれも取りうる「セーケイ゠ハンガリー・ロヴァーシュ文字(Szekely-Hungarian Rovas)」、7世紀から12世紀にかけて現在のハンガリーやスロバキアに相当するパンノニア平原(カルパティア盆地)地域で使用され[6]2009年に復活した、ハンガリー語のほか、ブルガール語(オノグル語)、アラン語スラヴ諸語、ユーラシア・アヴァール語などの表記にも用いられた右横書き専用の「カルパティア盆地ロヴァーシュ文字(Carpathian Basin Rovas)」、6世紀から965年にかけてカスピ海北部、黒海沿岸やコーカサス地方に存在したテュルク系遊牧民族が建国したハザール帝国テュルク諸語及びアラン語の表記に用いられた右横書き専用の「ハザール・ロヴァーシュ文字(Khazarian Rovas)」という3つの別々の文字体系として提案されていた[3]。2011年6月8日に発表されたN4110ではこれらを1つの文字体系として統合して、「古ハンガリー文字(Old Hungarian)」という一つのブロックする提案がなされていた[7]

この名称に決定されたのは、N4110以前の提案(N3664及びN3697)ではロヴァーシュ文字を「ハンガリー・ルーン文字(Hungarian Runic)」として提案されていたが、ロヴァーシュ文字はルーン文字とは系統的に無関係の文字体系であることから名称として不適切であるという指摘が入った[8]ため、代替の名称として英語でロヴァーシュ文字のことを言及する際に当時一般的に使用されている名称に置き換えたためである[7]

しかし、ブロック名が「ロヴァーシュ文字(Rovas)」ではなく「古ハンガリー文字(Old Hungarian)」となっていることに対しては、2012年1月11日にDr. Gábor HosszúによりN4183で"Old Hungarian"という用語がハンガリーの言語学者によってラテン文字による中世のハンガリー語表記を指すために既に使用されていることや、ロヴァーシュ文字が896年から1526年にかけて話されていた古ハンガリー語(Old Hungarian language)を記述するものではないことから誤解を招くとして不適切であるとするの指摘があった[3][9][10]

これに対して同年1月30日André Szabolcs Szelpは、「ロヴァーシュ(Rovás)」というハンガリー語は「切り込み、画線法」を表しており、現在小分類で数値に分類されている古ハンガリー数字のみを表す用語として用いられるもので、派生語のrovásírás(切り込み文字)も「突厥文字(török rovásírás)などを含む、ルーン文字に似た形状の文字体系」を表す単語でしかなく、本文字体系について現在のハンガリーの科学文献で好まれている用語は「székely írás」、つまり「Szekler 文字」であると指摘した。ただし、同文書で本文字体系は一般的な文字史家がハンガリー人の民族的サブグループを表すSzeklerという単語をあまり認知していないとして、ブロック名は"Old Hungarian"が適切であるとした。また、古ハンガリー語との混同についてはある程度の曖昧さは否定できないものの、この用語は実際には混同されるものではないと反論した[11]

また、Dr. Gábor Hosszúによるロヴァーシュ文字の分類についても異議を唱えており、カルパティア盆地ロヴァーシュ文字は国際科学においては、シャールヴァス・ナギセントミクローシュ文字群(Göbl-RónaTas 1995)または東ヨーロッパ文字群のティサ文字群(Kyzlasov 1994)として、ハザール・ロヴァーシュ文字は国際科学においては東ヨーロッパ文字群(Róna-Tas 1988: 488)のドン・クバン文字群とヴォルガ文字群(Kyzlasov 1994)と指定されている潜在的に関連のある2つの文字体系として認識されていること、並びに、ドン・クバン文字群とヴォルガ文字群は確かに密接に関連しており、同じ文字群の変種あるいは段階である可能性はあるものの、未だ解読されていないため、これを明確に断定することは困難であり、完全な文字セットが判明していないこと、シャールヴァス=ナギセントミクローシュ文字についても証拠が少なく完全な文字セットが判明していないこと、さらにはこれらの文字体系が古ハンガリー文字と密接に関係しているか不明であることを指摘している[11]

これらの指摘を受けてThe Rovas Working Group(ロヴァーシュ作業部会)は以下の判断を下した[12]

  • ブロックおよび文字の英語名は「Rovas」でなければならない。
  • ロヴァーシュ文字ファミリーに属する文字に関する問題がまだ研究段階にあることを考慮し、ロヴァーシュ作業部会は、最初の段階ではロヴァーシュ文字の約物、セーセーケイ゠ハンガリー・ロヴァーシュ文字、カルパティア盆地ロヴァーシュ文字、およびロヴァーシュ数字のみを符号化すること(すなわち、最初の収録段階からはハザール・ロヴァーシュ文字を除外すること)。

André Szabolcs Szelp(及びMichael Everson)とDr. Gábor Hosszúのどちらの案が適切かについて、利用者グループの間で2012年4月21日から22日にかけてハンガリーのソルトで「Egységes rovás」と題された会議が行われ、Everson-Szelp提案の方がより伝統に基づく提案であり、現代のニーズを満たしつつ歴史的建造物を記述できるという説得力のある見解が得られ、ユーザーコミュニティがどの提案を支持すべきかという問題は投票にかけられた結果でもEverson-Szelp提案に33票(67%)が賛成し、Hosszú提案はわずか2票(4%)の賛成に留まった[13]

この結果を踏まえて、最終的にAd-hocグループはUCSにおいてこの文字の「正しい」あるいは「最善の」名称について合意が得られていない可能性があると判断し、少なくとも誰もが「受け入れられる」名称を選択することが解決策であると決定したため、古ハンガリー語との混同を避けて文字体系名を単に「ハンガリー文字(Hungarian)」とする案も提出された[14]が、現在はEverson-Szelp案が採用されてブロック名も「古ハンガリー文字(Old Hungarian)」となっている。

合字に関する論争

Dr. Gábor Hosszúからは現在ハンガリー語アルファベットのセットに含まれているラテン文字dz、dzs、qwxyに対応するセーケイ゠ハンガリー・ロヴァーシュ文字の字母が含まれていないため、これらを個別の符号位置として追加[5]するよう要請があった。しかし、これらはMiklós Szondiによって、2008年にゲデレーで開催された会議「Élő rovás」の成果には含まれておらず、不適切であるとして収録を却下された[13]

同様の提案が2021年6月にもBence FEHÉR及びJózsef Álmos KATONAによって提出されたが[15]、Viktor Kovácsによって特にq、w、x、yについてはラテン文字との互換性のため後付けで提案されたものでしかなく、ハンガリー語の表記に必須の文字ではない上に用例も不十分であると指摘されている[16]

文字コード

履歴

出典

関連項目

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