公海の世界遺産
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1967年の国際連合総会における第一委員会(国際安全保障委員会)において、深海底や宇宙空間の性質を示す概念として「人類共通の遺産 (common heritage of mankind)」という文言が提唱された。ここでは公海域を国家の枠を超えた人類全体で利用し、その利益を平等に分配するという考えを示した。「人類共通の遺産」はそのまま世界遺産にも反映されるが、公海・深海の扱いについては長らく議題とならなかった[2]。
2003年になり持続可能な開発に関する世界首脳会議(ヨハネスブルクサミット)において2012年までに国際的な海洋保護区のネットワーク構築が提唱され、2010年のCOP10(第10回生物多様性条約締約国会議)で採択された愛知ターゲットでは2020年までに地球上全海洋面積の10%を海洋保護区にすることを合意[3]。国連の持続可能な開発のための2030アジェンダによる持続可能な開発目標(SDGs)では、「持続可能な開発のために海洋資源を保全し、持続的に利用する」と定めた。
これをうけIUCNは「Global Marine and Polar Programme(世界海洋・極地プログラム)」を立案し、主催する世界自然保護会議で海洋保護区について検討を開始[4]。国際連合環境計画(UNEP)によると海洋保護区は特定の国の領海・排他的経済水域(EEZ)内と公海部を合わせ、2014年時点ではヨーロッパの面積に相当する3%までは達成したが[5]、その後は思うように進展していない現実がある。
ユネスコでは2009年に施行された世界海洋デーを前に、2008年から「World Heritage Marine Programme(世界遺産海洋プログラム)」を始動して「Marine World Heritage(海の世界遺産)」の登録を推進しており[6]、組織内に政府間海洋学委員会を持つこともあり、MAB計画での生物圏保護区(日本語通称:エコパーク)による海洋保護区制定も含め多角的な検討に入ったが、制度的により厳正保護を求める世界遺産での運用が望ましいとの方向性となった。
また、生物多様性条約が制定され自国領海内の深海域における微生物など生物資源の確保は確約されたが、公海深海の権益は確立しておらず、そこへ到達することができる国だけが利益を享受できる格差が生じており(厳密には内陸国にはその機会さえない)、公平を期すための保護が求められ、公海の世界遺産が一役買う可能性を秘めている[7]。
候補地
南極
その他の公海
極地遺産
前述までの公海の世界遺産候補は、海という場所の性質上、自然遺産が前提であったが、文化遺産の諮問機関である国際記念物遺跡会議(ICOMOS)が南極と北極にある人類の痕跡を顕彰すべく「極地遺産」(Polar Heritage)を提唱している。両極地は天然資源の探査と開発という共通の歴史があり、北極圏では先住民の足跡に加え(ノルウェーのアルタの岩絵、スウェーデンのラポニア地域、デンマークの世界文化遺産としてグリーンランドのアーシヴィスイト=ニピサット、氷と海の間のイヌイットの狩場が北極圏内にある)、北極海域の石油プラットフォームのような産業遺産もある(公海上にあっても設置した国の所有権益がある)[13]。
公海を通過する可能性
現在、アイルランドが19世紀に敷設された大西洋横断電信ケーブルを暫定リストに掲載させるべく準備している[14]。 現状ではバレンシア島にある陸上の施設や記念碑以外に、カナダのニューファンドランド島側との共同推薦を目指し調整中だが[15]、海底ケーブルそのものを構成資産とした場合、大西洋の海底という公海を通過することになる。

