大いなる遺産

チャールズ・ディケンズの小説 From Wikipedia, the free encyclopedia

大いなる遺産』(おおいなるいさん、原題: Great Expectations)は、イギリスの文豪チャールズ・ディケンズ長編小説1860年から1861年にかけてディケンズ自らが編集を行った週刊雑誌『All the Year Round』の誌上において発表された。ディケンズの代表作である。

概要 大いなる遺産 Great Expectations, 作者 ...
大いなる遺産
Great Expectations
初版第1巻の扉ページ(1861年7月刊行)
初版第1巻の扉ページ(1861年7月刊行)
作者 チャールズ・ディケンズ
イギリスの旗 イギリス
言語 英語
ジャンル 教養小説犯罪小説
発表形態 雑誌掲載
初出情報
初出オール・ザ・イヤー・ラウンド英語版』(1860年12月 - 1861年8月)
刊本情報
出版元 チャップマン&ホール英語版
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概要

孤児である主人公ピップがその少年時代から青春時代を回想のうちに語るといった半自叙伝的な形式を用いており、これはまたディケンズがその経験を元にして書いた半自叙伝的な小説である。

サティス・ハウスでのジョーの行動を恥ずかしく思うピップ(Francis Arthur Fraser画)

あらすじ

第一部

フィリップ・ピリップ(愛称:ピップ)は7歳の孤児。1812年のクリスマス・イブに彼は亡き両親と兄弟姉妹の墓を訪れる。そこで彼は、逃走中の囚人と偶然出くわし、「食べ物とヤスリを持ってこなければ殺す」と脅される。翌日、ピップは義兄のジョー・カージェリーの道具の中からやすりを盗み、クリスマス・ディナー用のパイとブランデーも持ち出して、囚人のもとへ届ける。

その晩、ピップの家では、ハンブルチョック叔父やウォプスル牧師らを招いて、クリスマスの食事会が開かれていた。ピップは罪悪感に耐えながら席についていた。姉がパイを振る舞おうとしたそのとき、兵士たちが現れる。彼らはジョーに手錠の修理を依頼する。ジョーとピップは兵士たちとともに湿地へ向かい、逃亡中の囚人を捕まえる手助けをする。そこでは、囚人が顔に傷のあるもう一人の脱走者と取っ組み合いをしていた。やがて最初の囚人は、自分が食べ物を盗んだのだと告白し、ピップの疑いを晴らしてくれる。

数年後、ミス・ハヴィシャムという裕福だが世捨て人のような老嬢がいた。彼女は朽ち果てた屋敷、サティス・ハウスに住み、結婚式当日に花婿に捨てられて以来、いまだ古びたウェディングドレスを身にまとっていた。そんなミス・ハヴィシャムが、ガージェリー家の親戚であるパンブルチュック氏に、訪問する少年を探してほしいと頼む。 ピップは彼女を訪ね、養女エステラと出会い、恋に落ちる。だがエステラは冷たく高慢で、その態度はミス・ハヴィシャムによって意図的に育まれたものだった。ある日の訪問で、別の少年がピップに殴り合いの喧嘩を挑み、ピップは簡単に打ち負かす。エステラはその様子を見ており、試合のあとピップに口づけを許す。 ピップはその後も定期的にミス・ハヴィシャムを訪ね、やがてジョーの徒弟になることが可能な年齢に達するまでそうして過ごした。

ジョーはピップの最後のサティス・ハウス訪問に同行し、ミス・ハヴィシャムはピップに、鍛冶屋の徒弟になるための金を与える。ジョーの助手、ドルジ・オーリックはピップに嫉妬しており、ジョーの妻も嫌っていた。ある日、ピップはジョーに半休を願い出ると、オーリックは「またえこひいきだ」と不満を漏らす。ジョーは、オーリックにもその日は休んでよいと告げる。

だがピップとジョーが家を留守にしているあいだに、ジョーの妻が何者かに襲われ、重傷を負う。彼女は話すことも働くこともできなくなってしまった。現場に残されていた凶器の足かせを見て、ピップはかつて自分が逃走中の囚人を助けたときに外した、あの足かせではないかと不安になる。寝たきりとなったジョーの妻は、以前のようにピップに当たり散らすこともできなくなる。やがて、ピップの元同級生・ビディが彼女の世話を手伝うために家へやってくる。

ピップが徒弟になって四年ほどたったころ、弁護士のジャガーズ氏が現れ、彼に告げる。ピップに匿名の後援者から資金が与えられ、紳士としての教育を受けられることになったのだと。ピップはその後援者がミス・ハヴィシャムに違いないと思い込み、ロンドンへ旅立つ前に、彼女のもとを訪ねる。

第二部

ミス・ハヴィシャム、エステラ、ピップ(1901年、H.M.Brock画)

ピップが初めて足を踏み入れた都市ロンドンでの体験は衝撃的なものだった。そこは、彼が思い柔らかなではなく、ごみと汚れに満ちた場所だった。ピップは、ミス・ハヴィシャムのいとこであり、彼の教育係となるマシュー・ポケットの息子、ハーバート・ポケットとともに、バーナーズ・インで暮らし始める。ハーバートは、かつてピップがサティス・ハウスで拳を交えたあの少年だった。

彼はピップに、ミス・ハヴィシャムが婚約者にだまされ、見捨てられた経緯を語って聞かせる。またピップは、同じくマシュー・ポケットのもとで学ぶ仲間として、粗野だが貴族の家に生まれたベントリー・ドラムルと、より感じのよい青年スタートップにも出会う。ジャガーズはピップに生活費を渡し、必要な金銭面の世話をする。ある日ピップはジャガーズの家を訪れ、彼の家政婦モリーと出会う。彼女は元囚人だった。

ジョーがバーナーズ・インのピップを訪ねてきたとき、ピップは彼と一緒にいるところを人に見られるのを恥ずかしく思う。ジョーはミス・ハヴィシャムからの伝言を伝える。フランスで教育を受けていたエステラがミス・ハヴィシャムのもとを訪れるというのだ。ピップはエステラに会うために再びサティス・ハウスを訪れ、ミス・ハヴィシャムからその恋をけしかけられる。しかし、彼はジョーの家を訪ねようとはしなかった。そして、あのオーリックが今やミス・ハヴィシャムの使用人として雇われているのを見て不安を覚える。ピップがそのことをジャガーズに話すと、彼はオーリックの解雇を約束する。ロンドンに戻ったピップとハーバートは、お互いの恋の秘密を打ち明け合う。ピップはエステラを慕い、ハーバートはクララという女性と婚約していた。その後、エステラは社交界に出るため、リッチモンドへ送られる。

ピップとハーバートは浪費を重ね、借金を抱えるようになっていた。やがてピップの姉が亡くなり、ピップは葬儀のために村へ帰郷する。ピップが二十一歳になり成人を迎えると、年五百ポンドという一定の収入が与えられることになる。ピップはジャガーズの事務員ジョン・ウェミックの助けを借り、ハーバートの将来を助けようと密かに彼を船舶仲買業者クラリッカー商会に就職させる計画を立てる。ピップはエステラを伴ってサティス・ハウスを訪れるが、そこでエステラとミス・ハヴィシャムは、エステラの冷淡さをめぐって激しく口論する。ロンドンでは、ドラムルがエステラに乾杯の辞を捧げるのを見て、ピップは憤りを覚える。その後、リッチモンドで開かれた舞踏会で、ピップはエステラがドラムルと親しげに会う場面を目にし、彼に関わるなと忠告する。しかしエステラは「彼を欺くことにためらいはない」と冷ややかに答えるのだった。

ピップが二十三歳の誕生日を迎えてから一週間後、彼は自分の後援者が、かつて教会の墓地で出会った囚人、アベル・マグウィッチであることを知る。マグウィッチは捕らえられた後、ニューサウスウェールズに流刑となったが、そこで自由を得て財を成していた。しかし、イギリスに戻れば死刑に処される身である。それでも彼は、すべての成功の動機となったピップに会うため、危険を冒してピップのもとを訪ねてきたのだった。

登場人物

  • フィリップ・ピリップ
    愛称はピップ(Pip)
    赤ん坊のうちに両親と死別。姉夫婦と暮らす。
  • ジョー・ガージャリー
    ピップの義兄で、鍛冶屋。妻ジョージアナの尻に敷かれている。
  • ジョージアナ・マライア・ガージャリー
    ピップの姉。
  • ビディ
  • ドルジ・オーリック
  • エイベル・マグウィッチ
    ピップが助けた囚人。偽名はプロヴィス。
  • コンペイソン
  • ミス・ハヴィシャム
  • エステラ
  • マシュー・ポケット
  • ハーバード・ポケット
    ハヴィシャムの館でピップと決闘してのされるが、ロンドンへ来たピップと親友になる。

日本語訳

本作を題材とした作品

映画

これまでに度々映像化されている。

1917年版
サイレント映画、ジャック・ピックフォード主演
1934年版英語版
日本では『脱獄鬼』のタイトルで上映され、その後『大いなる遺産[脱獄鬼]』のタイトルでビデオが発売された[1]
1946年版

アカデミー賞2部門(撮影賞【白黒】美術監督賞・美術装置賞)受賞

1998年版
翻案として舞台を現代アメリカに移している。
2012年版
日本では劇場未公開でWOWOWで放送された[2][3]

テレビ

1974年版英語版
テレビ映画として作られた。劇場公開はされていない。
1989年版英語版
全6回のテレビミニシリーズとして作られた。英国での放映は1991年。
1999年版英語版
テレビ映画として作られた。
本作は高い評価を受けてプライムタイム・エミー賞 作品賞 (ミニシリーズ部門)にノミネートされた。
2011年版英語版
全3回のテレビミニシリーズとして作られた。
2023年版英語版
全6回のテレビミニシリーズとして作られた。

舞台

  • 1990年宝塚歌劇団で上演された。

その他

  • 爆笑問題カーボーイ:過去に「少年ピップ」という本作のパロディコーナーが行われていた。
  • サウスパーク:「ピップ・ピリップ」という同名のパロディキャラクターが登場する。また、本作のシナリオと登場人物を大胆に脚色・改変・翻案したエピソード「名作劇場大いなるピップ英語版」も制作された。
  • 犬いなる遺産:1999年の映画『The Duke』の邦題。

脚注

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