18世紀後半の江戸では、吉原遊郭が武士や町人にとって大きな娯楽・社交の場であった。瀬川の身請け金は莫大な額とされ、高利貸しの経済力が如実に示される事件としても注目を集めた。こうした巨額の金銭取引は、当時の遊女売買や吉原の仕組みを象徴的に示すものといわれる[9]。
鳥山検校は盲人階級として当道座に属し、検校という高位により金融業を営む特権を得ていた。そのため武家よりも経済的に強い立場にあり、身分秩序とは別の軸で社会的実権を握った例として知られている[11]。本作はこうした身分の交錯を背景に、愛と金がもつれ合う人間模様を浮き彫りにしている。