孤独感
From Wikipedia, the free encyclopedia
理論的枠組み
類型
孤独感の類型としては、社会的孤独感と情緒的孤独感の区別が広く用いられる[7]。
社会的孤独感
社会的孤独感は、所属感や仲間関係、地域や集団とのつながりの不足に関わる孤独感である。友人関係、近隣関係、地域参加、職場や学校での関係など、より広い社会的ネットワークの欠如や弱さと関係づけられることが多い[7]。
情緒的孤独感
情緒的孤独感は、親密で信頼できる特定の他者との結びつきが欠けているときに生じる孤独感である。配偶者、恋人、家族、親友などとの親密な関係の喪失や欠如と関連づけられることが多い[7]。
研究や論者によっては実存的孤独に言及する場合もあるが、これは人間存在の有限性や他者と完全には共有しえない自己のあり方に関わる概念であり、社会的孤独感・情緒的孤独感ほど定義や測定が安定しているとはいえない。したがって、孤独感研究の中心的分類としては前二者がより一般的に用いられる[1][5]。
社会的孤立との区別
関連要因
孤独感に関連する要因としては、親密な他者との死別や離別、転居、転職・離職、失業、病気や障害、家族関係や職場・学校での人間関係上の問題、生活困窮などが挙げられている[1]。これらは、ライフイベント、健康状態、対人関係の質、経済的不安定といった複数の側面にまたがって孤独感と関わると考えられている[1]。また、青年期・若年成人期と高齢期の双方で孤独感が問題となりうることが指摘されている[1][8]。
日本の内閣府による全国調査でも、孤独感に影響を与えた出来事として、「家族との死別」「一人暮らし」「転校・転職・離職・退職(失業を除く)」「人間関係による重大なトラブル」「心身の重大なトラブル」などが挙げられている[8]。
デジタル機器やソーシャルメディア利用と孤独感との関係については、関連が示される研究や調査はあるものの、その関係は利用時間だけで一義的に説明できず、利用目的、対人関係の質、既存の孤独感の程度などによって異なると考えられている。日本の内閣府調査でも、スマートフォンの使用時間が長い層で孤独感が高い傾向が示されているが、そこから直ちに単純な因果関係を導くことはできない[8][6]。
有病率・分布
孤独感は特定の年齢層に限られた現象ではなく、青年期、成人期、高齢期のいずれにもみられる。世界保健機関(WHO)の社会的つながり委員会は、世界では約6人に1人が孤独を経験しているとし、とくに若年層では約5人に1人、低所得国では約4人に1人と、より高い水準がみられるとしている[2][9][10]。
日本の内閣府による令和6年の全国調査では、孤独感が「しばしばある・常にある」と回答した人の割合は全体で4.3%であり、20歳代では7.4%、30歳代では6.0%で、若年層で比較的高かった[8]。さらに、「しばしばある・常にある」「時々ある」「たまにある」を合わせると、約4割が何らかの孤独感があると回答している[8]。このことから、孤独感は高齢者のみならず、若年成人を含む幅広い層で重要な課題となっている[8][2]。
健康への影響
測定
対応・介入
孤独感への対応としては、単に他者との接触回数を増やすことだけでなく、関係の質の改善、所属感の回復、相談しやすい環境の整備、地域参加の促進、心理社会的支援などが検討されている[6][17]。孤独感は主観的経験であるため、客観的な接触機会の増加がそのまま改善につながるとは限らない[6][1]。
近年の系統的レビューでは、介入の効果は一様ではないものの、心理的支援、社会的スキル形成、複数の目的を組み合わせた介入は比較的有望とされている[18][19]。また、医療、福祉、教育、職場、地域活動、デジタル技術など複数の領域をまたぐ取組が、孤独感の低減や社会的つながりの強化に資する可能性があるとされる[2]。
公衆衛生と政策
孤独感と社会的孤立は、近年、公衆衛生および社会政策上の課題として国際的に重視されている。世界保健機関(WHO)は、2025年に公表した社会的つながり委員会報告において、孤独と社会的孤立が健康、福祉、社会全体に重大でありながら見過ごされがちな影響を及ぼすとし、社会的つながりを身体的健康や精神的健康と並ぶ重要課題として扱う必要性を示した[2][10]。
日本では、2020年代以降、孤独・孤立が政策課題として本格的に扱われるようになった。政府は孤独を主観的概念、孤立を客観的概念として区別しつつ、相互に関連する問題として整理している[20][21]。また、孤独・孤立対策は人生のあらゆる段階で何人にも生じ得る問題への対応として位置づけられている[22]。
政府の対応としては、孤独・孤立対策ウェブサイトの整備、全国調査の実施、相談支援体制の整備、官民連携プラットフォームの構築などが進められた。さらに、2023年に孤独・孤立対策推進法が成立し、2024年に施行された。これに基づき、孤独・孤立対策重点計画が2024年6月11日に策定され、2025年5月27日に改定された[22][23]。重点計画では、基本方針の提示に加え、相談支援、人材育成、官民連携、地域における支援体制の整備などが総合的・計画的に進められる施策として位置づけられている[23]。
