小ザブ川
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| 小ザブ川 | |
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| 所在 | |
| 国 | イラン、イラク |
| 特性 | |
| 水源 | |
| • 所在地 | イラン、ザグロス山脈 |
| • 標高 | 3,000 m (9,800 ft)approx. |
| 河口・合流先 | |
• 所在地 | ティグリス川(キルクーク県) |
• 座標 | 北緯35度14分17秒 東経43度26分11秒 / 北緯35.23806度 東経43.43639度座標: 北緯35度14分17秒 東経43度26分11秒 / 北緯35.23806度 東経43.43639度 |
| 延長 | 400 km (250 mi)approx. |
| 流域面積 | 22,000 km2 (8,500 sq mi)approx. |
| 流量 | |
| • 平均 | 197.8 m3/s (6,990 cu ft/s) |
| • 最大 | 3,420 m3/s (121,000 cu ft/s) |
| 流域 | |
| 主な支流 | |
| • 左岸 | バーニ川、カラ・チュラン(Qala Chulan)川、Rubar-i-Basalam川 |
小ザブ川(しょうザブがわ、Little Zab/Lower Zab)はイランとイラクを流れる河川である [補足 1] 。イランに源流を持ち、イラクのクルディスターンにあるアル=ザブのすぐ南でティグリス川に合流する。およそ400キロメートルの長さを持ち、流域面積は約22,000平方キロメートルである。河水の源は降雨と雪解け水であり、そのために春に流量のピークを迎え、夏から初秋にかけて流量が最少になる。小ザブ川には2つのダムが設けられており、水量をコントロールするとともに、灌漑用水の供給と水力発電を行っている。ザグロス山脈には少なくとも前期旧石器時代から人が住んでいたが、小ザブ川における最初期の考古学的遺跡であるバルダ・バルカ(Barda balka)は中期旧石器時代に年代づけられる。以降の全ての時代において、小ザブ川流域には人が住んでいたことが証明されている。
小ザブ川はイランにあるザグロス山脈の海抜約3,000メートルの位置から湧き出ている[2]。上流域ではその流路はザグロス山脈の主要な山々の連なりによって定まっており、これに並行して概ね北西から南東へ流れている。流れが変わるのはこれらの山脈が途切れる山峡においてのみであり、こうした場所では急激に方向が変わる[3]。ドゥカン(Dukan)の南で平野部へと入って概ね西進し、アルトゥン・コプリの町よりやや上流の地点で南西へと向きを変える。そしてアル=ザブの町のそばでティグリス川と合流する[4]。ほとんどの支流はドゥカンより上流で小ザブ川に合流する。その中で最も大きいものはバーニ川(Baneh)とカラ・チュラン川(Qala Chulan)であり[3]、ラニヤ平野で数多くの小さな支流が小ザブ川に合流する。そのうちの一部は現在ではドゥカン湖に水没している[5]。
小ザブ川の長さについては380キロメートル[6]、400キロメートル[7]、および456キロメートル[2][8]という異なる推計値がある。小ザブ川のごく一部はイランとイラクの国境線となっており、下流域ではイラクのアルビール県とスレイマニヤ県の境界を構成している。川の水源は雪解け水と降雨であり、その結果として春(2月~3月)に流量のピークを迎える。流量が最少となるのは7月から8月の間である。小ザブ川の平均流量(毎秒)は197.8立方メートル毎秒であり、流量の最高記録は3420立方メートル毎秒である。年間平均流量は7.2立方キロメートルである[7][9][10]。古来、暴れ川として知られ、中世のアラブの地理学者たちは小ザブ川と大ザブ川を「悪魔が取り付いている」と表現している[1]。
流域
小ザブ川の流域は21,475-22,250平方キロメートルの範囲にわたる[2][11]。ドゥカン・ダムが建設された場所の下流に限れば、11,700平方キロメートルである[9]。流域の大部分(74パーセント)はイラクの領内にあり、残りはイランにある[11]。小ザブ川流域の北側は大ザブ川の流域に接し、南はアドハイム川およびディヤラ川の流域に面している。並走する石灰岩の山脈であるザグロス山脈は標高3,000メートルを超える。水による浸食によって小ザブ川の河谷とザグロス南西の山麓が砂利と砂の混合物の層で満たされている。ラニヤ平原は小ザブ川流域で最大の河谷であり、Shahrazor背後にあるイラク領内のザグロスで2番目に大きい河谷でもある[12][13]。
小ザブ川は多種多様な気候帯および生態系を通過する。川沿いの年間降水量は上流から下流へかけて、イラン領内のザグロスにおける1,000ミリメートル以上から、アル=ザブ近郊のティグリス川との合流点における200ミリメートル未満まで減少する[14]。平均気温も同様の勾配を描き、ザグロス山脈の河谷は一般的に山麓地域よりも冬の寒さが厳しく、夏は山麓地域の方が暑い[15]。ザグロスの高地では3つの異なる生物地理区(Terrestrial ecozone)が見られる。森林限界は標高およそ1800メートルの位置にあり、それ以上の標高では草(herbs)と灌木(shrubs)が主たる植生となる。標高1800メートルから610メートルの間ではオーク(Quercus aegilops)の森が支配的であったが、元来の植生はほとんど失われている。小ザブ川の河谷は好水性の植物(water-loving plants)と、排水が無い湿地帯(かつては排水が無くマラリアが流行していた)に特徴づけられている[16][17][18]。山麓、特にアルビールの平野はくまなく耕作されているが、自然の植生が疎らに残されており、Phlomis属(genus)の草が繁茂している[19]。
河川改修
小ザブ川にはイラクの領域に2つのダムが設けられており、イラン領内でも現在1つが建設中、2つのダムが計画されている。イラクにある2つのダムがドゥカン・ダムとディビス・ダムである。ドゥカン・ダムは1957年から1961年にかけて建設されたマルチプルアーチダムで、ドゥカンの町の上流にある。このダムの高さは河床(海抜516メートル)から116メートルで、全長360メートルである。このダムの機能は小ザブ川の流量をコントロールし、その貯水池(ドゥカン湖)に灌漑用水を蓄積するとともに水力発電によって電力を供給することである。ドゥカン・ダムの最大貯水量は6.97立方キロメートルである[9][20]。ドゥカン・ダムの形成は数多くの考古学的遺跡を水没させるため、考古学調査と緊急調査(Rescue archaeologyが浸水予定地域で実施された。特に重点的に行われたのはテル・シェムシャラとテル・バズムシアンである[21][22]。ディビス・ダムはティグリス川と小ザブ川の合流点からおよそ130キロメートル上流に位置し、1960年から1965年にかけて建造された。このダムは全長376メートル、幅23.75メートルの規模を持つエンバンクメントダム(フィルダム)であり、キルクークに灌漑用水を供給している[23]。現在イランで建設中のダムはサルダシュト・ダムである。建設は2011年に開始され、完成すれば高さ116メートルのエンバンクメントダムとなり、120メガワットの電力を生産する。イランはさらに、サルダシュト・ダムの上流に水力発電用のShivahan DamとGarjhal Damを建設することを計画している[24][25]。


