特徴的なのは、全編において書簡の内容のみで物語を構成している点である。1930年代前半に親友の間でやり取りされた往復書簡の内容をそのまま映し出している。
かつてアメリカで画廊を経営して成功した2人の親友。アメリカに残ったユダヤ人と、ドイツに帰国したドイツ人。2人は絵に描いたような親友であったが、やがてナチスドイツが台頭することによって、状況が一変する。友情が引き裂かれていく様やナチスに対するそれぞれの思惑、そして最後には届かなかった手紙へと繋がる。
政治的背景についての細かい記述は本書においては一切ないが、その分想像力が擽られる。ナチスにより状況が一変させらける状況を、全て読み手に任せているのが特徴で、手紙の内容はシンプルであり、更には冷酷でもある。