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山岳波

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山岳波(さんがくは)とは、重力を復元力とする波(重力波)の一種で、気流が山を越えた際に励起される[1]。山の風下側で上下に振動し波打つように伝播するため、波状の雲として観測されることもある。

山岳波を図示したもの
一旦山を超えた気流は冷却されて下降するものの、山麓付近で温められることから再度上昇し気流が上下に振動する様になる。

山岳波は強大なエネルギーを持ち、航空機が巻き込まれると空中分解する危険があるため、航空業界では山から十分な距離を取って飛行する対策が取られている(動力を持たないグライダーでは逆に山岳波を利用して航続距離を伸ばすことがある)。

メカニズム

安定成層した大気中で風が山に当たり上昇すると、気塊が膨張して断熱冷却する。このため、気塊の気温は周囲の大気の気温よりも低くなり(密度が高くなり)、擾乱のポテンシャルエネルギーを得る。山の下流側では、周囲よりも密度の高い気塊は下降し、擾乱のポテンシャルエネルギーは擾乱の運動エネルギーへと変換される。その後、ある程度下降すると今度は断熱昇温のために周囲よりも気温が高くなり再び上昇を始める。これの繰り返しにより山の風下側で気流の上下振動が現れる。

静的安定の空気が速度 M で山を越えるとき、山岳波の固有波長 λ は

[1]

で表される。ここで NBV はブラント・ヴァイサラ振動数(英語版)である。風が強いほど、また静的安定度が弱いほど、波長は長くなる[1]。

さらに、フルード数 Fr3 は山岳波の性質を規定する[1]。

[1]

と表され、W は山脈の幅である[1]。

静的安定度が強い、または風が弱いときは となり、波長は山脈の幅よりはるかに短く波は小さいため、生じはじめた波は山の尾根に遮られたり、独立峰に近い山では迂回したりする[1]。

静的安定度が中程度、かつ波長が山脈の幅の2倍に等しいときには となり、共振して強い山岳波が生じる。レンズ雲や乱気流も生じやすい[1]。このとき、 が成り立ち、山岳波の振幅 z1 は山の高さ H の半分に近くなる[1]。

静的安定度が弱く、かつ風が強いときは となり、波長は山脈の幅よりはるかに長く、波の振幅は小さくなるものの、風下側には乱流が尾を引く[1]。

静的安定度が中立状態のときは となり、風下側には大きな乱流が生じる[1]。

山岳波に伴う雲

山岳波に伴って、山頂部に被さり、また浮かぶような笠雲(傘雲)が生じることがある。同様に山地の風下側の山岳波の「山」の部分には、吊るし雲、ローター雲、ロール雲が生じることがある。いずれもレンズ雲の一種である[1][2]。風下山岳波のレンズ雲は、十分に湿った空気がそこにあるとき、上下振動に伴い波の「山」の部分で空気が断熱冷却されながら持ち上げられて生じる。続く波の「谷」の部分では、引き下ろされて雲が消失する[2]。

風下山岳波の「山」の下付近の低空には、帯のように長く伸び丸みを帯びたローター雲が生じることがある。これは山岳波に付随するローター状の循環が生み出すもので、水平軸をもち高速で回転している。激しい乱流を伴うため、低空を飛行する航空機にとっては危険となる[2]。

脚注

参考文献

関連項目

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