広告漫画
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広告デザイン
広告内で1編の漫画作品として成立させたもののほか、既存の漫画作品のコマやキャラクターカットを素材としたものがある[1]。広義には、コマ割りや吹き出しといった漫画の表現技法を応用した広告全般を指す[1]。日本では、1860年代以降に広まったポンチ絵をルーツとし、時代を経るごとに現代的な「漫画」の要素が取り入れられ、1920年代に岡本一平や麻生豊が制作した広告が流行したことで、広告漫画・漫画広告の語が定着した[2][3]。同時期には、同様の広告手法が先行して確立した欧米の広告事例も研究された[2][3]。英語圏では、カリカチュア・アド、コミック・ストリップ・アドなどと表現される[1][4]。
広告としての目的を果たすため、漫画の内容は商品・サービスの性能や利点の説明に重きが置かれ、説明役の人物を登場させたり、商品・サービスを利用する場面が描かれることが多い[5]。一つの広告内で完結するように、4コマ漫画や1ページ漫画といった短いものが一般的だが、掲載媒体によっては数ページにわたる構成を採ることもある[5]。ストーリー展開について、串間努は、体験談広告と近似性があるとし、塚田優は、ハード・セルの傾向があると指摘する[6][7]。
既存の漫画作品・キャラクターを利用する場合には、当該作品・キャラクターの知名度そのものも広告効果として機能する[1][2]。日本における既存の漫画作品を利用した初期の事例では、1933年に朝日新聞に掲載された「只野凡児」の広告漫画シリーズがある[2][3]。麻生豊が同紙で連載していた『只野凡児 人生勉強』の登場キャラクターである只野凡児が仁丹などの商品を利用する場面を描いたものであり、日本における本格的なキャラクター広告のはしりとされる[2]。オリジナルの広告漫画においても、同一の世界観・キャラクターを継続利用することで、ある種の作品群のように扱われることがあり、串間はその典型例として『日ペンの美子ちゃん』を挙げる[6]。広告閲覧者に漫画作品の世界観やキャラクター設定の知識があることを前提としたパロディもあり、2013年にソフトバンクが展開した「ホワイトジャックによろしく」広告シリーズでは、佐藤秀峰の『ブラックジャックによろしく』のコマを用い、吹き出しのセリフを広告文に差し替える手法が採られた[8][9]。このほか、漫画を記号化してデザインに取り入れた例として、塚田は、師岡とおるが2013年から2018年にかけて手掛けた「痴漢撲滅キャンペーン」のポスター広告を挙げる[9]。
また、漫画の広告のために漫画を利用することもあり、電子コミックが普及した2000年代以降は、出版社や電子書籍販売サービスがプロモーション対象とする漫画のコマを抜き出したバナー広告を制作することが一般化している[10]。この場合は、広告閲覧者に購読意欲を抱かせるよう、作品中の印象的な場面やインパクトの強いコマをバナーに表示させていく[11]。
受容と発展
ポンチ絵といわれた時代からの伝統的な掲載媒体として新聞があり、朝日新聞には、1892年に擬人化された酒樽が広告主である酒蔵の清酒の品質を褒めたたえる広告、1902年に仁丹を紹介する3コマ漫画が掲載されていることが確認できる[3]。広告漫画の草創期に影響力のあった広告主として足袋製造の福助があり、同社が1927年に「福助足袋の生ひ立ち見物」と題する工場見学漫画を岡本一平に制作させ、当時の主要各紙に掲載したことが話題を呼び、池部鈞、田河水泡といった人気漫画家に広告漫画の制作を依頼する動きが他社にも生じていく[3]。広告漫画が流行していく中、1934年には朝日新聞主催の「広告漫画展」が開かれる[3]。
第二次世界大戦後は、新聞に代わり雑誌の位置づけが高まっていく[2]。串間は、1950年代以降、通信販売・通信講座を手掛ける企業による週刊誌や月刊誌への出稿が目立つとする[6]。1958年の第1回日本雑誌広告賞では、やなせたかしによる日本麦酒(サッポロビールの前身)の広告漫画『ビールの王さま』が入賞する[12]。1960年にはロゼッタ洗顔パスタの「白子さんと黒子さん」、1972年には学文社の「日ペンの美子ちゃん」といった広告漫画由来のキャラクターが生まれていく[6]。1980年代に入ると、福武書店が進研ゼミの勧誘用ダイレクトメールへの漫画掲載を始める[7][13]。また、商品パンフレットを漫画形式で制作する企業も現れるなど表現形態が広がっていき、1988年には広告漫画の制作を主業とするトレンド・プロが創業する[14]。1994年には文部省が教育現場での漫画活用を打ち出したことで漫画を掲載した教科書・教材が広がるとともに、同年には環境庁が環境白書の漫画版を制作するなど、1990年代半ばには官公庁でも漫画を利用した広報物を制作することが珍しくなくなる[14][15]。
2000年代以降は、インターネット広告としての活用が増加していき、パソコン、フィーチャーフォン、スマートフォンといった情報端末に適応した表現手法も研究されていく[16][17]。2010年代には、SNSで拡散されやすい広告漫画であることも重視されるようになり、ナレーションや効果音などの動画表現を取り入れたマンガ動画といわれる手法も生まれていく[5][18]。