托卵女子
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カッコウなどに見られる托卵の習性になぞらえ、別の男性の子を妊娠・出産し、実子と偽って夫に育てさせる妻を呼称するようになった[6]。もともとは2ちゃんねるの不倫・浮気板で使われるネットスラングだったが、近年では一般化し、ニュースなどでも「托卵女子」などの言葉が使われている[7]。
母親も夫とともに養育している場合、生物界でみられるような「托卵」を行っているのは子の実の父親のみなので厳密には正しくないとも考えられるが、子の実父(所謂間男)を托卵男と呼ぶことは少ない。また、俗語としての「托卵行為」はあくまでも欺瞞によって実子と思いこませて育てさせる行為を指すため、夫の同意のもと行われた精子提供等で遺伝上の父親が異なる子を出産した場合は含まれず、夫が側室の子を正室に養育させる場合[注釈 1]や愛人の子を正妻が養育する場合[注釈 2]でも夫を托卵男や托卵夫とは呼ばない。故意による新生児取り違えも、他人に我が子を育てる養育コストを払わせるという点では広義の托卵とも言えるが、自身も同様に他人の子を育てる養育コストを負う点から一般的に托卵とは呼ばれない。
2005年にイギリスで行われた研究では、夫婦の子であるはずの25人に1人、約4%の割合で父親が夫ではないと発表したが、亀山早苗は産婦人科医への取材によると、6%から10%程度だとしている[8][9]。1997年の研究では9~17%だとされる[10]。 また、「托卵」の割合は経済水準と密接に関わっているとする研究もあり、最底辺所得層では約30%とされる[11]。そのほか、学術的な調査ではないが、博報堂が運営するインターネットメディアによる2016年の調査では、日本の20代~60代の既婚女性435名につき、6.0%(20人弱に1人)が「夫以外の男性とつくった子供を夫に内緒で育てている」と回答した[12]。
一方、レスター大学遺伝学部のトゥリ・キングとマーク・ジョブリングはよく引用される10%という確率を「都市伝説」と語る。1678人を対象に行われた姓と染色体上の固有の特徴との関連性の調査では、事前に父子関係の疑いがない家族が実際には父子不一致である確率は1-2%だった[13]。また前述の2005年にJournal of Epidemiology and Community Health で発表された父子不一致0.8~30%のレビューは1950年代から1980年代に行われた研究を元にしており、現在では遺伝子検査の方法や手段の不正確さから信頼性は低いとされている[14]。30%の数字を記録した研究はランダムではなく、既に父子の関係性に疑惑を持つ母集団による検査結果である[15]。
出産後に真相が判明し裁判になるケースもある[16][17][18]。
托卵が発覚・判明する要素・手段として以下の物がある。
- 容姿:子供が父親に似ていない場合。あくまで主観的な物であるため、明らかな差異(人種的な違いなど)が無い限りはあくまで「疑惑」レベルのものである。
- 夫の性的不全や性交無し:夫の無精子症などによる性的不全が発覚した場合、当然子供は他の男性の子供である可能性が高い。また妊娠時期に性交が無かった場合や確実性の高い避妊措置を講じていた場合も同様である。
- 血液型:ABO式血液型など両親の血液型の組み合わせにより発現しうる子供の血液型は限定されるので、それ以外の血液型の場合は托卵の可能性が高い。ただしABO式血液型のみでは実の父親が夫と同じ血液型である場合や、A(AO)型とB(BO)型の夫婦(子供は全ての型になり得る)などは判定が困難であるため、確実な親子鑑定では他のタイプの血液型を含めた複雑な検査が必要になる。
- DNA型鑑定:現在最も確実な親子鑑定手段であり、法的効力も高い。出生前の胎児であっても、母親の血液から検査が可能である。
例
歴史上
かつては科学的に父と子の親子関係を証明する手段がなかったこともあり、高位の人物や著名人に対する出自をめぐる疑惑は多い。ただし本人や父母の政敵による妄言流布や中傷に端を発した俗説も多く、信憑性が乏しいものも多い。また、後継者を必要とする王族の事情や愛人を許容する文化などの時代背景から夫が公認・黙認していたケースもあり、その場合は「托卵」には含まれないとも言える。
- 公式にはピョートル3世とエカチェリーナ2世の第1皇子だが実の父親はエカチェリーナの愛人セルゲイ・サルトゥイコフ伯爵とする説がある。
- 公式にはルイ13世とマリー・テレーズ・ドートリッシュの長子だが実の父親は宰相リシュリューやマザランとする説があった。ルイ13世はホモセクシャルないしバイセクシャルであったとされる。ただしマリー・テレーズがルイ14世を懐妊した時期はマザランはイタリアにおり後者は現在は否定されている。
- 公式にはルイ・ボナパルトとオルタンス・ド・ボアルネの3男だが、父母が不仲、かつオルタンスに多数の愛人がいたため生前から父との親子関係を疑問視されていた。実の父はナポレオン(母オルタンスの義父、かつ父ルイ・ボナパルトの兄)との噂まであったが現在は否定されている。
- ミノナ・フォン・シュタックベルク
- ベートーヴェンの教え子であったヨゼフィーネ・ブルンスヴィックとその2番目の夫であるクリストフ・フォン・シュタックベルク男爵の娘。本当の父親はベートーヴェンであるとする説がある[19]。
- カール・ヨーゼフ・ブレンターノ
- ベートーヴェンの後援者であったアントニー・ブレンターノとフランツ・ブレンターノ夫妻の息子。本当の父親はベートーヴェンであるとする説がある[20]。
ローマ法・ゲルマン法は妻の不貞行為を夫よりも重く処罰するのが伝統であった[21]。近代フランス法も同様であり、フランス革命の理論的指導者ジャン=ジャック・ルソーの説明は以下の通り。
- 豊臣秀吉と側室・淀殿との子。秀吉は好色で知られながら正室・高台院をはじめ側室たちとの間に子が無かった事から性的不能が疑われ、当然そこから秀頼の托卵説が当時から囁かれている(淀殿は父母を秀吉により失っているため、豊臣家の世継ぎに他人の子供を据える事で復讐するという十分な動機も存在する)。父親は大野治長らが疑われている。
現代
女優の喜多嶋舞が俳優の大沢樹生との間で妊娠したとして1996年に結婚し、1997年に長男を出産。2005年に離婚し親権は大沢が持ち養育していたが、長男が16歳のとき、父親が大沢以外の男性であると判明。その後に喜多嶋舞が再鑑定を申し出たが大沢が拒否したともしている[24]。
なお、日本の現行法上、DNA型鑑定によってこの「托卵」行為が判明しても、嫡出否認の訴えの期間制限を過ぎると父子関係の存否を争うことは原則できない[25][26][27]。このことから、「1年バレなければ養育費GET[28]」などと喧伝されることがあるが、子自身に罪は無いため身分関係の早期確立をはかる意味であって、托卵女子の特権を公認する趣旨ではないため、離婚後の子の監護費用の分担を夫に求めることが権利濫用に当たるとされた事例がある(平成23年3月18日最高裁判所第二小法廷判決集民第236号213頁)。また妻に対する不法行為による損害賠償や不当利得返還請求の可否は別途考慮する必要がある。