旅立ちのラストダンス
2024年の香港映画
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『旅立ちのラストダンス』(たびだちのらすとだんす、原題:破·地獄、英語:The Last Dance)は、2024年に公開された香港のドラマ映画である。監督・脚本は陳茂賢(アンセルム・チャン)。
香港の殯儀業界を題材に、道教の葬儀儀式「破地獄」を通じて、生と死、家族の絆を描く。黄子華(ダヨ・ウォン)と許冠文(マイケル・ホイ)の共演が話題となり、香港で歴代広東語映画興行収入第1位を記録した[1]。
| 旅立ちのラストダンス | |
|---|---|
| タイトル表記 | |
| 繁体字 | 破·地獄 |
| 粤語拼音 | Po3 Dei6 Juk6 |
| 英題 | The Last Dance |
| 各種情報 | |
| 監督 | アンセルム・チャン |
| 脚本 | アンセルム・チャン |
| 出演者 |
ダヨ・ウォン マイケル・ホイ ミシェール・ワイ チュー・パクホン キャサリン・チャウ ポール・チン エレイン・ジン 韋羅莎 梁雍婷 白只 鍾雪瑩 |
| 主題歌 | 《普渡眾生》/林家謙 |
| 撮影 | 潘耀明(HKSC) |
| 配給 | 英皇電影 |
| 公開 |
|
| 上映時間 |
127分(本編) 140分(加長版) |
| 製作国 |
|
| 言語 | 広東語 |
| 製作費 | 4000万香港ドル |
| 興行収入 |
1億7000万香港ドル(香港・澳門) 2億1000万元人民幣(中国大陸) 4100万元新台幣(台湾) 1882万令吉(マレーシア) |
本作は、ハワイ国際映画祭では『ラスト・ダンス』(The Last Dance)のタイトルで上映された。
日本では映画祭では『ラスト・ダンス』の邦題で上映されたが、2026年5月8日に『旅立ちのラストダンス』としてディレクターズカット版(加長版)を劇場公開[2][3]。
あらすじ
ウェディングプランナーの魏道生(黄子華)は、COVID-19禍による業界の低迷で債務を抱え、葬儀会社「長生店」を引き継ぐことになる。伝統的な道教の喃嘸師傅(葬儀司祭)である郭文(許冠文)と出会い、最初は価値観の違いから衝突を繰り返すが、さまざまな葬儀を通じて生と死の本質を考え、郭文の家族との絆を深めていく。
キャスト
- 黄子華(ダヨ・ウォン) - 魏道生(トウサン)役。負債を抱え、葬儀業界に転身した元ウェディングプランナー。
- 許冠文(マイケル・ホイ) - 郭文(マン道士)役。伝統に厳格な道教の喃嘸師傅。
- 衛詩雅(ミシェール・ワイ) - 郭文玥(マンユッ)役。マン道士の娘で救急隊員。父の女性蔑視的態度に苦しむ。
- 朱栢康(チュー・パクホン) - 郭志斌(パン)役。マン道士の息子。家業を継ぐことを強要される。
- 周家怡(キャサリン・チャウ) - 曾美玉(メイユッ)役。トウサンの長年の恋人。
- 秦沛(ポール・チン) - 明叔(ミン)役。引退する葬儀社のオーナー。
- 金燕玲(エレイン・ジン) - 蓮姐(リン)役。葬儀社近くの飲食店のオーナー。
- 韋羅莎
- 梁雍婷
- 白只
- 鍾雪瑩 (ジョン・シュッイン) ほか
製作
企画・構想
陳茂賢監督は、10年前から生と死を題材にした映画を構想していたが、技術的にも精神的にも未熟だと考えていた。COVID-19パンデミックの間に身近で多くの死を目撃したことでこのテーマと再び向き合い、脚本執筆を開始した。監督自身の祖母の死も、脚本に影響を与えたという。脚本執筆に先立ち、監督は1年半にわたり葬儀業界の関係者にフィールドリサーチを行い、実話を物語に組み込んだ。当初の脚本はより「暗い」トーンだったが、主演の黄子華らからの意見を受けて、コメディの要素を加えつつ軽妙なドラマに調整された。
主演には、高い演技力を持つコメディアン出身の俳優を起用したいと考え、2023年に大ヒットした『毒舌弁護人〜正義への戦い〜』(毒舌大狀)の黄子華と、『ゴッドスピード』(一路順風)での演技が評価されていた許冠文を選んだ。衛詩雅に対しては、脚本執筆の初期段階から、女性が「破地獄」を執り行うという最終局面を演じて欲しいと考えており、彼女はこの役作りのために1年間他の仕事をすべてキャンセルして儀式の練習に専念した。
撮影
主要撮影は2024年1月から3月にかけて行われた。葬儀社が密集する紅磡地区(クック・ストリート、バルクリー・ストリート)や、撮影に初めて開放された東華義莊、萬國殯儀館などでロケーション撮影が実施された。萬國殯儀館では、夜間に弔問ホール、地下室、霊安室などでの撮影が行われた。
俳優陣は役作りのため、実際の葬儀を観察し、遺体の洗浄や dressing などの技術を3ヶ月間学んだ。80歳を超える許冠文は基本的な「破地獄」の儀式に加え、南音や二胡も習得した。衛詩雅と朱栢康は、撮影開始前の9ヶ月間、「破地獄」の儀式を練習した。
テーマと文化的背景
監督の陳茂賢によれば、本作の最も伝えたかったメッセージは「生きることの意味を、死を通して見る」ことである。パンデミックという集団的な死の体験を経た香港社会において、映画は「死の練習」と「集団の癒し」をもたらす作品として受け止められた。
物語の核となる道教儀式「破地獄」は、香港で発展した独特の文化的慣習である。監督は「オリジナルの道教に、香港にもともと存在した土着の習慣や信仰が融合した『香港スタイル』とも言うべき独特のもの」と説明している。この儀式と、伝統の中に存在する女性蔑視的なタブー(例:月経中の女性は穢れているという考え)への批判的考察が、物語の重要な軸となっている。映画は、こうした伝統と現代的な価値観(フェミニズム、革新)の対比を通じて、家族の絆や世代間の対話を描き出している。
公開・興行収入
本作は、2024年10月11日に第44回ハワイ国際映画祭でワールド・プレミアされた後、11月9日に香港で劇場公開された。
日本では、2024年10月の第37回東京国際映画祭および同年11月の香港映画祭「Making Waves」で上映された。
香港では公開後、記録的なペースで興行収入を伸ばした。
- 公開20日で興収1億香港ドルを突破(香港映画史上最短記録)。
- 公開23日で、2024年の香港公開華語映画で最高興収を記録した『トワイライト・ウォリアーズ 決戦! 九龍城砦』の記録を更新。
- 公開29日で、2023年の『毒舌弁護人〜正義への戦い〜』が持つ香港歴代華語映画興行収入記録(1億2200万香港ドル)を更新。
- 最終的に、香港・マカオでの興行収入は1億7000万香港ドルに達し、香港映画史上最高の興行収入を記録した。
2025年4月4日(清明節)には、約13分間の未公開シーンを追加した140分の「加長版」(導演版)が香港などで公開された。
日本での上映など
過去の映画祭では通常版と加長版のそれぞれが上映されている。
- 2024年10月 第37回東京国際映画祭「ワールド・フォーカス」部門で上映[4]
- ※ジャパン・プレミア(通常版126分を『ラスト・ダンス』の邦題で上映)
- 2024年11月 香港映画祭2024 Making Wavesで上映(東京・大阪)[5](通常版126分を『ラスト・ダンス』の邦題で上映)
※ワールド・プレミア(加長版139分版を『ラスト・ダンス <ディレクターズカット>』として世界初上映)
加長版は上映時間の差だけでなく、通常版ではカットされた場面が追加されており、通常版では登場しない人物も存在する[7]。
受賞とノミネーション
2025年の第48回香港電影金像奨では、作品賞、監督賞、脚本賞、主演男優賞(黃子華、許冠文)、主演女優賞(衛詩雅)など、最多となる18部門にノミネートされた。これは、『孫文の義士団』(十月圍城)(2009年)と並ぶ史上最多ノミネート記録である。
また、香港から第98回アカデミー国際長編映画賞への出品作品に選出された(ノミネートには至らなかった)。