春 (小説)
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「文学界」創刊ごろの同人たちとの交流をモデルとして、若者たちが現実と理想に悩み、苦しみながら、それぞれの道を見つけて歩き出すまでを描いたもの。著者初の自伝的小説。これより前の時期を描いた作品に、『桜の実の熟する時』がある。
新聞連載時と自費出版時では挿絵が異なり、新聞連載時の挿画担当は名取春仙の手によるもので、いわゆる文人画風の趣のある筆致である。春仙は漱石や森田草平、長塚節らが朝日新聞で連載した際にもイラストを担当している。一方で自費出版に掲載された挿画は和田英作のもので、非常に緻密な洋風画に仕上げている。和田は藤村の明治学院時代の後輩であり、藤村の詩集で挿画を担当していた[1]。
漱石は高浜虚子宛て私信で「最後の五、六行は名文に候。作者は知らぬ事ながら小生一人が感心致候。...あの五、六行が百三十五回にひろがったら大したものになるべくと藤村先生のために惜しみ候」と評価した[2]。
あらすじ
教え子である勝子を愛したために職を捨てて旅に出た岸本捨吉だったが、同人雑誌の創刊の話を聞き、戻ってくる。だが、捨吉やその同人たちを待っていたのは、俗世からの打破と自由を求めようとする、苦闘や葛藤、そして挫折であった。そしてそんな中、捨吉が心から尊敬していた先輩である青木が自殺し、衝撃を受ける。
一方勝子は結婚していってしまったが、まもなく死んでしまう。捨吉は葛藤の末に作家として生きることを決意し、一切を捨てて東北の学校へ赴任する。