芝居小屋で『三日太平記』が演じられた。本能寺の変、武智光秀が主君小田春永へ起こした謀反を主題とした人気狂言である。いよいよ本能寺春永討死の場。回り舞台が転換すると、そこは本能寺の裏手にある藪だたみ。手負いになった森蘭丸が光秀の軍兵相手に大立ち回りを演じ、劇はクライマックスに達する。そんなとき、客席にいる田舎のお婆さんが持っていた袋から、孫への手土産の生きたイナゴが逃げ出し、舞台はイナゴだらけ、芝居は滅茶苦茶である。芝居を中断した役者たちがぼやく。「えらいイナゴやで。」「せやけど、なんでこんなに出てくるねん。」「大かた、客が青田やからやろ。」