泉門
From Wikipedia, the free encyclopedia
| 泉門 | |
|---|---|
|
| |
|
出生時の頭蓋骨を外側から見た図。前側頭泉門(Sphenoidal fontanel)と後側頭泉門(Mastoid fontanel)が分かる。 | |
| 概要 | |
| 表記・識別 | |
| 英語 | Fontanelle |
| ラテン語 | fonticuli cranii[1] |
| MeSH | D055762 |
| グレイ解剖学 | p.196 |
| TA | A02.1.00.027 |
| FMA | 75437 |
| 解剖学用語 | |
泉門(せんもん、英語: fonetanelle, fontanel)[2]または頭蓋泉門(とうがいせんもん)[1]は、乳幼児期に頭蓋骨に見られる解剖学的構造である。頭蓋冠を構成する頭蓋骨同士の縫合が起こる前に見られ、薄い膜性の組織が存在する[3]。泉門は出生時に産道を通るときや出生後に脳が成長するときに頭蓋骨の伸長・変形を可能にするという点で重要である[4]。脳が成長するより前に骨化により縫合が起こってしまった場合、頭蓋骨縫合早期癒合症と呼ばれる[5]。
閉鎖
頭蓋骨を構成する骨は乳幼児期にはまだ線維性の結合組織によって連結しており、これらによって分娩時や乳児の脳の成長時には柔軟に頭蓋骨が変形できるようになっている[4]。分娩時は頭蓋骨のそれぞれの骨が重なり合うが、このような過程はモールディング(英語: molding)と呼ばれる[6]。新生児には通常では6つの泉門が存在しており、以下に示す無対の大泉門・小泉門とそれぞれ左右に存在する前側頭泉門・後側頭泉門がある[7]。
- 大泉門は発達中の乳幼児の頭蓋骨の左右の前頭骨と左右の頭頂骨の間に存在する菱形の張った部分である[8]。大きさは前後で約4cm、左右で約2.5cmとなっている[8]。将来的には冠状縫合と矢状縫合、前頭縫合となる部分の間を連結する[8]。鎖骨頭蓋異形成症では頭蓋骨の形成に異常が生じることで大泉門が出生時に通常より大きかったり一生閉じなかったりする[9]。乳児診察では大泉門の触診や聴診を行うことがある[7]。幼児期を過ぎると大泉門の部分は3つの骨(前頭骨[注釈 1]と左右の頭頂骨)が合わさる地点となり、ブレグマと呼ばれる[10]。
- 小泉門は三角形状で、将来的に矢状縫合とラムダ縫合となる部分の間を連結する[8]。左右の頭頂骨と後頭骨に囲まれている部分であり[2]、成長に伴い縫合が起こると三点の交わる点はラムダと呼ばれる[10]。
- 頭の側頭部には2つの比較的小さい泉門が存在し、前側を前側頭泉門、後ろ側を後側頭泉門という[9]。前側頭泉門は蝶形骨・頭頂骨・側頭骨・前頭骨に囲まれた部分で後側頭泉門は側頭骨・後頭骨・頭頂骨に囲まれた部分である[9]。
ヒトにおいては泉門の閉鎖は以下のように成長に伴い進行する[4]。泉門を含め頭蓋の大部分は膜性骨化により、間葉系結合組織が骨組織へと軟骨組織を介さずに変化する[2]。
- 小泉門が出生後2-3か月で閉鎖
- 前側頭泉門が出生後約6か月程度で閉鎖
- 後側頭泉門が出生後6-18か月で閉鎖
- 大泉門が一般的に最後で、1-3歳の間に閉鎖
拍動
疾患
膨隆
大泉門の膜に緊張がかかり、膨隆している場合、頭蓋内圧亢進が起こっていると考えられる[15]。頭蓋内圧亢進では大泉門膨隆以外に頭部の異常な拡大などを示すこともある[16]。このような頭蓋内圧亢進時には打診をすると共鳴音を聴取し、これをマキューイン徴候[17]と呼ぶ[7]。以下のような原因によっても大泉門膨隆が起こり得る[15]。
- 頭蓋骨縫合早期癒合症 – 頭蓋骨の縫合がふつうより早く起こってしまう[18]。
- 脳炎 – 炎症により脳浮腫が起こる。多くは感染を原因とする。
- 水頭症 – 脳室に液体が蓄積する。
- 髄膜炎 – 脳を覆う髄膜の炎症により起こる。
陥没

拡大
泉門が拡大していたり閉じるのが遅かったり閉じなかったりする場合、以下のような原因が考えられる[20]。
稀な原因として、以下の状況も考えられる[20]。
第三の泉門
大泉門と小泉門以外の比較的大きい泉門が3つするような破格(解剖学的変異)が存在する。第三の泉門が存在する確率は約6.3%であるとという報告がある。ダウン症候群や先天性感染の一部で比較的多いとされている。そのため、第三の泉門が見られる場合関連する疾患を見逃さないように注意が必要である[21]。
ヒト以外の動物
霊長類
類人猿においては泉門は出生後すぐに癒合する。チンパンジーでは大泉門が生後3か月までに完全に閉鎖する[4]。このようなヒトと他の霊長類における閉鎖速度の違いは脳の成長速度の違いが一因である[4]。例えば、1歳時の脳の容積はヒトでは成人の約50%とかなり未熟であるが、チンパンジーでは既に80%程度になっている[4]。
犬
イヌにおいては泉門開存(英語: open fontanelle, persistent fontanelle)と呼ばれる頭頂部の頭蓋骨が閉鎖しない異常な状態があり、深刻になり得る[22]。泉門開存ではしばしば脳室に液体(脳脊髄液)が異常に蓄積する水頭症を伴い、脳や脳周囲の組織に圧がかかることで頭部がドーム状に見える[22]。
ただし、全ての泉門開存において水頭症が併発するわけではなく、基本的には泉門開存を起こしている犬も健康に成長する[22]。このような場合でも頭部外傷では脳に重篤な損傷を起こしやすくなる可能性はある[22]。
チワワにおいては種として泉門開存が特徴的であり、モレラと呼ばれる[22]。特にヒトにおける大泉門に相当する位置の泉門開存を指していうこともある[23]。かつてはこのようなモレラの特徴がチワワの純血種を表す特徴であるともみなされていた[23]。アメリカンケネルクラブはチワワの犬種標準として頭蓋骨をドーム状と定めているものの、モレラの有無は問わないとしている[24]。一方で、国際畜犬連盟(FCI)においては泉門開存の存在は犬種標準にて欠格条項であるとしている[25]。