浅葱色
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名称と色調
『大辞泉』では、浅葱を「緑がかった薄い藍色」と説明している[1]。『日本大百科全書』では、薄い葱の色という意味であるが、実際には薄青、薄藍、薄緑、水色などを指すと説明している[2]。『日本国語大辞典』では、「浅葱・浅黄」の第一義として、薄い葱の葉の色に由来する、緑がかった薄い藍色、薄青、白青を挙げている[3]。
『国史大辞典』は、浅い黄色による「浅黄」、黄みのある浅い青色の葱に似た色による「浅葱」、さらに浅黄・浅葱・浅木などと書いて浅い藍の浅縹を指す場合があるとして、この色名の内容は複雑であると説明している[4]。同辞典では、この浅い藍系統の色を水浅葱などと呼ぶこともあるとしている[4]。
近現代の色票では、浅葱色は青緑系の色として示される。『大辞泉』の色見本では、浅葱に16進表記で「#00a3af」、RGBで「R:0 G:163 B:175」、CMYKで「C:82 M:0 Y:30 K:11」の値が示されている[1]。また、『増補改訂版 色の名前事典519』では、JIS慣用色名としての浅葱色に、CMYKで「C:95 M:28 Y:37 K:0」、RGBで「R:0 G:137 B:158」、マンセル値で「2.5B 5/8」を示している[5]。
歴史と服制上の用例
浅葱は平安時代から用いられた色名である[2]。『日本国語大辞典』は、緑がかった薄い藍色を意味する浅葱・浅黄の用例として、『枕草子』「小白川といふ所は」の「あさきの帷子」や、『源氏物語』「乙女」の用例などを挙げている[3]。『小学館全文全訳古語辞典』でも、「浅葱」は緑がかった淡青色とされ、『枕草子』の「あさぎの帷子」の例を挙げている[6]。
服制上では、浅葱は六位以下の袍の色とされ、そのことから六位の袍、または六位の官人を「浅葱」と呼ぶこともあった[2]。『大辞泉』も、着用する袍の色が浅葱であるところから、六位の人を浅葱と称したと説明している[1]。『小学館全文全訳古語辞典』では、六位の者が着る浅葱色の袍、また転じて六位を意味する語として説明され、『源氏物語』「乙女」の例を挙げている[6]。
『国史大辞典』は、無品親王の袍の色は、無位の当色である黄色を基本とした「浅黄」であり、六位の公達の袍は、緑の当色による「浅葱」の色であったと説明している[4]。また、『餝抄』には五月以後の極熱のころに用いる浅黄の指貫を瑠璃色という記述があり、これはいわゆる水浅葱であるとしている[4]。『雁衣鈔』に見える狩衣の重ねの色目としての浅黄についても、近代にはもっぱら浅い紺系統を指すのが普通であると説明している[4]。
藍染と浅葱
浅黄との関係
「浅葱」は、薄い葱の葉の色に由来する語であるが、「葱」を「黄」と混同して「浅黄」とも書かれることがある[1]。『日本大百科全書』も、慣用では「浅黄」と書かれることが多いが、これは「浅黄(うすき)」、すなわち浅い黄色の意味ではないと説明している[2]。
一方で、古くは薄い黄色を意味する「浅黄」も存在した。『小学館全文全訳古語辞典』では、「浅黄」を薄い黄色、「浅葱」を緑がかった淡青色として区別している[6]。『日本国語大辞典』も、薄い葱の葉の色に由来する緑がかった薄い藍色としての「浅葱・浅黄」と、浅く染めた黄色を意味する「浅黄」を別に立てている[3]。同辞典は、薄い黄色の「浅黄」の用例として『延喜式』や『餝抄』などを挙げている[3]。
『日本国語大辞典』の語誌によれば、薄い黄色の意味の「浅黄」は平安時代には無品親王の着衣とされたが、確たる仮名表記が見えないとされる[3]。また、「浅葱」は「あさき」と表記される六位の袍の色で、緑がかった薄い藍色であったが、十二世紀の『今鏡』には、装束の慣例が分かりにくくなっていたことを示す記述が見えるとしている[3]。
浅葱裏と派生義
江戸時代には、田舎侍が小袖の裏に浅葱木綿を付けたことから、そのような装いを指す「浅葱裏」、または「浅葱」が、田舎侍に対する蔑称として用いられた[2]。『大辞泉』では、「浅葱裏」を、着物の裏地で浅葱色のもの、またはその裏地を付けた着物とし、さらに、多く浅葱裏の着物を着たことから、遊里で江戸勤番に出てきた野暮な田舎武士をあざけっていう語であると説明している[7]。『日本国語大辞典』も、「浅葱」を「浅葱裏」の略とし、さらに不粋・野暮であることを意味する派生義を挙げている[3]。
浅葱は、色名から転じて、江戸期の俗語・隠語や慣用表現にも用いられた。『日本国語大辞典』では、「浅葱」に、ひかえめにあっさりすること、またそのさまという意味を挙げている[3]。『故事俗信ことわざ大辞典』では、「浅葱に言う」を、さっぱりとした物言いをすること、簡単にあっさり話すこととし、薄い藍色の感じからいうと説明している[8]。また、「浅葱にやる」「浅葱にする」には、いいかげんに済ませるという意味や、駕籠かき仲間の隠語で、わざと駕籠を遅くするという意味がある[9]。
同辞典には、浅葱色の頭巾に由来する表現として、「浅葱の頭巾を脱ぐ」も見える。これは、変装用の浅葱色の頭巾を脱ぐことから正体を現すことを意味し、江戸の演劇社会の隠語とされる[10]。また、「浅葱帷子黒小袖」は、浅葱色の帷子と黒の小袖を並べた、上品な服装をいう語とされる[11]。一方、「浅葱の股引松坂縞」は、「つけのぼせ」のしゃれとして用いられた[12]。
