空気ブレーキ

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空気ブレーキ(くうきブレーキ、英語: Air Brake、compressed air brake、エアブレーキ)とは、空気を利用したブレーキ(制動装置)の一種で、圧縮空気でブレーキシリンダを動かしブレーキをかける装置である。供給源としては、コンプレッサーでエア・タンクに詰めた圧縮空気を利用することが多い。排気ブレーキとは異なる。

特徴

液圧を用いたブレーキに比べ大きな制動力が期待できるため、鉄道車両や中型・大型のトラックバスのブレーキに使用される。ブレーキを解除するとブレーキシリンダーやエアチャンバーに溜まっていたエアーが抜けるので鉄道車両ではシューッもしくはヒューッ、自動車ではプシュッというエアー音がする。

液圧ブレーキと異なり、陸上である限り存在する「空気」を外部から取り入れてブレーキの圧力媒体として用いており、この点において信頼性が高い方式といえる。しかしながら、ブレーキ管に破損があった場合、圧力が失われてブレーキが原則的に失効するのは同様である。そこで、複数の車両を連結して用いる鉄道車両においては、ブレーキ失効対策として様々な機構が施されている。

鉄道車両の空気ブレーキ

鉄道車両においては古くから空気ブレーキが主に用いられている。鉄道車両は編成を組み多数の車両が連なった状態で運転される場合が多いことから、ブレーキ弁から各車両への制御指令に様々な方式が存在し、空気指令式と電気指令式に大別される。また鉄道に関する技術上の基準を定める省令において、連結が外れて列車分離が生じた際には自動的にブレーキが作用するように定められている[1]

運転士が運転台のブレーキなどにより操作し、各車のブレーキ制御装置(ブレーキ作用装置)などが空気タンク[注 1]からブレーキシリンダへ空気を供給するというのが主な流れである。また車掌が非常ブレーキを操作する車掌弁も存在する。

指令方式による分類

指令方式については定義的には空気ブレーキの要件と無関係であるが、実情としては関連性が極めて高いためここに記す。

空気指令式

古くから用いられているもので、編成内に引き通した配管(引通し管)の空気圧によってブレーキ力の強弱を指示する方式である。直通管方式(増圧指令)とブレーキ管方式(減圧指令)の2種に大別される[2]。なお空気指令のみでは長編成における応答性に難があるため、次第に電気指令と電磁弁を併用するものが主流となった。

直通管方式

直通管の空気圧を上げることでブレーキの込めを、空気圧を下げることでブレーキの緩めを指令する方式である[2]。直通管が破断した場合、すなわち列車分離の際にはブレーキが全く作用しなくなるため、単行(一両編成)用以外の車両ではブレーキ管方式の機構(あるいは電気指令の非常ブレーキ回路)も備えている。

直通空気ブレーキ
純空気指令のブレーキシステムである。主に路面電車で使用され、単行(一両編成)用以外の車両では基本的に後述の自動空気ブレーキに相当する機構を非常用として備えている。
ブレーキ弁は管路の開閉のみを行う単純な弁が主に用いられ、空気源と直通管に直接繋がっている。ブレーキシリンダは基本的に直通管と直結されている[注 2]
後述の電磁自動空気ブレーキのように、直通管の制御に電磁弁を併用したものもある。
電磁直通空気ブレーキ
ブレーキ指令の同期性を高めるため直通管の圧力制御に電磁直通制御器と電磁弁を用いたブレーキシステムである[2]。連結両数が多い長大編成の列車でも応答性・斉一性が高く、高い減速性能が求められる電車に多く用いられた。2両編成以上の場合には常用あるいは非常用として(電磁)自動空気ブレーキ機構を備える。
ブレーキ弁にはセルフラップ弁[注 3]が用いられ、直通管ではなく制御管に繋がっている[注 4]。そして電磁直通制御器が制御管と直通管の圧力を比較するとともにその差に応じて各車に込め・緩めを指令することで直通管の圧力を制御している。ブレーキシリンダならびに直通管への給気はあらかじめ圧縮空気を充填した供給空気タンクから行われ、これの空気源として元空気管を引き通している。
ブレーキ管方式

ブレーキ管をあらかじめ加圧しておき、空気圧を下げることでブレーキの込めを、空気圧を下げることでブレーキの緩めを指令する方式である[2]。減圧で作用するため、列車分離などでブレーキ管が破断すると自動的にブレーキが作用するというフェイルセーフを有しており、この利点から直通管方式のブレーキ装置にも本方式の機構を備えている場合が多い(自動空気ブレーキ#他のブレーキ方式との併用を参照)。

自動空気ブレーキ
純空気指令のブレーキシステムである。
ブレーキ弁は単純な弁が主に用いられ、空気源とブレーキ管に直接繋がっている。
ブレーキシリンダへの給気は制御弁(三動弁)により各車の空気タンク[注 5]から行われ、この空気タンクの充填には緩め時にブレーキ管経由で行うものと、元空気管を引き通してここから行うものとがある。
電磁自動空気ブレーキ
ブレーキ指令の同期性を高めるためブレーキ管の圧力制御に電磁弁を併用したブレーキシステムである[2]
ブレーキ弁は空気源とブレーキ管に直接繋がるとともに電気接点が併設されており、各車の電磁弁がブレーキ弁と連動することでブレーキ管の給排気を速めるようになっている。制御弁による動作は自動空気ブレーキと変わらない。
なおブレーキ弁にセルフラップ弁を用いる場合もブレーキ管が直接繋げられ[注 6]、常用ブレーキにおいては差圧検出器が圧力の増減を検知するとともに各車の電磁弁に指令を出している。

電気指令式

20世紀後半以降の鉄道車両に多く用いられる方式で、電気信号によってブレーキを指令する方式である。アナログ指令とデジタル指令に大別され、電圧・電流指令、PWM指令、デジタル電気指令、シリアル伝送指令などがある[2]

電気接点のみを備えたブレーキ設定器(ブレーキ制御器)を操作し、指令の一切を電気的に制御するため応答性・斉一性が高いとともに省力化に繋がることが特長である。

非常ブレーキには独立した回路が設けられ、列車分離に備えて常時加圧式の往復引通し線が用いられる[注 7]

電気指令式空気ブレーキ

作用方式による分類

空気ブレーキの作用方式は以下の二種類がある。車両により使い分けられ、両者を併用している場合もある。

踏面ブレーキ
ブレーキシリンダ(BC)に圧縮空気を供給し、ブレーキテコ等を介して制輪子を車輪踏面に押し当てる方式。ブレーキシリンダは制動筒とも呼ばれ、現在は台車枠に取り付けるのが普通であるが、古くは車体側に装架していた。
列車速度と等しい周速度で作用するため、小さな押付力で大きなブレーキ効果が得られる[3]。他方、車輪の摩耗が早くなるほか、温度上昇に直結することから高速車両には不向きである。
ディスクブレーキ
ブレーキダイヤフラム(ゴムシリンダ)に圧縮空気を供給し、ブレーキテコを含むキャリパを介してブレーキライニングをブレーキディスクに押し当てる方式。
車輪とは別にディスクを用いるため、素材による耐熱性と構造による放熱性を確保しやすく、高速車両での使用に適している[3]。取付スペースの都合から、電動車での採用例は少ない。

関係部品

空気源

電動空気圧縮機[注 8]により圧縮空気を生成し、アフタークーラーで冷却、除湿装置で水分を除去した上で元空気タンクに貯蔵される。圧縮機の制御は調圧器(ガバナ)によって圧縮機接触器を介して行われ、また元空気タンクには安全弁が設けられている。これらは編成内の一部の車両に搭載され、各車への空気供給は下記の引通し管により行われる。圧縮空気は警笛、扉の開閉、空気ばねなどにも用いられるが、基本的に空気ブレーキ装置の一部として扱われる。

なお空気圧縮機(air compressor)はCM、COMP、CPなどと略されるが、圧縮機電動機もCMと略される[4]

引通し管

電磁直通ブレーキ装備車の肘コック配管。SAP(緑)・BP(赤)・MRP(白)の3本を備えている。(西武101系)
電磁直通ブレーキ装備車の肘コック配管。SAP(緑)・BP(赤)・MRP(白)の3本を備えている。
西武101系
電気指令式ブレーキ装備車の肘コック配管と空気ホース。MRP(白)の1本のみが通されている。(西武7000系)
電気指令式ブレーキ装備車の肘コック配管と空気ホース。MRP(白)の1本のみが通されている。
西武7000系

列車を貫通する空気管であり、以下のような種類がある[2]。他の配管と同じく、用途ごとにコック等を色分けしている。 車両間の接続には連結器[注 9]や空気ホースが用いられ、その手前には肘コックと呼ばれる締切コックが設けてある。連結部については連結器の項も参照。

元空気管(MRP:main air reservoir pipe)
元空気タンクの圧縮空気を各車(あるいは車両内の各機器[注 10])に供給する配管。主に白色で区別され、連結部においては海側・山側のどちらか一方に設けることが多い[注 11]。柴田式密着連結器では中央上に配置される。
直通空気ブレーキ装備車や貨車などを除きほとんどの車両に設けられている。MR管などと表記することもある。
ブレーキ管(BP:brake pipe)
ブレーキ指令用の配管で、増圧によってブレーキの緩めを、減圧によってブレーキの込めを指令する。無色[注 12]、あるいは赤色で区別され、連結部においては向かって右側の連結器脇に設けることが多い[注 13]。柴田式密着連結器では中央下に配置される。
自動空気ブレーキ装備車のほか、直通空気ブレーキ・電磁直通空気ブレーキ装備車においても設けている場合が多い[注 14]。非常ブレーキにのみ用いる場合もあり、特に直通空気ブレーキ用においては非常管(EP:emergency pipe)と呼ばれる。また元空気管を引き通していない場合、編成内各車への空気供給も担う[注 15]制動管とも呼ばれ、BP管などと表記することもある。
直通管(SAP:straight air pipe)
ブレーキ指令用の配管で、増圧によってブレーキの込めを、減圧によってブレーキの緩めを指令する。黄色や緑色で区別され、柴田式密着連結器にでは上側左右に配置される[注 16]
直通空気ブレーキ・電磁直通ブレーキ装備車にのみ設けられ、古くは列車管とも呼ばれた。SAP管などと表記することもある。
釣合い管(EP:equalizing pipe)
機関車において重連時にブレーキシリンダ圧力を釣り合わせるための引き通し管。無色または緑色で区別され、連結部においては元空気管の内側に配される。EP管などと表記することもある。

その他、引通し管以外のブレーキ関係の配管としてはブレーキシリンダに繋がり給排気の経路となるブレーキシリンダ管(BC管)[2]、電磁直通空気ブレーキでブレーキ弁の指令圧を電磁直通制御器に伝える制御管(CP:control pipe、CP管とも)などがある。

自動車の空気ブレーキ

自動車においては、中型以上のトラック・バスに用いられている方式である。イギリスやドイツなどの欧米ではほとんどフルエアブレーキを採用しているが、日本では応答性に優れて制動力をコントロールしやすいという理由で、油圧ブレーキと空気ブレーキの長所を組み合わせた空気油圧複合式ブレーキ(エアオーバーハイドロリックブレーキ:AOH)が用いられるが、大型車(GVW12トン以上の大型観光バス路線バストラックトレーラヘッド等)は、ウェッジ式フルエアブレーキや、フルエアディスクブレーキへの転換が進んでいる。トレーラー(台車)は昔からSカム式フルエアブレーキが採用されている。

フルエアブレーキの仕組みは鉄道車両でいえばセルフラップ式の直通ブレーキに該当する。一般にエアコンプレッサーを搭載しており、エアタンクに圧縮空気が常に貯められている。ブレーキを踏むと、リレーバルブを介し、直接ブレーキを作動させるブレーキチャンバにエアが送られる。それで、チャンバのロッドが伸び、ブレーキが掛けられる。ブレーキ管が外れたり損傷したりした場合には、まったくブレーキが効かなくなるため、通常2系統になっており、前軸グループと後軸グループで配管がわけられることが多かったが、「中期ブレーキ規制」の施行以降は「完全二重化」が義務付けられている。バタ踏み操作(ブレーキの踏み込み・ゆるめ操作を短時間に複数回行う事)を行うと、圧縮空気を大量消費してしまい、制動力が極端に低下してしまう。 エアブレーキのバタ踏み操作でエアを浪費して制動力が低下したために発生した事故が2件発生したことを受け、国土交通省2013年(平成25年)6月28日にエアブレーキの操作に関して注意喚起を行い[5]、同時にいすゞ自動車日野自動車三菱ふそうトラック・バスUDトラックスの大型車メーカー4社も、連名で注意喚起を行った[6]

日本の積載量4トン級トラックの場合、ほとんどの車種がAOHブレーキを採用している。また、日野・レンジャーいすゞ・フォワード、いすゞ・フォワードのOEMであるUD・コンドル(5代目)では、床から踵を上げて操作する「ペンダント(上吊り)式ブレーキペダルプロコントロールペダル)」を採用しているため、特に車両が揺れているときの丁寧なブレーキ操作には慣れが必要である(三菱ふそう・ファイターと4代目までのUDトラックス・コンドルはオルガン(床置き)式ペダルである)。

大型車のパーキングブレーキは、従来トランスミッションの後方にプロペラシャフトと同軸で設置されていたが(センターブレーキ)、法改正により、ホイールブレーキを直接固縛する、ホイールパーク式パーキングブレーキへ移行した。これは圧縮空気の圧力低下した場合パワースプリングでブレーキが掛かった状態になり、通常走行時にはエアを込めて解除するものである。そのため、ブレーキをかける際に大きなエア音がする。

脚注

関連項目

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