踏面ブレーキ

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踏面ブレーキ(とうめんブレーキ)とは、鉄道車両ブレーキ装置のうち、車輪踏面に作用する粘着ブレーキを指す。トレッドブレーキともいう。人力による手用ブレーキ、空気圧による空気ブレーキがある。摩擦ブレーキの一種。

東京地下鉄6000系の両抱き式踏面ブレーキ

概要

車輪のレールと接する面(踏面)に摩擦材(制輪子)を押し付けて減速させるもので、最初期から現在に至るまで最も主流として使われている方式である。

列車速度と等しい周速度で作用するため、小さな押付力で大きなブレーキ効果が得られる[1]。他方、下り勾配や高速車両での連続使用は摩擦熱が大きくなり、ブレーキ力の低下を招くだけでなく、タイヤ付車輪においてはタイヤ(車輪のリム部)の焼きばめが緩むといった欠点がある。

また車輪踏面を清掃・研磨し汚れや異物を除去する効果もあり、これによって偏摩耗による粘着力の低下(空転・滑走)や車輪 - レール間の電気抵抗増加による接地機構軌道回路への影響を抑えられるという利点もある。しかしこれもまた踏面の摩耗が早くなるため車輪の寿命が短くなることに繋がる。その他、粘着ブレーキ全般の欠点として車輪とレールとの粘着力以上の制動力は出せない(滑走が生じる)。

東京メトロ1000系の操舵台車。写真右が操舵軸で、踏面ブレーキは写真左側にのみ装備している[注 1]

これ以外のブレーキ方式としては、1960年頃にはディスクブレーキが実用化され踏面ブレーキに並ぶ主要な方式となっているが、採用していない事業者も少なからずあり、電動車用や踏面清掃用として踏面ブレーキを併用している場合も多い。そのほか補助的なものとしては電気ブレーキレールブレーキなどがある。

なお操舵台車の操舵軸においては台車枠と輪軸との変位量が大きくなるため不利であり、それまで踏面ブレーキのみ採用してきた事業者でもディスクブレーキを用いている例がある。

機構

東京地下鉄6000系の両抱き踏面ブレーキ式台車、住友金属FS378形
東京地下鉄6000系の両抱き踏面ブレーキ式台車、住友金属FS378形
同一構造で片押し式踏面ブレーキとした台車、住友金属FS523形。台車全体が小形化されている
同一構造で片押し式踏面ブレーキとした台車、住友金属FS523形。台車全体が小形化されている

空気ブレーキの場合は、ブレーキシリンダ(制動筒とも呼ぶ)の動作がブレーキテコ等を介して一定の倍率をもって制輪子に伝わる[2]。このときの倍率[注 2]ブレーキ倍率(制動倍率)という。制輪子は基本的に制輪子頭(せいりんしあたま)を介して保持され、ばねなどを用いた制輪子加減装置によって車輪踏面との平行を保っている[2][注 3]

分類

制輪子の配置により、両抱き式(クラスプブレーキ)と片押し式(シングルブレーキ)の2種類に分類される。またブレーキシリンダは客車や旧形国電に見られる車体取付のものと、台車取付のもの(台車ブレーキ)に分けられ、前者は1両に1つであるが、後者はさらに制輪子2つに1つの場合と、制輪子1つに1つの場合とがある。

また、制輪子にも様々な種類が存在する(制輪子の項を参照)。

両抱き式

1つの車輪を前後2つの制輪子で挟み込むようにする方式で、古くから用いられている方式である。両方の制輪子にブレーキシリンダを設けることはなく、前後の制輪子はリンク機構などによって連動する形となっている。

軸箱や軸受の構造に関わらず使用できるが[注 4]、構造が複雑であり部品点数が多く、当然制輪子も多い。このため保守に手間がかかるだけでなく台車全体が大形化し、重量が増えるという難点があり、近年では片押し式が多くなっている。他方、(特にブレーキ力を踏面の制輪子のみに頼る車両では)制輪子の減りが遅いという利点もあった。

構造

一般的な台車ブレーキでは、台車枠の外側端に外向きでブレーキシリンダが取り付けられ、これは水平テコを介して外側のブレーキテコに繋がる。外側のブレーキテコは制輪子を保持するとともに、制輪子ツリを介して台車枠にも繋がっている。内側のブレーキテコは台車枠から吊られ、制輪子を保持している。内外2つのブレーキテコは下端がブレーキ引棒によって接続されており、この引棒はネジになっていてターンバックルの原理で車輪との隙間を調整する機能を持つ[注 5]

ブレーキシリンダが作用する(ピストンが伸びる)と水平テコの回転を介して外側のブレーキテコが内側に引っ張られ、外側の制輪子を車輪に押し当てる動きをとる。このとき制輪子ツリとの兼ね合いにより下端側は逆方向に動き、ブレーキ引棒を外側に引っ張ることで内側のブレーキテコが作用し、内側の制輪子も車輪に押し当てられる。この機構を前後左右に4組設けており、ブレーキテコの下端部分はブレーキ梁によって左右で接続されている。

片押し式

1つの車輪につき1つの制輪子を設ける方式である。一般的な2軸台車では内側から外側に押す形で用いられる。ユニットブレーキでない場合は前後の制輪子を連動させて1つのブレーキシリンダで作用させるものが多いが、前後の制輪子にそれぞれブレーキシリンダを設けている例もある。また、ブレーキシリンダに代わってブレーキダイヤフラムと称するゴムシリンダ[注 6]を用いるものもある。

車軸軸受にコロ軸受を用いることが必須であり、制輪子の動く横方向を含む荷重を考慮しない平軸受では使用できない。また軸箱支持装置の案内部が摺動面によるもの(軸箱守式や円筒案内式など)でもブレーキ時に摺動面の摩擦が大きくなるため乗り心地の悪化に繋がることがある。

軸箱支持装置の変遷とともに、次第に片押し式が主流となっていった。

構造

前後の制輪子を連動させる場合の構造は、両抱き式を背中合わせにしたような形をとる。一方のブレーキテコが水平テコを介してブレーキシリンダに繋がるとともに制輪子ツリを設けてあり、もう一方は単に引棒によって動作するのみである。左右で線対称のものと点対称のものとがある。ブレーキ梁は持たないものが多い。

それぞれの制輪子にブレーキシリンダを設ける場合は各々にブレーキテコと制輪子ツリが設けてあり、基本的にはそれぞれ独立した構造をとるが、隙間調整機構が一体となっているものもある。

またディスクブレーキ等との併用を前提にテコを廃して構造を簡素化した直動式のものも存在する。制輪子ツリに吊られた制輪子頭をブレーキシリンダが直接押す形となり、ブレーキ倍率は1.0と低くなる。

ユニットブレーキ

ユニットブレーキとは、ブレーキシリンダ・ブレーキテコ・自動隙間調整器・制輪子取付部などの必要部品をひとまとめにし、全て組み立てた状態で台車枠に取り付けられるブレーキ装置をいう。

構造の簡素化、小形化、軽量化、整備時間の短縮などが図れる利点があり[3]2000年代以降の車両はユニットブレーキを採用しているものが多い。基本的には片押し式で用いられるが、両抱き式として用いている場合もある。また専用のシリンダを併設して駐車ブレーキ機能を設けたものは駐車ユニットブレーキと称する。

歴史

採用時期の早いものでは営団地下鉄(現・東京地下鉄)において1961年(昭和36年)登場の日比谷線3000系1964年(昭和39年)登場の東西線5000系にセミユニットブレーキ方式が採用されている[4]。これは台車構造の簡素化と保守性の向上が目的とされている[4]。営団地下鉄ではこれ以降、ユニットブレーキ方式の開発を継続し、1988年(昭和63年)登場の日比谷線用03系や東西線用の05系において本格的な採用が開始されている[4]

また、日本国有鉄道(国鉄)では1980年(昭和55年)に新製した201系試作車の一部車両においてユニットブレーキが採用されている[5]。ただし、量産車では不採用となり、試作車においても量産化改造時に撤去している[5]

JRでは、電気機関車EH200形貨車コキ107形コキ200形などで採用されている。

脚注

関連項目

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