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亜酸化窒素

窒素酸化物の一つ From Wikipedia, the free encyclopedia

亜酸化窒素(あさんかちっそ、英語: nitrous oxide)とは、窒素酸化物の1種である。組成式はN2Oで表され、IUPAC勧告に従った命名法では、酸化二窒素(さんかにちっそ、英語: dinitrogen oxide)と呼び、一酸化二窒素(いっさんかにちっそ、英語: dinitrogen monoxide)も使用される。

概要 物質名, 識別情報 ...
亜酸化窒素
Nitrous oxide's canonical forms
Nitrous oxide's canonical forms
Ball-and-stick model with bond lengths
Ball-and-stick model with bond lengths
Space-filling model of nitrous oxide
Space-filling model of nitrous oxide
物質名
識別情報
3D model (JSmol)
バイルシュタイン 8137358
ChEBI
ChEMBL
ChemSpider
DrugBank
ECHA InfoCard 100.030.017 ウィキデータを編集
E番号 E942 (その他)
Gmelin参照 2153410
KEGG
RTECS number
  • QX1350000
UNII
国連/北米番号 1070 (圧縮)
2201 (液体)
性質
N2O
モル質量 44.013 g/mol
外観 無色の気体
密度 1.977 g/L (気体)
融点 −90.86 °C (−131.55 °F; 182.29 K)
沸点 −88.48 °C (−127.26 °F; 184.67 K)
60.82 mL /100 mL ( 24°C)
溶解度 エタノール、ジエチルエーテル、硫酸に溶ける
log POW 0.35
蒸気圧 5150 kPa (20 °C)
磁化率 −18.9·10−6 cm3/mol
屈折率 (nD) 1.000516 (0 °C, 101.325 kPa)
粘度 14.90 μPa·s[3]
構造
直線型, C∞v
0.166 D
熱化学
標準モルエントロピー S⦵ 219.96 J/(K·mol)
標準生成熱 (ΔfH⦵298)
+82.05 kJ/mol
薬理学
N01AX13 (WHO)
投与経路 吸気
薬物動態学:
0.004%
5 分
呼吸器
危険性
GHS表示:
支燃性・酸化性物質
Danger
H270
P220, P244, P282, P317, P336, P370+P376, P403, P410+P403
NFPA 704(ファイア・ダイアモンド)
引火点 不燃性
安全データシート (SDS) Ilo.org, ICSC 0067
関連する物質
関連する窒素酸化物 一酸化窒素
三酸化二窒素
二酸化窒素
四酸化二窒素
五酸化二窒素
関連物質 硝酸アンモニウム
アジ化物
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ヒトが吸入すると、陶酔させる作用があることから、笑気ガス(しょうきガス。英語: laughing gas)とも言い、笑気と略されることもある。また麻酔作用もあるため、全身麻酔で医療用途で用いており、世界保健機関においては必須医薬品の一覧にも載せられている。近年は他に優れた麻酔薬が登場したことなどから、少なくとも日本においては、医療用途は減少の一途を辿っている[4]。

この他にも、工業用途では燃料の発火促進のために使われる。また調理用途では、食材をムース状に加工するエスプーマと呼ばれる調理法に使用される。

しかし、陶酔感を得るために亜酸化窒素を乱用する者が後を絶たないことから、日本では、2016年(平成28年)2月18日に医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律(薬機法)に基づき「一酸化二窒素(別名:亜酸化窒素)」が指定薬物に指定された[5]。そして、日本では同月28日から、医療などの目的以外に亜酸化窒素を製造・販売・所持・使用することが禁止されるに至った[6]。

なお、亜酸化窒素には、地球の大気に放出されると、紫外線によって分解されて一酸化窒素を生成し、オゾン層を破壊するという作用がある。

歴史

笑気ガスは1772年、イギリス人の化学者ジョゼフ・プリーストリーが発見した。亜酸化窒素を吸入すると軽く酔ったような感じになることから、当時はパーティーなどを盛り上げるために使用していた。ところが1795年、こちらもイギリス人化学者のハンフリー・デービーが亜酸化窒素に麻酔効果があることを証明し、これから笑気麻酔としての用途が開けることになった。

笑気の語源には、亜酸化窒素を用いた手術中に、麻酔によって弛緩した患者の表情が笑っているように見えたからという説が有力である[要出典]。

製造

工業的な製法としては硝酸アンモニウム熱分解法が古くから用いられるほかアンモニア酸化法、スルファミン酸法の3つがある。[7][8]

実験的な製法としては鉄に硝酸を反応させるものがある。最初は酸化窒素が生じるが、さらに還元されて亜酸化窒素になる。[8]

硝酸アンモニウム熱分解法

硝酸カリウムと硝酸ナトリウム1:1の共融化合物を246~267℃に保持し、撹拌しながら80%の硝酸アンモニウムを一定の流量で滴下しながら分解させる。

反応によって得られたガスは亜酸化窒素純度は97~98%であり、不純物として、窒素、アンモニア、酸化窒素、二酸化窒素を含む。

この粗製亜酸化窒素ガスから水を冷却器で凝縮留去後、強アルカリ水溶液、強酸で洗浄することにより、不純物が除去された精製亜酸化窒素が得られる。

アンモニア酸化法

アンモニアを触媒により300~350℃で酸化して亜酸化窒素を得る。

副反応により窒素、一酸化窒素、二酸化窒素が生じる。

反応に際しアンモニアの爆発限界15~28vol%(空気中)14.8~79vol%(酸素中)を避ける必要がある。[9]

希釈ガスとしては水蒸気、あるいは反応後凝縮した水を再利用したアンモニアが混じった水溶液が挙げられる。JP 3174369B2

反応生成物中の亜酸化窒素濃度が低いことと、触媒の寿命が短いことが課題だったが、触媒の改良により現在は工業化されている。

不純物を含む粗製亜酸化窒素ガスを加圧下で水に吸収させ、減圧下で水より放散させることにより、酸素、窒素を分離して高純度の亜酸化窒素を得る。

スルファミン酸法

スルファミン酸と硝酸を80~100℃で反応させて亜酸化窒素を得る。

特徴

常温常圧で、無色で反磁性の気体。香気と甘味がある。麻酔作用がある。形式的には次亜硝酸の無水物に相当するが、常温において一酸化二窒素は反応性の低い気体であり水と反応することはない[10][11]。またハロゲンとは反応しない。しかし高温では助燃性を発揮し、アルカリ金属および有機物などは一酸化二窒素中で燃焼する[11]。82.05kJ/molのエネルギーを持つ発熱性の物質であり、爆発事故も報告されているが、条件はよくわかっていない。[12]窒素原子の酸化数は形式的には+1であるが、亜酸化窒素の構造を考慮すると、末端の窒素に酸化数0を、中央の窒素に酸化数+2を割り振ることができる。

大気中にわずかに含まれ、濃度は約 310 ppb である。主な発生源としては、燃焼、窒素肥料の使用、化学工業(硝酸などの製造)や有機物の微生物分解などがあげられる。

肥料の使用や化学物質の製造過程で出る亜酸化窒素は、2009年時点でオゾン層を最も破壊する物質であることを、アメリカ海洋大気庁(NOAA)の研究チームが突き止めた[13]。

二酸化炭素の約300倍(100年GWP(100年間で発揮する温室効果))の温室効果ガスであり、京都議定書でも排出規制がかけられた。アメリカ合衆国環境保護庁(EPA)は2009年、温室効果ガスの危険性認定(英語版)で、亜酸化窒素が公衆衛生と公共の福祉を脅かす汚染物質の1つであると宣言した[14]。

日本においての規制は前述のとおりであり暴露に関する規制はないが、アメリカ合衆国では長期間の職業的暴露により自然流産率が高くなるとの報告に基づき、通常の日8時間・週40時間労働の場合の環境濃度の上限が50 ppmに定められている[15]。

工業的用途

  • 内燃機関のブースト用として
亜酸化窒素は熱分解されると大気よりも酸素分圧が高い混合気体となる。このため燃料・空気の混合気に添加する事で過給器を使用したのと同様の効果を発揮する。また亜酸化窒素の気化熱により、燃料・空気の混合気を冷やす中間冷却器のような効果も発揮する。第二次世界大戦中に軍用機に使用され、近年はレースカーなど一般にも普及している。
ヒドラジン系に変わる物質としてエタノールとの組み合わせが検討されている。自己着火(発火)性がないため点火装置が必要になるなど構造が複雑になるが、毒性が低いため安全性が高く扱いやすいこと、融点が低く宇宙空間でも凍結しないことが利点とされている。アマチュアロケット愛好家向けのハイブリッドロケットエンジンの、酸化剤としても用いられる。
また、亜酸化窒素は82.05kJ/molのエネルギーを持つ物質であり、ヒドラジンや過酸化水素と同様触媒により分解させることで一液式推進剤としても使える。
比推力は燃焼室圧力10bar、膨張比81で202秒であり、ヒドラジンの235秒よりわずかに劣る。燃焼室温度は最高867℃を記録している。[16]実際には180秒程のものが開発されている。[17]
  • さまざまな食材をムース状に加工するエスプーマ調理用のガスとして

医療用途

手術の際の全身麻酔に用いる。歯科治療時の鎮静用として酸素とともに吸入を行う。これにより麻酔注射やドリル研磨、抜歯などの恐怖心が緩和される。近年[いつ?]は全身麻酔においては、あまり用いられなくなりつつある[4]。

研究事例
2014年の治療抵抗性うつ病に対する二重盲検試験では、24時間後に40%の人が症状を半分以上軽減した[18]。ケタミンと同じく、NMDA受容体を阻害することで、抗うつ作用を発揮しているとみなされている[18]。

乱用

笑気ガスを吸引すると、多幸感・酩酊状態になることから、2011年からイギリスで「風船ガス」「シバガス」として乱用されるようになり、日本でも2015年から規制の強まった脱法ドラッグに代わり乱用されるようになる。「自転車のパンク修理用」などと目的を偽り販売されていたが、2016年2月に医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律(薬機法)の指定薬物となったことから、医療用など目的以外での販売や所持、使用が禁止された[19]。

世界でも窒息や死亡事故が報告され、乱用目的での使用がイギリスで禁止されるなど、規制が進められているが[20]、その後も乱用による事故が発生しており、吸引が原因で亜急性連合性脊髄変性症を発症した例もある[21]。

亜酸化窒素(笑気ガス)を扱った架空作品

  • 007_カジノロワイヤル - 最後の対決で笑気ガスを噴霧する装置としてルーレットの台が登場する。回転盤が浮遊し、ガスを噴霧した後に壁に衝突し爆発する。その時にカジノにいた客は大笑いをする以外は普通に活動しているが、実際の亜酸化窒素を吸引したものとは異なる。
  • 完全犯罪-作品中の被害者であるヘッダの殺害に使われている。
  • ナイトラス・オキサイド・システム(及び他社類似品)として登場した作品
    • よろしくメカドック - レースのためにNOSを装着する話があるが、その際に亜酸化窒素の解説があり、とあるキャラクターがいつも笑っていることを指して亜酸化窒素を吸ったの?と揶揄するシーンがある。
    • TAXI NY - 犯罪組織の拠点の自動車整備工場に侵入した際に、サブ主人公ウォッシュバーンが可燃性ガスと間違え、NOS用亜酸化窒素ボンベを開け充満したガスを吸い、笑いだすというシーンが有るが、普通に行動はできている。(※ただし、主人公ベルのタクシーにNOSは搭載されていない。)
    • ワイルド・スピードシリーズ、60セカンズ、逮捕しちゃうぞ、エクスドライバー・・・いずれもストーリーの山場において、最後の一押しとしてNOSによるパワーアップが描かれる。
    • バトルギア4、ドリフトシティ、GT7、NFS・・・NOSによるブースト機能が搭載されたゲームタイトルの例。

脚注

外部リンク

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