一酸化窒素

From Wikipedia, the free encyclopedia

一酸化窒素(いっさんかちっそ、英語: nitric oxide, 英語: nitrogen monoxide[1])は窒素酸素からなる無機化合物で、化学式であらわすと NO酸化窒素とも呼ばれる。

概要 物質名, 識別情報 ...
一酸化窒素
Skeletal formula of nitric oxide with bond length
Skeletal formula of nitric oxide with bond length
Skeletal formula showing two lone pairs and one three-electron bond
Skeletal formula showing two lone pairs and one three-electron bond
Space-filling model of nitric oxide
Space-filling model of nitric oxide
物質名
識別情報
3D model (JSmol)
ChEBI
ChEMBL
ChemSpider
DrugBank
ECHA InfoCard 100.030.233 ウィキデータを編集
EC番号
  • 233-271-0
Gmelin参照 451
IUPHAR/BPS
KEGG
RTECS number
  • QX0525000
UNII
国連/北米番号 1660
CompTox Dashboard (EPA)
性質
NO
モル質量 30.006 g·mol−1
外観 無色の気体
密度 1.3402 g/L
融点 −164 °C (−263 °F; 109 K)
沸点 −152 °C (−242 °F; 121 K)
0.0098 g / 100 ml (0 °C)
0.0056 g / 100 ml (20 °C)
屈折率 (nD) 1.0002697
構造
直線(点群 Cv)
熱化学
標準モルエントロピー S 210.76 J/(K·mol)
標準生成熱 fH298)
90.29 kJ/mol
薬理学
R07AX01 (WHO)
ライセンスデータ
投与経路 吸入
薬物動態学:
良い
肺毛細血管床経由
2 ~ 6 秒
危険性
労働安全衛生 (OHS/OSH):
主な危険性
猛毒、腐食性、酸化剤[3]
GHS表示:
支燃性・酸化性物質腐食性物質急性毒性(高毒性)[4][3]
Danger
H270, H314, H330[4][3]
P220, P244, P260, P280, P303+P361+P353+P315, P304+P340+P315, P305+P351+P338+P315, P370+P376, P403, P405[4][3]
NFPA 704(ファイア・ダイアモンド)
致死量または濃度 (LD, LC)
315 ppm (ウサギ, 15 分)
854 ppm (ラット, 4 時間)
2500 ppm (マウス, 12 分)[5]
LCLo (最低致死濃度)
320 ppm (マウス)[5]
安全データシート (SDS) External SDS
関連する物質
関連する酸化窒素 五酸化二窒素

四酸化二窒素
三酸化二窒素
二酸化窒素
亜酸化窒素
ニトロキシル (還元型)
ヒドロキシルアミン(水素添加型)

特記無き場合、データは標準状態 (25 °C [77 °F], 100 kPa) におけるものである。
☒N verify (what is  ☒N ?)
閉じる

常温で無色・無臭の気体に溶けにくく、空気よりやや重い。有機物の燃焼過程で生成し、酸素に触れると直ちに酸化されて二酸化窒素 NO2 になる。硝酸の製造原料。光化学スモッグ酸性雨の成因に関連する。また体内でも生成し、血管拡張作用を有する。窒素の酸化数は+2。

製法

化学的には希硝酸を作用させたり、二酸化窒素(NO2)に(温水)を反応させることで生じる。

銅と希硝酸の反応

二酸化窒素と水(温水)の反応

また、二酸化硫黄と二酸化窒素の置換反応の過程でできる。

環境に対する影響

高温で窒素酸素が化合して一酸化窒素が生成する。自然界では主として山火事によって生じるが、その発生源の大部分は、人為的理由による。人為的な発生源として、ボイラー酸化剤として純酸素を用いるロケットを除いた全熱機関の排出ガス焼却炉、石油ストーブ暖炉ガスコンロなどである。大気汚染で問題となる窒素酸化物 (NOx) の1つである。窒素酸化物は大気汚染防止法によって、自動車、火力発電所、航空機や船舶などの特定の排出源に対しては排出規制が行われているが、前記規制対象以外は野放しである。

大気へ放出された一酸化窒素は、二酸化窒素酸化される。

一方、二酸化窒素は紫外線を受け一酸化窒素と原子状酸素になり、この原子状酸素がオゾンなど酸化物質(オキシダント)を生成するが、一酸化窒素が二酸化窒素に酸化される反応は、非メタン炭化水素(NMHC)が光反応により酸化した物質の存在下で加速するため、反応が連鎖的に進行し、光化学スモッグを引き起こす原因となる光化学オキシダントを生成する。

また、窒素酸化物は、大気中の水蒸気と反応すると硝酸に変化し、酸性雨の原因となる。

応用

オストワルト法アンモニア硝酸に変換する過程で中間産物としてできる。

一酸化窒素を用いてポリマー表面のラジカルを検出することができる。表面ラジカルを一酸化窒素が消去する際に生成される窒素をX線光電子分光で検出する方法である。

食事

アルギニンまたはタンパク質

体内では栄養素のアルギニンシトルリンが一酸化窒素へと変換される。アルギニンは体内では腸管および腎臓の協同にてアンモニアから合成されるので、主としてタンパク質を摂取すればよい。

野菜

一方、近年ではアルギニンの他に野菜等に含まれる硝酸塩も体内にて一酸化窒素の原料として利用されているという見方をする主張もある[6]

生理機能

生体内では一酸化窒素は、一酸化窒素合成酵素 (NOS) によってアルギニンと酸素とから合成される。一酸化窒素は細胞内の可溶型グアニル酸シクラーゼを活性化してサイクリックGMP (cGMP) を合成させることによりシグナル伝達に関与する。

免疫に関与する細胞の一種マクロファージは病原体を殺すために一酸化窒素を産生する。しかしこれは逆に悪影響を及ぼすこともある。敗血症ではマクロファージが一酸化窒素を大量に産生し、それによる血管拡張が低血圧の主因となると考えられている。

一酸化窒素は神経伝達物質としても働く。シナプス間隙のみで働く多くの神経伝達物質と異なり、一酸化窒素分子は広い範囲に拡散して直接接していない周辺の神経細胞にも影響を与える。このメカニズムは記憶形成にも関与すると考えられている。

一酸化窒素の生物機能は1980年代において驚くべき発見として迎えられ、一酸化窒素は1992年の「サイエンス」誌で「今年の分子」として取り上げられた。1998年ノーベル生理学・医学賞は一酸化窒素のシグナル機能の発見によりフェリド・ムラドロバート・ファーチゴットルイ・イグナロに授与された。

窒素酸化物(NO、NO2等)を吸入するとヘモグロビン酸化されて、酸素運搬能力のないメトヘモグロビンが生成し、メトヘモグロビン血症になることがある[7]

臨床応用

血管内皮は一酸化窒素をシグナルとして周囲の平滑筋を弛緩させ、それにより動脈を拡張させて血流量を増やす。これがニトログリセリン、亜硝酸アミル、一硝酸イソソルビド(5-ISMN,アイトロール)などの亜硝酸誘導体が心臓病の治療に用いられる理由である。これらの化合物は一酸化窒素に変化し、心臓冠動脈を拡張させて血液供給を増やす。
発毛剤ミノキシジル(リアップ)は cGMPの分解を抑制して毛細血管の血流量を増やす。一酸化窒素は陰茎勃起でも働いており、同じく cGMP分解抑制薬であるシルデナフィル(バイアグラ)はこの機構を利用したものである。
一酸化窒素を気管内に吸入させることにより、肺動脈の血管平滑筋を弛緩させて、肺高血圧を改善させることができる。新生児の新生児遷延性肺高血圧や、開心術後の心臓の負荷軽減、原発性肺高血圧症の治療などに利用されるが、日本では保険適応外の先端治療扱いである。
静脈に比べて、動脈は酸素が多く、NOはNO2やHb-NO (ニトロソヘモグロビン) になりやすい。
NOは静脈を拡張させ、心臓の前負荷を減少させる薬理作用を持つことから、冠動脈疾患の他にも心不全高血圧緊急症に用いられる。

医療従事者へのリスク

一酸化窒素は空気中の酸素と結合し二酸化窒素となり、医療者へ害をなす恐れがある。症状には胸部不快感、めまい、のどの渇き、呼吸困難、頭痛などがある。[8]長時間病室内に滞留させないように排気流路の工夫、活性炭の使用などを使用すると良い。[9]

脚注

外部リンク

Related Articles

Wikiwand AI