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肝蛭症

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肝蛭症(かんてつしょう、fascioliasis)とは、NTDs指定[1]の肝吸虫症。相対的に報告例の多い人獣共通感染症である。

牛、羊には食欲不振など様々な体調不良を引き起こす。ヒトには芹やクレソン等の水生植物を摂取することで感染し、 腹痛や肝腫大を引き起こす。診断には抗体検査、治療にはトリクラベンダゾールが有用である。

原因

Fasciola hepatica成虫

肝蛭(Fasciola hepatica)、巨大肝蛭(Fasciola gigantica)の感染を原因とする。日本では日本産肝蛭(Fasciola sp.)が分布する。肝蛭とは厳密にはFasciola hepaticaを指すが、前記の3つを合わせた用語として用いられる事が多い。中間宿主はヒメモノアラガイあるいはコシガタモノアラガイであり、終宿主は反芻類、ブタ、ヒト。

疫学

世界

広く分布し、羊または牛の糞で汚染されたクレソンが原因の症例は、欧州、アフリカ、中国、及び南米に分布する[2]。 ボリビア、ペルー、エジプトでは特に多い。

世界的症例としてはクレソンが多くを占め[要出典]、汚染水飲用やカタツムリに因るアサガオ生食なども原因となる。

公衆衛生の行き届いていない熱帯、特に農村部に多いと考えられる[要検証]。

日本

感染経路は水辺の野草、水田におけるメタセルカリアの経口感染。

具体例としては、芹・クレソンの生食[2][3]、稲藁[3]、牛・蝦夷/日本鹿のレバー生食も考えられる[3]がほぼ有り得ない[2][注釈 1]。日本では散発的に50例程確認されており[3]、1年に10例発生した年もあった[1]。 中南部九州に多い[3]。

症状

ヒト

感染初期では発熱、右上腹部痛、圧痛を伴う肝腫大、発咳、好酸球増多、肝機能異常。慢性期では不規則な発熱、貧血、好酸球増多、腹痛、消化不良、下痢、黄疸、体重減少がみられる。

主訴は上腹部痛あるいは上腹部不快感で、軽度~中等度の肝機能障害が見られる。
—宮崎大学、[3]

急性肝蛭症の場合肝傷害に因る腹痛、肝腫大、悪心、嘔吐、間欠熱、蕁麻疹、倦怠感及び体重減少を引き起こす事がある[2]。

慢性の場合は無症状の事もあれば、間欠性腹痛、胆石症、胆管炎、閉塞性黄疸、又膵炎に発展する事もある[2]。

多数寄生では、硬化性胆管炎および胆汁性肝硬変が生じることがある。腸壁、肺、またはその他の臓器に異所性病変が生じる事もある[2]。

中東で感染したレバーの生食後に発生して嚥下困難を来す症例が報告されており、咽頭吸虫症(halzoun)と呼ばれている[2]。この症候群の原因が肝蛭かはまだ明らかではない[2]。

動物

感受性は羊、牛、豚の順に高い。羊では体重減少、腹水貯留、好酸球増多、貧血、肝機能障害がみられる。

牛では食欲不振、体重・乳量の減少など。鹿ではほぼ無症状。[要検証]

診断

腹痛及び/又は肝腫大があり、クレソンまたは汚染水に曝露した生野菜の摂取歴がある患者では、肝蛭症を考慮する[2]。 殆どの症例で高度の好酸球増多が見られる事で本症(やその他寄生虫症)が疑われる[3]。

腹部愁訴の評価を目的とする血液および画像検査で得られ、裏付けとなる所見としては貧血、好酸球増多、肝機能検査値異常、赤沈亢進、及び高ガンマグロブリン血症、肝蛭症急性期の肝臓に認められるCTでの低吸収病変など[2]。CTでは境界不明瞭の影として映り、画像上胆管細胞癌を欺く[3]。回虫移行症より病変は大きい[3]。

確定診断

  • 便検体または十二指腸もしくは胆道内容の鏡検による虫卵の検出[2]
  • 抗体分析[2]

疑いが強い場合、虫卵検出のための便検査[注釈 2]及び血清抗体価測定を行うべきである[2][注釈 3]。しかし、成虫1匹あたりの産卵数が少ないために検便や十二指腸液検査で虫卵が検出されることは稀である[3]。 便検査および抗体検査の結果が陰性または不確かであるが、依然肝蛭症が(多数の支持的所見、特に好酸球増多に基いて)疑われる場合、内視鏡検査と十二指腸および胆道吸引を行うべきである[2]。内視鏡検査で採取した検体から虫卵、ときに成虫が検出される事がある[2]。

設備の整った日本では、曝露3~4カ月以内の場合や慢性症例では(産卵が散発的ないし少量しか見られない為)特に[2]免疫診断が有効である[3]。治癒の6~12カ月後には抗体が検出できなくなる[2]。

慢性の場合、便/十二指腸/胆道検体から虫卵が回収される事がある[注釈 4]。 [2]超音波検査、CT、MRI、内視鏡的逆行性胆道膵管造影(ERCP)、または胆道造影で胆道の異常を検出できる[2]。

その他皮内反応、免疫電気泳動法、オクタロニー法等。

診断後は感染者の家族も肝蛭症について評価すべきである[2]。

治療法

6歳以上の患者に対しては、トリクラベンダゾール(英語版)の内服[2]が特に高い効果を発揮する。12時間の間隔を空けて2回、10mg/kgを食後に服用させる[2]。日本では未承認薬[1]の為、 熱帯病治療薬研究班等を経由して入手する必要がある。

場合によってはニタゾキサニド500mg、1日2回、経口、7日間による治療が効果的となる場合があるが、データが限られている[2]。

一部の患者ではERCPによる胆道からの成虫の抽出が有用となりうる[2]。併発する胆管炎はプレドニゾロンで治療する[要出典]。

その他ビチオノール、ブロムフェノフォス、ニトロキシニル等。

プラジカンテルによる治療は失敗例が多く非推奨[2]。

予防

クレソンなど水辺の野草(や羊、牛、豚の肝臓)の生食を避ける。家畜での予防は肝蛭症の発生のある牧野では駆虫薬を投与する。

参考文献

  • 高島郁夫、熊谷進編 『獣医公衆衛生学第3版』 文永堂出版 2004年 ISBN 4830031980
  • 石井敏雄 『獣医寄生虫学・寄生虫病学(2)蠕虫 他』 講談社サイエンティフィク 1998年 ISBN 4061537172

脚注

関連項目

外部リンク

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