生殖細胞

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生殖細胞(せいしょくさいぼう、: germ cell)とは、有性生殖において個体の配偶子を作る細胞のことである。胚細胞(はいさいぼう)とも呼ばれる。

多くの動物で生殖細胞は原始線条に由来し、の腸を通って発達中の生殖腺へと移動する。そして、減数分裂細胞分化を経て、成熟した配偶子へと成長する。動物とは異なり、植物は発生初期に指定される生殖細胞を持たない。代わりに、生殖細胞は成長後に体細胞から分化する。[1][2]

概要

地球上に生物が誕生したときから、生殖細胞は連綿と受け継がれている。例えば、有性生殖のための配偶子(すなわち卵子卵細胞精子のこと)や、無性生殖のための胞子 、またそれらの元となる細胞が生殖細胞である。これらの細胞はまとめて生殖細胞系列germline)と呼ばれることもある。生殖細胞は胎生期中に細胞分裂を繰り返して、男子では精原細胞に、女子では卵祖細胞になる。

多細胞生物においては、生殖細胞以外は体細胞と呼ばれる。これらの生物において配偶子形成の過程では減数分裂が起きる。真核生物では染色体は母系と父系から1セットずつ受け継がれるため、相同な染色体があわさって二倍体となっている。減数分裂では相同染色体が分離され、一倍体とならない場合、受精の度に染色体数が倍になってしまうことになる。減数分裂はウォルター・S・サットンによってバッタの生殖細胞で確認され、染色体説提唱の裏付けとなった。

体細胞は分裂回数が制限されているのに対し、生殖細胞は無限に分裂することができ、不死の細胞と言える。この不死性にはテロメアの長さの維持が関与している。生殖細胞の維持や配偶子の発生に異常が起こると不妊になる。

詳細

胚において生殖細胞の系統を作成するメカニズムは2つ存在する。

1つ目は前形成(Preformistic)と称されるもので、卵の生殖質(細胞質の特定の領域を指す)に存在する生殖細胞決定因子を、予定生殖細胞が受け継ぐものである。多くの動物において未受精卵は非対称で、細胞質の異なる領域がそれぞれ異なった量のmRNAとタンパク質を含んでいる。

2つ目は誘導を用いたもので、生殖細胞が決定因子によって分化するのでなく、接合体の遺伝子によって制御されるシグナルによって分化する哺乳類で見られるメカニズムである。哺乳類では胚の初期段階で、いくつかの細胞が近隣の細胞からシグナルによって始原生殖細胞への誘導を受ける。哺乳類の卵はおおよそ対称的であり、受精後最初の卵割の後はすべての細胞が全能性を有している。したがってこの時点ではすべての細胞が生殖細胞を含むいかなる細胞にも分化できる。マウスでは始原生殖細胞への分化はBMPタンパク質の強いシグナルによって開始され、その後、転写因子であるBlimp-1/Prdm1とPrdm14の発現が促進される。[3]

誘導がもともと生物が持っていたメカニズムであり、遺伝(前形成)式の生殖細胞形成のメカニズムは収斂進化によって獲得されたものだと推測されている。これら2つのメカニズムの間にある重要ないくつかの違いは、生殖質の遺伝の進化を説明するカギとなるかもしれないことがわかっている。その違いの1つは、通常、遺伝が起こる段階が発生過程において即座に起こるのに対し、通常、誘導は原腸形成まで起こらないということである。生殖細胞は後者の場合休眠しており、分裂しないため、したがって突然変異も起こりづらい[4]

生殖細胞系列は誘導を受けたのちすぐに形成されるというわけではないため、細胞が分化するまでは突然変異の可能性が高い。突然変異率のデータによれば、誘導を受ける種であるマウスとヒトでは、遺伝を受ける種であるC. elegansやショウジョウバエよりも生殖細胞系列の突然変異率が高いことが示されている。[5]突然変異率が低い方が、自然選択によって受け継がれやすい。これが生殖質が収斂進化をしている可能性がある理由の1つである。しかし、種々の分類群における突然変異率のデータは不足しており、特に、始原生殖細胞の分化前後におけるデータが生殖質の進化の仮説についての強い証左となることがわかっている。

移動

生殖腺にたどり着かねばならない生殖細胞である、始原生殖細胞(PGCs、前駆生殖細胞、ゴノサイト)は、腸と発生途中の生殖腺を通りながら、その道中で繰り返し分裂する。[6]

無脊椎動物

モデル生物であるショウジョウバエ属では、原腸胚の後端から中腸後部へ、原腸胚の内陥に伴い極細胞が受動的に移動する。次に、能動的に中胚葉内の腸を通って移動する。内胚葉の細胞が分化し、Wunenタンパク質とともに腸管内を移動するように誘導するのだ。Wunenタンパク質は、負の化学走性を示すタンパク質であり、これにより、生殖細胞が内胚葉から中胚葉に移動する。生殖細胞が2つに別れても、横方向への平行移動が生殖腺に達するまで続く。Colombusタンパク質[要出典]という正の化学走性を示すタンパク質は中胚葉の生殖腺内での移動を促進する。

脚注

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