脊髄刺激装置
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適応
SCSの最も一般的な適応は、米国では背部手術失敗症候群(FBSS)であり、ヨーロッパでは末梢性虚血性疼痛である[4][5]。日本では、「薬物療法、他の外科療法及び神経ブロック療法の効果が認められない慢性難治性疼痛の除去又は軽減」が適応である[6]。
2014年の時点で、米国食品医薬品局はFBSS、慢性疼痛、複合性局所疼痛症候群、難治性狭心症、腹部および会陰の内臓痛[1]および神経損傷による四肢の痛みの治療としてSCSを承認した[7]。
患者が心理的評価を受け、SCSの適切な候補者であると判断されたら、最適な刺激パターンを決定するためにトライアルと呼ばれる一時的なSCSが留置され、外部パルス発生器と共に3~10日間自宅に帰される(海外の場合)。日本ではトライアル期間は入院を継続することが多いであろう[8]。痛みのコントロールと身体活動性の向上が達成された場合は、リード(脊髄刺激の導線、日本でもリードと呼称されることが多い)とパルスジェネレータ(電気信号発生器、日本でも外来語としてパルスジェネレータと呼ばれることが多い)を備えた恒久的なSCS装置が留置される[9]。
禁忌
副作用と合併症
SCSの合併症は、単純で簡単に修正できる問題から、壊滅的な麻痺、神経損傷、死亡にまで及ぶ。7年間の追跡調査では、全体的な合併症率は5~18%であった。最も一般的な合併症には、リードのずれ、リードの破損、および感染が含まれる。その他の合併症には、パルスジェネレータの回転、血腫(皮下または硬膜外)、脳脊髄液漏出、硬膜穿刺後の頭痛、パルスジェネレータ部位の不快感、漿液腫、一過性対麻痺などがある[13]。
旧型SCSによるピリピリした感覚を不快に感じる事例もある。
最も一般的なハードウェア関連の合併症はリードのずれ、であり、埋め込まれた電極が元の配置からずれる。この合併症では、再プログラミングにより、知覚異常に対する治療範囲を再認識させることができる[14]。大きなリードのずれを伴う状況では、リードの配置をリセットするために再手術が必要になる場合がある[15]。リードがずれた人の割合の報告は研究によって大きく異なるが、大半の研究では、脊髄刺激によるリードのずれは10~25%の範囲で報告されている[15]。
作用機序
脊髄刺激の作用の神経生理学的メカニズムは完全には理解されていないが、中枢神経系の痛みの処理を変化させることにより、疼痛感覚をピリピリすることでマスクしている可能性があるとされる[16]。神経因性疼痛にSCSを適用した場合の鎮痛メカニズムは、四肢虚血による鎮痛に関与するメカニズムとは大きく異なる可能性がある[17][18]。神経障害性疼痛状態では、SCSによって後角が局所神経学的に変化してニューロンの過興奮を抑制することが実験により明らかにされている。具体的には、GABA分泌とセロトニンの濃度上昇、およびおそらくグルタミン酸やアスパラギン酸を含むいくつかの興奮性アミノ酸の濃度の低下に関するエビデンスが幾つかある。虚血性疼痛の場合、鎮痛は酸素需要供給の回復に由来するようである。この効果は、交感神経系の抑制によって媒介される可能性があるが、血管拡張の可能性もある。また、上記の2つの機序の組み合わせが関与している可能性もある[19]。
外科的処置
脊髄刺激装置は、2つの異なる段階で留置される: 試用段階とそれに続く最終埋込段階である。まず、無菌的に皮膚を消毒し、ドレープで被覆する。硬膜外腔には、14ゲージのTuohy針を使用した抵抗消失法で到達する。リードは、適切な脊椎レベルまで透視ガイドで慎重に送り込まれる。この手順を繰り返して、最初のリードに隣接して別のリードを配置する。透視検査は、SCSリードの適切な配置を確認するために、手技中に頻繁に行われる。リードの配置は、患者の痛みの場所によって異なる。以前の研究に基づいて、腰痛患者のリード配置は通常T9からT10である。その後、技師が、通常、非常に低い周波数から始まる刺激を開始する。患者は、リード線の活性化によって知覚される感覚を説明するよう促され、技師は、患者の標的疼痛部位の知覚範囲が最大となるようにSCSを較正する。最後に、リード線が移動する危険を減らすために外部に固定され、手術部位が洗浄され、清潔なドレッシングが皮膚に貼り付けられる。患者が処置から回復した後、装置は再びテストされ、プログラムされる[20]。
患者スクリーニング
刺激装置の留置の候補である患者は、禁忌および併存疾患についてスクリーニングする必要がある。刺激装置試験の前に、以下を考慮する必要がある:[1]
- 出血のリスク – 脊髄刺激装置の治験および移植は、永久的な神経学的損傷を引き起こす可能性のある重篤な脊髄内出血のリスクが高い処置であることが確認されている。刺激装置の設置に先立ち,抗血小板薬および抗凝固薬の中止と再投与に関する適切な計画が必要である。
- 心理的評価 - うつ病、不安、身体化、および心気症は、脊髄刺激装置のより悪い結果と関連している。専門家は配置前の心理的評価を推奨している。精神障害の診断は、刺激装置の配置に対する厳密な禁忌ではない。ただし、試験配置を検討する前に障害の治療が必要である。
- SCS留置の遅れ – 慢性疼痛の発症後何年も経ってから刺激装置を留置すると、効果が低下する可能性がある。400例を対象としたレビューでは、痛みの発症から2年以内にSCS留置を受けた患者の成功率が85%近くであるのに対し、痛みの発症後15年以上経過してからSCSを留置した患者の成功率はわずか9%であった。[21]
- 技術的な困難 – 先天性か後天性であれ、解剖学的構造の違いにより、特定の個人では留置がうまくいかない場合がある。脊椎の画像診断は、刺激装置の留置よりも脊椎手術がより適切な患者の選択を導くために必要である。
トライアル期間
歴史
神経刺激による痛みの電気療法は、メルザックとウォールが1965年にゲートコントロール理論を提唱した直後に始まった。この理論は、痛みを伴う末梢刺激を伝達する神経と、触覚および振動感覚を伝達する神経の両方が、脊髄の後角(ゲート)で終結することを提唱した[23]。後者への入力を操作して、前者への「ゲートを閉じる」ことができるという仮説が立てられた。ゲート制御理論の応用として、Shealyら[24]は、慢性疼痛の治療のために最初の脊髄刺激装置を脊髄後柱に直接埋め込み、1971年にShimogiと同僚が硬膜外脊髄刺激の鎮痛特性を最初に報告した。それ以来、この技術は数多くの技術的および臨床的発展を遂げてきた。