藪の鶯
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作品のテーマとしては「当時の若い女性の生き方」が取り上げられており[7]、そのなかで極端かつ浅はかな欧化主義への批判と[4][7]、「つつましやかでしかも教養が高く、また自主自立的な生活意志をも備えた女性」を理想とする価値観が描かれた[7]。主要な登場人物は篠原浜子、服部浪子、松島秀子の3人の女性である[8][9]。また、彼女らの恋愛(または結婚)の候補者となる山中正、宮崎一郎、篠原勤などといった人物も作内で多く出てくるが[8]、明確な主人公は描かれていない[10]。
子爵令嬢である篠原浜子は極端な欧化・開化主義者[11][8]、まじめで着実な服部浪子は模範的な学生[12][8]、貧しい境遇の松島秀子は両親が亡くなりながらも内職などで弟の学費を稼ぐ向上心を捨てない女性として描かれている[13]。浜子は軽薄な官吏である山中正を気に入り結婚するが、山中に財産を奪われ捨てられる[13][12]。一方で、作品内で理想的な女性として描かれた秀子は、浜子の元許嫁で洋行帰りの篠原勤と結婚し子爵夫人となる[13][12]。浪子も勤の友人である宮崎一郎と結婚し幸せな家庭をすごすようになる[12]。浜子を通して浅薄な欧化主義への批判、松島秀子を通して理想の女性像が描かれているとされる[14]。
背景
花圃本人によれば、『藪の鶯』が書かれたきっかけは、当時の田辺家が死んだ兄の法事も行えないほど窮乏しており、そのとき花圃が評判となっていた坪内逍遥の『当世書生気質』を読んだことであり、花圃はこれなら書けると思い小説が書かれた[1]。発表に当たり、作品の草稿は逍遥による訂正加朱を受けた[3]。原稿料は33円20銭であり、この原稿料によって金に窮乏していた田辺家は、花圃の亡き兄の一周忌を済ますことができた[1]。
『藪の鶯』が書かれた1888年は、欧化主義がとられた鹿鳴館時代の末期にあたる[15]。花圃も小説執筆当時は、欧化主義を重視していた東京高等女学校に在籍していたが、花圃自身は欧化主義には批判的であった[15]。そのため、西洋かぶれとして描かれた浜子は鹿鳴館などの社交界では華やかであるものの、作品内で理想とされる「実直・勤勉な家婦像」からは外れた存在として劇画されている[16]。なお花圃は、東京高等女学校に入学する以前には、桜井女学校や明治女学校にも入学した経験がある[17]。