防虫剤
害虫忌避のための薬剤
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防虫剤(ぼうちゅうざい)とは、害虫を忌避するために用いられる薬剤のことである。大きく分けて衣類に用いるもの、人体に用いるもの、そして食品を保存するためのものがある。
衣類用防虫剤
収納してある衣服に害を与えるイガ、コイガ、カツオブシムシ類などの幼虫を忌避する薬剤。植物の押し葉標本や昆虫の乾燥標本など、生物の学術標本のうち、乾燥状態で保存するものの保存にも使用される。また、白檀・丁字・龍脳・桂皮などの天然素材を用いたものは「防虫香」と呼称され、書画・掛軸・料紙・骨董用に広く用いられる[1][2][3]。
古くは天然素材が使われたが、化学合成の発達とともにナフタレン(ナフタリン)が登場し、パラジクロロベンゼン製剤が全盛となった。しかし、これらは刺激臭などが問題になっていたため、日本では1980年代から殺虫剤に用いていたピレスロイド系の化学物質も用いられ、臭わない防虫剤として支持されている[4]。家庭用除湿剤と併用することもあるため、初めから除湿剤と一緒になった防虫剤も市販されている。なお、ナフタリン・樟脳・パラジクロロベンゼン系の防虫剤を比較した実験では、昇華量には大差なく、防虫剤の効果も大きな差は認められなかった[5]。
有効期間は6 - 12か月であり、衣替えの時期に合わせ薬剤の有効作用が薄れるように量が調節されている。よって業界では春、ないしは秋の主力商材として総合スーパー(GMS)やドラッグストアなどで販売される。国内シェアの首位はエステー(ムシューダ)であり、以下白元アース(ミセスロイド)、アース製薬(ピレパラアース)または大日本除虫菊(タンスにゴンゴン)と続き、ほかに大手ではフマキラー(サザン)がある。
注意点
防虫剤の混成使用は避ける。防虫剤は昇華作用を持つものが選ばれ使用されているために、各々は固形状から直接気化する。しかし、種類の異なる防虫剤を混成すると融点降下を起こして液状になる場合がある。溶けた液が衣類などに付着してしみを作ることがあるので注意しなければならない。
人体用防虫剤
病原体を媒介し、またかゆみや腫れなど不快感を与える蚊やダニを忌避する薬剤。主にエアゾールスプレー式になっており、皮膚に直接ふりかける。また、ミストタイプのもの、薬剤が飛散しないようにウエットシートになったものや、直接肌に塗るタイプのものもある[6]。有効成分は、ディートやイカリジンが用いられており、高濃度の虫よけ剤は第二類医薬品になっている。主成分ディートの使用に不安を感じる消費者がいるため、有効害虫は限られるものの、幼少年齢にも噴霧できるイカリジンを使用した商品も増えている。一方で、化学成分の安全性を疑ったり、薬剤の臭いを忌避したりする消費者向けにハーブやハッカを用いた「天然成分」のみを用いた製品も市販されている(ただし、天然成分だからといって万人に安全性が保障されるものではなく、海外では天然成分使用スプレーに伴う健康被害も報告されている)。
一般には「虫除けスプレー」と呼ばれている。一般消費動向では夕涼みや山歩きなど、外へ出る機会の多い夏に特に需要が高まり、お盆の時期にピークを迎える。また、夏季のためスプレー散布によるべとつきを敬遠する利用者のために、散布後サラサラになる商品なども開発されている。主な商品にサラテクト(アース製薬)、スキンガード(ジョンソン)、ムシペール(池田模範堂)、ウナ(興和)、スキンベープ(フマキラー)、プレシャワー(大日本除虫菊)などがある。
忌避剤(repellent)
忌避剤(repellent、きひざい、リペレント)とは、昆虫やダニなどの節足動物が人や物体に接近・付着するのを防ぐために用いられる化学物質または製剤であり、対象生物を殺すのではなく、その嗅覚や感覚受容を撹乱して回避行動を引き起こす点に特徴がある。主な有効成分にはディート(DEET)やピカリジン(イカリジン)などがあり、皮膚や衣類に適用して使用される。
インセクトリペレント(虫除け)
インセクトリペレント(英: insect repellent)とは、蚊・ダニ・ハエ・ノミなどの吸血性または不快害虫が人や動物に接近・着地・吸血するのを防ぐ目的で使用される化学物質または製剤の総称である。日本語では一般に「虫除け」と呼ばれる。
インセクトリペレントは、殺虫剤とは異なり、昆虫を殺すのではなく忌避(repel)することを主目的とする。皮膚や衣類に塗布・噴霧することで、昆虫の嗅覚や感覚受容体に作用し、宿主(人間など)を認識しにくくさせる。
昆虫はヒトの呼気中の二酸化炭素や体臭(乳酸・脂肪酸など)を手がかりに宿主を検出する。インセクトリペレントは以下のように作用する:
- 嗅覚受容体を遮断または混乱させる
- 宿主の匂いシグナルをマスキングする
- 忌避刺激として作用する
この結果、昆虫は人を認識できなくなる、または接近を避ける。
主な有効成分
化学系忌避剤
最も広く使用される成分。高い忌避効果と持続時間を持つ。濃度により効果時間が変化する。
- イカリジン(ピカリジン)
皮膚刺激や臭気が少なく、近年広く普及。DEETと同等の効果を持つ場合もある。
- IR3535
比較的安全性が高いとされ、ヨーロッパで多く使用される。
天然由来成分
天然由来は一般に安全性は高いが、持続時間が短い傾向がある。
- シトロネラ油(レモングラス由来)
- ユーカリ油(特にレモンユーカリ)
- ラベンダー油など
合成ピレスロイド系化合物
ペルメトリン(permethrin)は、合成ピレスロイド系の殺虫剤であり、衣類や装備に処理して使用されることが多い。マダニ(例:Ixodes ricinus)や蚊に対して神経毒性を示し、接触した個体を麻痺させる作用を有する。このため、忌避剤としての効果に加え、接触殺虫作用を併せ持つ点が特徴とされる。
使用方法
顔への使用時は手に取ってから塗布するなど、安全な方法が推奨される。
- 皮膚に直接塗布(ローション・スプレー)
- 衣類への噴霧
- 空間用(蚊取り・キャンドルなど)
公衆衛生上の重要性
インセクトリペレントは単なる不快害虫対策にとどまらず、以下の感染症予防に重要である:
- マラリア
- デング熱
- ジカ熱
- ライム病
特に熱帯・亜熱帯地域では、感染症予防の基本手段の一つとされる。