複素数の絶対値
From Wikipedia, the free encyclopedia
数学における複素数の絶対値(ぜったいち、英: absolute value, 仏: module; 母数)とは、複素数平面における、原点 O(0) とのユークリッド距離として定義できる。これは、実数の絶対値を複素数に拡張した、唯一の乗法的ノルムとして特徴付けることができる。複素数 z の絶対値は |z| などで表される。

具体的には、複素数 z = a + bi(a, b は実数)(i は虚数単位)の絶対値は次の式で定義される:
複素数の絶対値の概念は実数の絶対値の拡張であり、乗法的ノルムの公理を満たす。これにより複素数列の収束・発散の概念がε-δ論法により導入でき、複素解析を講ずることができる。
用語として module を導入したのは Argand, Jean-Robert (1814), “Réflexion sur la nouvelle théorie des imaginaires, suivie de la démonstration d'un théorème d'analyse”, Annales de Gergonne 5: 197-209 で、幾何学的構成による虚数の表現を説明するものとして用いられた[1]。
定義
性質
演算の特徴
複素数全体からなる集合 C において、
で定義される関数 d は距離函数である。つまり (C, d) は距離空間(特に位相空間)になる。さらに (C, d) は完備である。
C は、上で述べた非負性・非退化性・乗法性(の一部)と三角不等式の成立により、複素数の絶対値をノルムとする実二次元ノルム線型空間である。さらに複素数の持つ代数的演算は、この標準的な距離空間の位相(ノルム位相)に関して連続である。特に、絶対値の乗法性により、C は乗法的バナッハ環(したがって完備ノルム体)を成す。
より代数的な言葉で述べるならば、複素数の絶対値は複素数全体の成す集合に付値体の構造を与えるという意味において「絶対値」(付値)である。複素数の全体は完備アルキメデス付値体になる。