西川元彦

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西川 元彦(にしかわ もとひこ、1918年大正7年10月1日~?)は、日本の経済学者日本銀行監事

名古屋高等商業学校宮田喜代蔵 の指導を受け、「最も理論的なものは、最も実践的である。」という言葉で、経済に対する関心を深める。 宮田の勧めもあり、東京商科大学に進学、中山伊知郎の門を叩く[1]

1941年昭和16年)東京商科大学卒業後、日本銀行入行。統計局長、調査局長、監事を歴任、一橋大学の講師も務めた。1978年(昭和53年)1月に前川春雄副総裁を委員長とする日本銀行百年史編纂委員会が発足すると、吉野俊彦呉文二と共に日本銀行百年史編纂委員会の委嘱委員を務めた[2]

中央銀行の理論と歴史に関する権威として知られ、多くの論文、専門書を執筆・監訳した。

学説

日本銀行における長年の実務経験と、理論的な背景(ケインズ経済学歴史学派)を融合させ、特に「セントラル・バンキング(中央銀行業務)の普遍的な理念と実践」を重視する点に大きな特徴がある。

中央銀行論

中央銀行が持つべき「伝統理念」は、各国の歴史や状況を超えて共通する「統一像」として捉えられ、以下の3つの信条が「三位一体」となっていることを強調した[3]

  1. 自由な 市場メカニズムの尊重: 政策運営において市場の機能を活かし、金利機能などの市場原理を重視する姿勢。
  2. 通貨価値の安定・維持の最重視: 物価の安定こそが中央銀行の最も重要な責務であり、現代の管理通貨制度における根本問題であると位置づけ。
  3. 政治に対する中立性・自律性の維持: 長期的な物価安定の目標を達成するためには、政治的な思惑や短期的な経済成長圧力から独立した、自律的な政策運営が不可欠であると説いた。

これらの理念は、アングロサクソン流の金融理論や、自由市場メカニズムが比較的強いアメリカや西ドイツなどの戦後事例を原型とした「統一像」に基づいている。 また、銀行券の発行という中央銀行の機能は、外部との間で信用(債権・債務)関係を形成する市場の中での行為であるとし、現代の不換紙幣と政府紙幣の差異にも言及した。

経済政策論

単なる理論だけではなく、日本銀行における40年余りの実務経験に裏打ちされた現実的な視点が特徴である[4]

  1. 内生的貨幣供給論への理解: 銀行実務家は融資にあたり現金が不要であることを知っているという現場感覚から、貨幣が経済活動に応じて内生的に供給される側面を理論的に捉えた。
  2. 「形態論」的アプローチ: 外国の抽象的な理論をそのまま日本に適用するのではなく、日本の金融構造や機能に注目し、現実の組織や機能を重視する「形態論」的な捉え方が必要であると主張した。
  3. 物価安定の優先: 高度成長期においても、成長通貨の供給は主目標を補完するものであり、「通貨価値の安定」や「対外均衡の維持」が表裏一体の政策と理解すべきとした。
  4. 政策運営の「アート」: 金融政策の実践においては、歴史的経験に基づく「伝統信条」の自己革新の歩み、すなわち「アート」(裁量とルールの中間的なもの)が重要であるとし、その「真髄」を追求した。

歴史的教訓の現代的示唆

R.S.セイヤーズの『イングランド銀行 1891-1944年』の監訳を務め、この歴史研究を通じて、現代の中央銀行が直面する課題への示唆を得ようとした[5]

  1. 歴史の教訓の重視: この歴史書が「両大戦間」を主たる叙述対象としているにもかかわらず、その古い物語を通じて「今日が語られている」と感じたように、歴史的な回顧と現代の問題意識の類似性を強調した。
  2. 「開かれた」歴史として: この著作がイングランド銀行の全面的な協力の下で書かれた「正史」であると評価し、その内容がセントラル・バンキングの理念や実践、制度の背景にある人間的・政治的・経済的事情にまで及んでいる点に注目した。
  3. 独立性と国益の追求: イングランド銀行のノーマン総裁が追求した「独立性」とは何か、現代の変動相場制における国際協調の中で、いかにして国益(長期的な安定)を確保すべきかという問いを、歴史的視点から追求した。

経済哲学や倫理観、歴史的視点に裏打ちされた、深く現実的なセントラル・バンキングのあり方を追求する論考である。

実務と理論の統合

日本銀行の調査局長や『日本銀行百年史』の編纂に携わった経験から、「生きた金融政策」を捉える視点である。

  1. 内生的貨幣供給説への理解: 銀行実務の現場感覚から、貨幣が経済活動に応じて供給される側面を理論的に昇華させるなど、実務家出身の研究者らしい現実的なアプローチを取った。
  2. 政策効果の浸透メカニズム: 金融市場や制度・慣行の変化が、どのように政策効果として経済に波及していくかというプロセスを詳細に分析した。

この論考は、現代の日本銀行法(1998年施行)が掲げる「独立性」と「運営の透明性」の哲学的基盤を理解する上でも、非常に重要な位置を占めている。

景気に対する基本的な視点

  1. 「循環論的成長論」: 経済成長は直線的に伸びるものではなく、竹の節のように「循環(景気変動)」を伴いながら成長していくという見方を基本。
  2. 理論と実際(実務感覚)の融合: 西川氏は、近代経済学の理論(景気理論)を重視しつつも、実際の景気の動きを長年観察し続けた経験から、「古典派経済学」に求めるべき要素も少なくないとし、理論と実務感覚の両立を重視した。
  3. 日本経済に適合した視点: 外国の理論をそのまま適用するのではなく、日本経済の具体的な特色や歴史的段階にマッチした「景気観」を持つことが重要だと述べた[6]

産業資金面からみた金融制度

第二次世界大戦後の資本蓄積問題が「インフレ的環境下での非合理な蓄積」から「蓄積の合理化・正常化」へ移行したとしている。 1950年代半ばの日本経済において、資本不足の問題が実体資本から貨幣資本の不足へ転換し、特に「オーバー・ローン」や企業の「借入過多」といった問題が顕在化していると指摘した。これは、戦後のインフレ的な信用創造に起因するものであり、企業の貸借対照表の歪みや経営の非弾力性を生み出していた。この異常な状態を是正し、通貨価値の安定を前提とした健全な資本蓄積(正常化)へ移行することの重要性を説いた。具体的には、過度な信用創造を停止し、市場メカニズムに基づく預貸金のバランス回復や、適切な再評価による自己資本の充実が必要だと主張した[7]

著書

家族

脚注

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