超絶技巧練習曲 (リャプノフ)
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超絶技巧練習曲集(ちょうぜつぎこうれんしゅうきょくしゅう、Études d'exécution transcendante)作品11 は、セルゲイ・リャプノフが作曲したピアノのための練習曲集。
リャプノフはモスクワ音楽院でパプストとクリントヴォルトにピアノを師事する[1][2]。両者はいずれもドイツ出身でフランツ・リスト門下のピアニストであった[1][3]。リャプノフは自らの音楽の形式と技巧にリストがもたらす影響を自覚しており、その存在の大きさに悩んですらいた[4]。もう一人、彼に多大な影響を与えたのが「ロシア5人組」の指導的立場であったミリイ・バラキレフである。その誠実で理想主義的な人柄に惚れ込んでいったリャプノフは、教育課程を修了して2年が経過した1885年にサンクトペテルブルクに住まいを移してバラキレフの近くに身を置くことを選択したのであった[5][6]。1893年にはバラキレフ、リャードフと共にロシア地理学協会の委嘱を受け、モスクワ北東部の地域に民謡の採集に赴いている[5]。彼らは300曲近くを収集し、リャプノフはその中から抜粋した楽曲に対してピアノ伴奏編曲を施した[7]。
本作ではリストのピアニズムとロシア流の旋律要素、民謡の要素の両方が融合している[7]。作曲は1897年から1905年までの約8年にわたって進められリストへと献呈された[6][8]。曲集はリストの『超絶技巧練習曲』第3版(S.139、1852年)になぞらえて命名されており、曲の構成もリストの作品を意識したものとなっている[9]。リストの『超絶技巧練習曲』は24の調性全てを用いるべく構想されたとみられており、ハ長調から始まり平行短調を含めつつ5度ずつ下降して12曲目の変ロ短調まで至ったところで打ち止めとなっている[6]。これによってフラット系の調性は網羅された[9]。リャプノフの『超絶技巧練習曲』は嬰ヘ長調から開始して同様に平行短調を経由しつつ5度ずつ下降し、シャープ系の調性を辿って12曲目のホ短調で終了となる[9]。このように明確な方針に従って書かれているにもかかわらず、リャプノフ自身は謙虚にもそれを自ら語ることをしなかった[6]。リャプノフはバラキレフに宛てた手紙の中で以下のように述べている。
私は相対的に音楽界で知られていませんから、本作がリストのエチュードの続きであるとタイトルで述べることは無礼となるでしょうし、鼻にかけていると解釈されかねません。このエチュードはリストに献呈する方がより適切で、そうすれば注目を集めることになるかもしれない一方で、作品はそれ自身の実力によって評価されるようにすることができます[8]。
リャプノフは1910年に第1曲、第5曲、第12曲についてヴェルテ=ミニョンの自動演奏ピアノへ録音を遺している[10][11]。
楽曲構成
各曲にはロシア語の標題が付されているが、出版に際してフランス語への翻訳が行われた[4]。ただし、第3曲と第8曲にはもともとロシア語とフランス語の標題が与えられていた[10]。リャプノフ自身は全曲を67分で弾き終えるべきであると考えていたとされる[12]。
第1曲
- 子守歌(Berceuse): Andantino 2/4拍子 嬰ヘ長調
1897年から1898年にかけて作曲された[13]。序奏によって開始する[13][14]。カデンツァを挟んで主題が提示される(譜例1)。ここで見られる書法はショパンの影響を感じさせるものとなっている[15]。
譜例1

中間部にはドルチェの指示があり、短いフレーズによって構成される。リャプノフは内声を強調しながら少し速度を上げるようアドバイスしている[16]。カデンツァを挟んで再現される譜例1には三連符の装飾がまとわりついてくる。中間部の主題によってまとめられ、静かに閉じられる。
第2曲
1897年から1898年にかけて作曲[15]。序奏とコーダの間に5つの部分を挟む形で書かれている[15]。作曲者がモスクワ音楽院在学中に書かれた幻想曲 変ホ短調の素材が流用されている[15]。主に2つの材料から構成されており、ひとつ目が譜例2に示される分散和音の主題である[17]。
譜例2

第2の材料はより歌謡性の高いものとなっており[16]、この半音階的な旋律が左手で反復されることで幽霊の不気味な踊りが表現される[17]。譜例2の再現後に第2の主題も再び奏される。曲の最後には幽霊が姿を消す様が表現されて閉じられる[18]。この結尾部分がラヴェルの『夜のガスパール』、「スカルボ」に類似しているとの指摘がある[19][注 1]。
第3曲
1901年作曲[21]。この楽曲はリャプノフが1893年に行った調査旅行の際に採譜した鐘の音に着想を得ている[22][23]。彼は次のように筋書きを記している。
遠くに鐘の音が聞こえる。整然と鳴らされるそれは聖歌の節を刻んでいる。鳴動は次第に大きくなっていき、教会のチャイムが第1の鐘の音色に混ざってくる。その聖歌の荘厳な音色は鐘の音と交代し、大鐘の音が散りばめられる中で概して壮大なコラール様の効果によって締めくくられる[21]。
曲は3つの部分とコーダで構成される[22]。多くの部分が3段譜で記譜され、ところによっては4段譜で書かれている[22]。リストの『超絶技巧練習曲』第11曲「夕べの調べ」に関連する動きで開始する[22]。譜例3はカデンツァ後の38小節目からを示している。譜例3の主題は既に提示されていたものであり、各部分はこの主題の変奏によって形作られている[22]。
譜例3

続く部分では主題が高音に移りアルペッジョで装飾される。左手側の旋律も強調することでカノン風の効果が得られる[24]。次第に盛り上がって到達するクライマックスには「鐘のように」(quiasi campanelli)との指示が見られる[25]。色彩的な調性配置で描かれるコーダを経て[25]、華やかに結ばれる。
第4曲
- テレク(Térek): Allegro impetuoso 4/4拍子 嬰ト短調
1900年作曲[26]。ソナタ形式[10]。ジョージアを流れる荒々しいテレク川を描写する[26]。ミハイル・レールモントフの『テレク川の贈り物』が題辞として掲げられている[26]。以下はその大意。
テレク川が呻く、粗野に邪悪に、
鋭い峰々の狭間、
嵐の咆哮のごとく、
その涙は宙を舞い、
大地に散らばる、
狡猾にも見えるその姿、
甘い世辞を受け、
カスピ海でせせらぐ
曲はテレク川の暴力的な流れと対照的に穏やかなカスピ海を描く[26]。左手が2小節先行し主題の提示となる(譜例4)。
譜例4
![\relative c {
\new PianoStaff <<
\new Staff \with { \remove "Time_signature_engraver" } { \key gis \minor \time 4/4
\set Score.tempoHideNote = ##t \tempo "" 4=144 \clef bass
<<
{
d8\rest dis'4-> ( gis8) d,\rest \clef treble b''4-> ( e8)
b\rest cis4-> ( e8) b\rest gis'4-> ( b8)
}
\\
{
\set subdivideBeams = ##t
\set baseMoment = #(ly:make-moment 1/4)
\set beatStructure = 2,2,2,2
s8 dis,,16[ b dis, b' gis' gis,] s8 b'16[ e, b b' e e,]
s8 cis'16[ e, cis gis' e' e,] s8 gis'16[ b, gis cisis b' b,]
}
>>
}
\new Dynamics {
s4.\f
}
\new Staff \with { \remove "Time_signature_engraver" } { \key gis \minor \time 4/4 \clef bass
\set subdivideBeams = ##t
\set baseMoment = #(ly:make-moment 1/4)
\set beatStructure = 2,2,2,2
gis,,,16[ dis' gis fisis ais gis dis' dis,] gis,[ e' gis fisis ais gis b e,]
gis,[ e' gis fisis ais gis cis e,] gis,[ e' b' gis cisis b e] gis,,
}
>>
}](http://upload.wikimedia.org/score/t/s/tsple5sxxx2tlvhwqi3qatk0h0icki6/tsple5sx.png)
スケルツァンド部はカスピ海の静けさを描写するものとなっており[27]、書き込まれた「フルートのように」(quasi Flauto)という指示からはリャプノフの管弦楽的な書法を窺い知ることが出来る[28][注 2]。譜例4の再現の後にカスピ海の主題も再現され、勢いを維持したまま幕が下ろされる。この曲にはボロディンの歌曲『海』の影響も指摘されている[10]。
第5曲
- 夏の夜(Nuit d'été): Lento ma non troppo 6/8拍子 ホ長調
1900年作曲[29]。拡大された夜想曲の形式で書かれている[29]。リストの『超絶技巧練習曲』第9曲「回想」との関連が指摘される[29]。長大な序奏の最後にカデンツァが挿入され、最初の主題が提示される[29](譜例5)。
譜例5

和音によって奏でられる2つ目の主題についても「回想」との関連を指摘されている[30]。譜例5の再現は3段譜で記譜されて豊かな響きを生み、カデンツァに続いて2つ目の主題の再現へ移る。序奏の素材を回想して静かな幕切れを迎える。
第6曲
1897年に書かれており、曲集中でこの楽曲が最初に完成された[31]。リストの『超絶技巧練習曲』第10曲を範としており、両曲では同じ発想標語が用いられている[31]。冒頭から猛烈な楽想が飛び出す(譜例6)。
譜例6
![\relative c {
\new PianoStaff <<
\new Staff = "R" { \key cis \minor \time 2/4
\set Score.tempoHideNote = ##t \tempo "Allegro agitato molto" 4=96
r8 \clef bass e16*2/3( e' cis a[ a' cis,] gis gis' cis,
fisis, fisis' cis gis[ gis' cis,] e, e' gis, cis,[ cis' gis] <dis' a fis dis>8)
<<
{
\clef treble a'''8-> ( [ dis,] ) \change Staff = "L" a ( [
\change Staff = "R" \once \stemDown dis,] ) \change Staff = "L" a-> ( [
\change Staff = "R" \clef bass \once \stemDown dis,] ) gis-> ( [ e] )
}
\\
{
a''16*2/3 cis, a dis fis, dis b8\rest \stemUp
dis16*2/3 fis, dis s8 dis16*2/3 fis, dis \stemDown bis'[ gis fis <gis e>8]
}
>>
}
\new Dynamics {
s8 s\p s\< s s2 s8\sf s\sf s4 s2\> s8\!
}
\new Staff = "L" {
\key cis \minor \time 2/4 \clef bass
r8 cis,,16*2/3( gis' e' cis,[ fisis e'] cis, gis' e'
cis, a' e' cis,[ gis' e'] cis, cis' gis e) [ r cis,]~
\once \autoBeamOff <cis' cis,>8\sustainOn <dis'' a fis cis>\arpeggio
r \clef treble a''16*2/3^> cis, a
r8 \clef bass a16*2/3 cis, a\sustainOff r8 <dis gis, cis,>\sustainOn [ <cis, cis,>\sustainOff ]
}
>>
}](http://upload.wikimedia.org/score/d/4/d4vw9ywsui5qafan2n8wa1a8exw2mz3/d4vw9yws.png)
2つ目の主題は抒情的な旋律で、16分音符の伴奏の上に情熱的に(appassionato)歌われる[31]。譜例6による展開が行われ、2つの主題の再現へと移行していく[32]。譜例6は右手の技巧的なアルペッジョを伴い、左手のオクターヴの低音で出される[32]。譜例6を用いた激しいコーダを経て終了する。
第7曲
1901年作曲[33]。1893年の民謡採集の道中で羊飼いに出会ったリャプノフらは、彼らが笛で演奏する楽曲を聴いて採譜しその笛を持ち帰ったという[28]。またリャプノフが子どもの頃に過ごした村での生活に霊感を得たのではないかという指摘もある[33]。曲は3つの部分とコーダから成る[33]。4小節の導入に続いて主題が歌われる(譜例7)。
譜例7

2つ目の主題は中音域に出される羊飼いの歌である[34]。譜例7が再現されてから落ち着いて行き、穏やかな調子で閉じられる。
第8曲
- 叙事詩(Chant épique): Allegro maestoso 2/2拍子 嬰ヘ短調
1903年作曲[34]。1893年にリャプノフが採譜した兵士の歌「Iz-za lesu, lesu temnogo」(森から出よう、暗い森から)に基づいている[10][34]。タイトルの原題は「ブィリーナ」であり、9世紀から12世紀ごろのキエフ大公国の叙事詩のことを指している[34]。長大な序奏で開始し、奏でられる旋律の断片に対してハープのようなアルペッジョが応答していく[34](譜例8)。
譜例8

やがてトッカータ風の書法により主題の全容が現れるが、この主題は駆ける馬の蹄の音を描いている[34]。この主題は次第に発展して複雑なテクスチュアを構築していく[35]。第2の主題は対照的に民俗舞踊調であり[34]、装飾的な音型を伴って提示される。第1主題が回帰して熱を帯びると、技術的困難を考慮してオッシアが用意されている[36]。第2主題の再現後にコーダとなり、「ブィリーナ」の伝統に則って勝利を祝す明るい終結を迎える[36]。
第9曲
1902年作曲[37]。ショパンの練習曲作品25-1の愛称と同じ名称を冠しているが内容的に両作品に繋がりはなく[38]、リャプノフの本楽曲はむしろリストの『超絶技巧練習曲』第12曲「雪あらし」から霊感を受けている[39]。なお、エオリア(アイオロス)とはギリシャ神話の風の神のことである[37]。主題は1つしか持っておらず(譜例9)、同じ旋律がさまざま音域で多様な色彩により繰り返されていく[40]。作曲者は軽く、浮遊するように演奏することを求めている[41]。
譜例9
![\relative c {
\new PianoStaff <<
\new Staff = "R" \with { \remove "Time_signature_engraver" } {
\key d \major \time 9/8
\set Score.tempoHideNote = ##t \tempo "" 8=96 \partial 8 \clef bass
\magnifyMusic 0.63 {
<a d,>8\arpeggio ^\markup {
\normalsize {
\column {
\line { \italic { il canto ben } }
\line { a tempo }
}
}
} \clef treble
s8^\markup { \italic { \normalsize { marcato, ma sempre dolce } } } s s s4 \stemUp a''''8
}
}
\new Dynamics {
s8-\markup { \dynamic pp \italic sempre } s-\markup { \italic { una corda } }
s8 s s\!
}
\new Staff = "L" \with { \remove "Time_signature_engraver" } {
\key d \major \time 9/8 \clef bass
<<
{
\once \override NoteColumn.force-hshift = #-2
\once \override Arpeggio.positions = #'(0 . 5) fis,,8\arpeggio
\once \override NoteColumn.force-hshift = #-1.2
\once \override Arpeggio.positions = #'(1 . 5) eis\arpeggio [
\change Staff = "R" b' cis]
\once \override Arpeggio.positions = #'(-3.5 . 0) a4\arpeggio
}
\\
{
\set subdivideBeams = ##t
\set baseMoment = #(ly:make-moment 1/8)
\set beatStructure = 2,2,2,2
\magnifyMusic 0.63 {
\stemUp <d, a>64 [ d a d a d a d]
gis,\sustainOn [ d' gis, d' gis, d' gis, d' \change Staff = "R" \stemDown
eis d eis d eis d eis d eis d eis d eis d eis\sustainOff d]
<fis cis>32*2/3 [ cis g! cis fis a g cis fis a g cis
e! cis g cis e a]
} }
\\
{ \magnifyMusic 0.63 {
\stemDown fis,,,8 \once \override NoteColumn.force-hshift = #1 gis
b,\rest^\< b\rest b16\rest\! \sustainOn d,[ a' a' g8*1/8] e'8*1/2
} }
\\
{ \magnifyMusic 0.63 { s8 s4. s4 \stemUp cis64 e! cis e cis e cis e } }
\\
{ s8*7/8\sustainOn s64\sustainOff s8\sustainOn s s8*6/8 s32\sustainOff s16\sustainOn }
>>
}
>>
}](http://upload.wikimedia.org/score/9/v/9vigzjj4yhg0yd0ifcrjt8fai7fzqs9/9vigzjj4.png)
第10曲
1903年作曲[40]。リャプノフの全作品中でも最も有名な楽曲であり、「バラキレフの様式で」という副題に示される通り『イスラメイ』との関連が明白である[10][40]。「レズギンカ」とはコーカサス地方に住むレズギ人の求婚の踊りのことを指す[40]。10小節の序奏に続いて第1主題が提示される[42](譜例10)。この主題は男性の踊りを表している[43]。
譜例10
![\relative c' {
\new PianoStaff <<
\new Staff \with { \remove "Time_signature_engraver" } {
\key b \minor \time 8/16 \scaleDurations 2/3 {
\override Score.NonMusicalPaperColumn #'line-break-permission = ##f
\set Score.tempoHideNote = ##t \tempo "" 8.=118 \partial 8.
<<
{
\set subdivideBeams = ##t
\set baseMoment = #(ly:make-moment 1/8)
fis8.-> ( ~ fis16[ g fis b, fis' b] a[ b a g a g]
fis[ g fis b, fis' b] a[ b a g a g]
fis8.( [ ~ fis16 eis fis] eis-> [ d e cis d b] )
fis'8.( [ ~ fis16 eis fis[ eis-> [ d e cis d b] )
}
\\
{
s8. b\rest b~ 4.~ b8. b8.~ b4.~ b b~ b
\shape #'((0 . 0) (0.5 . 0) (1 . -0.2) (2 . -0.5)) Tie
b4.*5/6 ~ \hideNotes b16
}
>>
}
}
\new Dynamics {
s8\p
}
\new Staff \with { \remove "Time_signature_engraver" } {
\key b \minor \time 8/16 \clef bass \scaleDurations 2/3 {
\mergeDifferentlyDottedOn
<<
{
\set subdivideBeams = ##t
\set baseMoment = #(ly:make-moment 1/8)
fis,16 fis' fis, b,[ fis' b fis fis' fis,] b,[ fis' b fis fis' fis,]
b,[ fis' b fis fis' fis,] b,[ fis' b fis fis' fis,]
b,[ fis' b fis fis' fis,] b,[ g' b g eis' g,]
b,[ fis' b fis fis' fis,] b,[ g' b g eis' g,]
}
\\
{ s8. b,8. s b s b s b s b s b s b s b s }
\\
{
s8 s16\sustainOff s4\sustainOn s16 s\sustainOff s4\sustainOn s16 s\sustainOff
s4\sustainOn s16 s\sustainOff s4\sustainOn s16 s\sustainOff
s4\sustainOn s16 s\sustainOff s4\sustainOn s16 s\sustainOff
s4\sustainOn s16 s\sustainOff s4\sustainOn s16 s\sustainOff
}
>>
}
}
>>
}](http://upload.wikimedia.org/score/n/g/ngk5puppjysjonpgkan7oydo2gibg8m/ngk5pupp.png)
続いて奏される2つ目の主題は『イスラメイ』の第2主題に類似している[43]。変ニ長調に転じて奏される抒情的で優美な旋律は女性の応答を示している[44]。この主題が盛り上がった後に譜例10の再現となり、馬の疾駆を思わせる形に変形されて奏される[45]。女性の主題はニ長調で再現されてロ短調へと変化するが[45]、最後は長調での締めとなる[46]。
第11曲
- 妖精の踊り(Rondo des sylphes): Allegretto scherzando 2/4拍子 ト長調
リストの『超絶技巧練習曲』第5曲「鬼火」に類似している[3][46]。第9曲と同じく主題をひとつしか持たない[40]。この主題は2つのモチーフから構成されている[46](譜例11:モチーフ1)。
譜例11
![\relative c'''' {
\new PianoStaff <<
\new Staff \with { \remove "Time_signature_engraver" } {
\key g \major \time 2/4
\set Score.tempoHideNote = ##t \tempo "" 8=144 \partial 2*7/8
<b g>32( d, <e cis>[ <g d> b, <cis ais>] <d b>[ g, <ais fis> <b g>] d, <e cis> <g d> b,)
r16 es-.[ a'-.] fis,-.[ b'-.] a,-.[ c'] d,,-.[ d'-.]
}
\new Dynamics {
s8-\markup \italic lusingando
}
\new Staff \with { \remove "Time_signature_engraver" } {
\key g \major \time 2/4
r16 r g,-. b,-. d,-. g-. g,-. <c' fis, es>\sustainOn
fis,32[ c es\sustainOff g,] a'[ c, es g,] c'[ es, fis g,] b'[ d, g g,]
}
>>
}](http://upload.wikimedia.org/score/1/0/10p6ztun9qbatzl8xs9hq1cg1j3d1cs/10p6ztun.png)
2つのモチーフが様々に展開された後、モチーフ2を繰り返してクライマックスを形成する[46]。序奏部の音型から2つのモチーフの再度の展開が行われ、モチーフ1を回想したところで和音を重ねて高音域へと消えていく[47]。
第12曲
- フランソワ・リストを偲ぶ哀歌(Elégie en mémoire de François Liszt): Lento capriccioso 3/4拍子 ホ短調
1905年作曲[48]。この楽曲は曲集中で最大の規模を誇り、他の11曲が音による絵画であるのに対してこの曲は音による肖像画であるという声もある[48]。リストの『ハンガリー狂詩曲』第1番に類似した音型で幕を開ける[48](譜例12)。
譜例12

続いて現れるフレーズはリストの『超絶技巧練習曲』第6曲「幻影」を思わせる[49]。さらに32小節目からのアルペッジョによる部分はリストの『スペイン狂詩曲』に倣ったものと思われる[50]。主部に入ると序奏部の2つの素材が組み合わされて進行し、変ニ長調の抒情的な主題の登場まで続いていく[51]。変ニ長調の主題は装飾を受けつつ、低声部の模倣音型を伴って奏されていく[52]。推移を経て第1主題がアルペッジョを間に挟みながら再現され、カデンツァ後の第2主題は音域を上昇させつつ大きく盛り上がる[52]。コーダでは2つの主題の要素を織り交ぜ、トレモロが高音域に登り詰めて曲集を華麗にまとめ上げる[53]。