金属指示薬

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金属指示薬(きんぞくしじやく、英語: complexometric indicator)は特定の金属イオン溶液中濃度に依存して色調の変化を起こす色素であり、キレート滴定といった錯滴定の呈色指示薬として用いられる試薬の総称である[1]錯滴定指示薬とも呼ばれる。

pH10緩衝液中におけるエリオクロムブラックTの呈色。画像右側の赤色溶液中にはカルシウムイオンが存在しているが、左側の青色溶液中には存在していない。

金属指示薬は適当なpH条件で溶液中の金属イオン濃度に応じて色調が変化するため、キレート滴定における当量点の観測に用いられる[1]。金属指示薬は金属イオンとキレートを生成することで金属-金属指示薬複合体の呈色を示し、金属イオンがキレート試薬(EDTAなど)とより安定なキレートを形成し金属指示薬との配位結合を解消すると遊離型の呈色を示す。つまり、金属指示薬の色調の変化は、金属指示薬が金属-金属指示薬複合体と遊離型とで吸収波長が異なることにより生じる。[1]。キレート滴定の際、金属-キレート試薬間のキレート生成反応は金属-金属指示薬間のキレート生成反応より優先されなければならず、金属指示薬として用いるには一般に金属-金属指示薬複合体のほうが10から100倍不安定である必要がある[2]。以上のことから、金属指示薬は一般に以下の条件を満たす[2][3]

  1. 金属-金属指示薬複合体と遊離型金属指示薬の色調の差が大きいこと。
  2. 金属-金属指示薬複合体のモル吸光係数が大きいこと。
  3. 金属指示薬および金属-金属指示薬複合体が水溶性で、その金属複合体と滴定試薬(EDTAなど)との配位子置換反応速度が十分に大きいこと。
  4. 金属-金属指示薬間のキレート生成反応が適当な条件安定度定数をもつこと[1][2]

開発

代表的な金属指示薬であるエリオクロムブラックT

初期に開発された金属指示薬としてエリオクロムブラックTムレキシドが挙げられる[2]。これらはカルシウムマグネシウムといった金属イオンを定量する際に多用されたが、低い選択性と狭いpH範囲しか使用できず、より高い選択性をもった金属指示薬の開発が期待されていた[2]

錯滴定における利用

滴定溶液中に緩衝液を加えてpHを金属指示薬の適正範囲にそろえてから、金属指示薬を数滴混ぜて、滴定溶液の滴下による被滴定溶液の色調の変化を観測することで当量点を観測できる[4][5]。和田によればキレート滴定において、指示薬の濃度が滴定する金属イオン濃度の100分の1以下でないと当量点で鋭敏な変色が得られないとされている[6]。2種類以上の金属イオンを同定するにはマスキング剤を加えるなどして選択的に金属イオンの滴定する[4]

代表的な金属指示薬

代表的な金属指示薬を以下に挙げる。

指示薬 金属イオン 当量点における呈色変化 pH 出典
カルマガイト カルシウムマグネシウム 赤色から青色 9-11 [3][5]
エリオクロムブラックT カルシウムマグネシウム亜鉛 赤色から青色 8-10 [7][5]
カルセインブルー コバルトマンガンニッケル 鮮青色蛍光の消失 4-11 [7]
バリウムカルシウムスカンジウム 蛍光の発生 12近辺 [7]
HNB指示薬 カルシウム 赤桃色から青色 10近辺 [7]
ムレキシド カルシウム 桃色から紫色 11-13 [5]
NN指示薬 カルシウム 赤紫色から青色 12-13 [7]
TAR指示薬 赤紫色から黄色 3-8 [6]
キシノールオレンジ ビスマスカドミウム水銀インジウムランタンスカンジウムトリウム亜鉛ジルコニウム 赤から黄色 酸性 [7]

参考文献

脚注

関連項目

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