昔、山奥の鍛冶屋にいた猟師が、何十貫もある大猪を仕留めた[1]。だが、重すぎて持ち帰ることができなかったので、水神の大蛇が棲んでいるという蛇渕(じゃぶち)の渕の端に猪を置き、手伝いを呼びに村へ向かった[1]。
村人を連れて戻ってみると、蛇渕から現れた大蛇が猪を飲み込みかけていた[1]。猟師は怒り、大蛇が嫌う鉄屑を鍛冶屋から持って来るが既に大蛇はおらず、鉄屑を蛇渕に撒いた[1]。すると大蛇が激怒し、暴風雨が起き、洪水によって山が崩れ、家も流され、村はすべて荒れ野になってしまった[1]。
以来、鍛冶屋が荒れ野にしたも同然のその地を、鍛冶屋にちなんで鍛冶ヶ野または鍛冶ヶ谷と呼んだという[1]。